映画評「雪之丞変化」(1963年版)

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1963年日本映画 監督・市川崑
ネタバレあり

三上於莵吉の人気時代小説の7回目、現在のところ最後の映画化である。その他、TVで3度の映像化がある。

以前観た記憶があるが、2年前に小説を読んでいるので、ストーリーがすんなり入って来る。勿論和田夏十脚本、市川崑監督のコンビなので解り難いはずもなかろうが、そこそこ長い小説を2時間弱にまとめている為、展開が急すぎるところがあって、小説を読まずに観たならば首を傾げたくなる部分がないでもないのだ。

長崎で両親を死に追いやられた商人の息子が成長して上方で有名な女形・中村雪之丞(長谷川一夫)となって上京、ここで人気を博す。
 芝居を観ていた実力者の娘で将軍に抱えられている波路(若尾文子)は彼に夢中になり、思い余って病に伏す。彼女の父親である元長崎奉行・土部三斎(中村鴈治郎)はその為に雪之丞を招くが、実は三斎こそ雪之丞の復讐の相手三名のうちの一人で、残る二人は一緒に芝居を見に来ていた川口屋(伊達三郎)と広海屋(柳永二郎)である。
 強欲な三人(原作では五人だったと思う)は、こうして懇意となった雪之丞の些細な作り話に騙されて互いに疑心暗鬼になって殺し合うような羽目になる。残る三斎も、娘に死なれるなどして追い詰められ自害する。

という復讐譚で、義賊の闇太郎(長谷川二役)、主人公に複雑な思いを抱くことになる女掏摸お初(山本富士子)、主人公を恨む剣修業時代のライバル平馬(船越英二)などが賑やかに絡んでくる。

いずれの映画化でも雪之丞を演ずる役者が闇太郎も演ずるのが決まりとなっていて、その決まりを作ったのが林長二郎時代の長谷川一夫版「雪之丞変化」(1935年)であり、彼としては28年ぶりの再登場となったわけである。しかし、女形役者に妖艶な美女が惚れ込む性倒錯的な妖美さ、或いは復讐の過程で父に扮し母に扮する変化ぶりを楽しませるには55歳の長谷川はさすがに高齢すぎて、その辺で少々物足りない。上述したように駆け足的で、ぶつ切り的な印象も禁じ得ない。

その代わり、市川監督の演出ぶりは奔放で、相当魅力的である。芝居に始まるお話に則り、ロングショットを駆使して人々の交錯を舞台上のように見せたり、周辺を暗くして人物に焦点を当てる一部舞台的一部映画的な見せ方も痺れさせる。シネマスコープの長さを意識した構図の美しさや赤の使い方も素晴らしい。

奔放という点は音楽の使い方にも見られ、芥川也寸志のシンフォニーと八木正生のジャズを場面ごとに使い分けて、いかにもヌーヴェルヴァーグ全盛時代らしい新鮮味を感じる。当時は和洋折衷という意味合いで新鮮であり刺激的であっただろうが、現在の僕にとっても昨今の作品より余程刺激的である。

芥川氏は母校(高校)の校歌の作曲家。他人とは思えない(笑)

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