映画評「ユリゴコロ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2017年日本映画 監督・熊澤尚人
ネタバレあり

沼田まほかるという女性作家のミステリーの映画化。お話だけを取り上げれば、近年の日本映画の中で屈指の面白さと言って良い。

山間部でカフェを営んでいる青年・松坂桃李が結婚を考えている清野菜名に突然失踪されてビックリする。その直後彼女の知人という中年女性・木村多江が現われ、彼女の失踪した理由などを教えてくれる。青年には余命間もないと宣言されている父親・松山ケンイチがいて随時家を訪れるが、留守中のある日ノートに書かれた手記を発見、読んでみてその内容に言葉を失う。
 人を殺すことを心のよりどころ(=ユリゴコロ)とする女性(成人後:吉高由里子)の話が少女時代から始まり、やがてその中に父親と思われる青年が現われ、娼婦を生業にしていた時に妊娠した子供を彼が育てると言って二人が結婚したと書かれている。松坂は自分が“殺人鬼”の息子で、父親とは血がつながっていないことを知る。

この辺りからお話が急転する。勘の良い方ならある程度想像がつくにしても、これ以上紹介するわけには参りますまい。

ヒロインはサイコパスと言えばそれまでながら、一般の人が持つ感情を持てないところに僕は悲哀を感じる。こういう人を生きる価値なしと言ってしまえる人は幸せである。かかる人物を通して、ごく一般的な人々のイレギュラーな心理や心情が照らし出されることもある。人間を考えるよすがとなる。

もっと特殊なところでは、かつて江戸川乱歩が案出した異常心理の登場人物を想起させるヒロインの人物像が実に面白く、松坂君が父親の留守を確認してまで次を読みたくなる心理がよく理解できる。
 青年は突然激しい言動を取る理由を母親からの遺伝と判断するが、どうみても母親の本質は内攻的だからそういう外向きの攻撃性とは違うと思われる。
 しかし、両親を巻き込み彼を巻き込む運命の渦に文字通り引きずり込まれるような凄味があり、ヒロインのサイコパスをハンセン病に置き換えると「砂の器」を思わせるところもある。

両親に関して言えば、前半からは想像できないほどロマンティックな関係と言っても良い。沼田女史は後味の悪い作品を書くと言われているらしいが、この映画版に関しては全くそんなことはない。

清野菜名は、モンダミンのCMで駄々をこねる女優役だあ。調べてみたらCMに数多く出ている。気づかなったなあ。

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