映画評「アサイラム 監禁病棟と顔のない患者たち」

☆☆★(5点/10点満点中)
2015年アメリカ映画 監督ブラッド・アンダースン
ネタバレあり

エドガー・アラン・ポーの「タール博士とフェザー教授の療法」の映画化で、日本では上映会で公開されただけだから、劇場未公開に準ずる作品という位置づけで良いのだろう。この短編は、僕の調べた範囲で、過去欧州で5度映像化(全て本邦劇場未公開)されているが、ポーの本国アメリカでは初めてだと思う。

1899年英国、精神科医を目指す医学生ジム・スタージェスが、山の奥地にある精神病院に研修に訪れ、驚く。院長ベン・キングズリーは、特別な患者を除き、夫の暴力故にヒステリーになったが普段は健常人にしか見えない若妻ケイト・ベッキンセイルを始めとして患者を隔絶せず、病院関係者と一緒に食事などする鎮静療法を取っているのだ。
 ところが、偶然探し当てた地下室の折に「自分こそ院長である」と言う老人マイケル・ケインや看護婦長などがいて、狂人のキングズリーによって閉じ込められていると告げ、脱走を手助けするように頼んでくる。ケイトの証言もあって、こちらが言い分が正しいらしく、スタージェス君は、何とか自分たちをも含めて抜け出す手だてを探るが果たせず、先に被験されたケイン同様に痴呆状態に追いやる電気ショックを見舞われそうになる。

【タールとフェザー】というのは、欧米で行われたリンチのことだから、従来の精神病治療は拷問みたいなものという意味をポーは暗示したのだろう。原作ではリンチ的な療法と鎮静療法の是非を俎上に載せたのではないかと勝手に想像しているが、映画版は、それよりも人間は誰もが狂気に陥っているのではないかということをテーマにしているように思われる。

それを証明するが如く、どんでん返しがある。実は、医学生を名乗るスタージェス君も精神病患者で、精神病患者を披露する第一場面でケイトとすれ違っている。ケイトに一目惚れして彼女を何とかしようと思う余り彼は正常になったらしい。解放されて事実上の院長になった看護婦長曰く、「治せない精神病患者などいない。その治療方法は“人”です」と。ケイトもまた彼により正常になったようである、というのが幕切れ。

奇妙な味のある、そこそこ楽しめるホラーと言うべし。

I'm "mad" about you. という掛け言葉が出て来る。

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