映画評「レジェンド 狂気の美学」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2015年イギリス=フランス=アメリカ合作映画 監督ブライアン・ヘルゲランド
ネタバレあり

ブライアン・ヘルゲランド監督による実話のギャング映画だが、使われる音楽や風俗を見たり聞いたりしていると楽しめてしまう。「ミニオンズ」もそうだったように、大昔ではない時代を扱った映画は年寄りの方が概して楽しめる。

1960年代前半のロンドン、双子のグレイ兄弟はギャングとして既に台頭している。レジナルド(トム・ハーディー)は冷静で理知的なボスだが、片割れロナルド(ハーディー二役)は思考回路がマニアックで薬(くすり)で抑えないと何をするか解らない異常性がある。
 レジナルドが子分の妹フランシス(エミリー・ブラウニング)と恋に落ちて、一応堅気とヤクザの中間くらいのクラブ経営に専心するが、その間にロナルドが衆人環視の殺人を犯したことから、賄賂で抑えていた官憲も見過ごすことが出来なくなり、やがてレジナルドはヤクザに戻っていく。結婚したフランシスは夫を約束違反と詰って家を出た末に睡眠薬を大量に飲んで死んでしまう。
 レジナルドは関係者殺害の失敗でへまをやらかした部下をとっちめようとしたところ、相手がフランシスへの薬の提供をほのめかすのを聞き、怒り心頭に発して衆人環視の刺殺をやることになる。

かくして二人は社会的に葬られることになるのだが、少なからぬ方が指摘するように、ギャング映画という以上に一種の恋愛映画であるが、厳密には脚本も担当したヘルゲランドは愛の物語として構成している。男女の愛と兄弟の愛である。

トム・ハーディの二役の評判がよろしく、実際それが性格の違う双子への興味をうまく喚起している。
 双子は確かに対照的であった。ところが、レジナルドがフランシスと出会う。堅気になろうとするがなりきれない。彼女の絶望を止められず、暴力を振るった挙句に自殺されてしまう。
 この辺りからレジナルドとロナルドの性格が反転し始める。反転というよりその本質が明らかになっていく。レジナルドはフランシスを結果的に死なせた男を狂気に駆られたように刺殺する。ロナルドは無表情で拳銃を放つことはできるが、短絡的であっても行動自体は冷静だ。殺人を犯す時彼らの冷静さと異常性が逆転する。レジナルドも一部にロナルドの狂的な部分を持っていた。それを明らかにするのがフランシスなのである。

彼女が自殺するのは、ロナルドの「天国に行けば(自分たちのやってきたことは何なのか)答えが解る」という発言に触発されたものではないだろうか。様々な映画を観るにつけ、無神論者や不可知論者であっても欧米人からは神との問題が切り離せないのではないか、と思う。

近年、日本でレジェンドという言葉が使われるようになったが、余り使われると安っぽくなって価値が下がる。それ以前に現役の人にこれを使うのはどうかと思う。本作もその流れかと思いきや、原題通りでした。

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