映画評「ロスト・バケーション」

☆☆★(5点/10点満点中)
2016年アメリカ映画 監督ジャウマ・コレット=セラ
ネタバレあり

人食い鮫を扱う映画が最近ぽつりぽつりと作られているようだ。もはや余り興味を惹かない素材だが、本作はもうご贔屓監督になったと言って良いであろうジャウマ・コレット=セラが監督をしているので、観ることにした。限られた要素の中でなかなか巧く作ってあり、期待を裏切らなかった。

父親との仲が今一つではない医大の大学院生ブレイク・ライヴリーが、病気と苦闘して死んだ母親の思い出の地であるメキシコのある秘境的な海岸で、独りサーフィンを楽しむことにする。
 が、岩か何かに当たるかして岩礁で手当てをした後気づいたのは、大型の人食い鮫が彼女を狙って周遊している事実。海岸は岩礁から200m離れている為戻ることができず、夕方が近づいて頼るべき人がいなくなってしまう。明け方海岸に寝そべっていた酔っぱらいは助けになるどころか自らサメに襲われてしまう。昼間サーフィンを始めた二人連れも続けざまに犠牲になる。
 サメの脅威にさらされる中32秒というサメの周遊時間の間隙を縫ってやっと回収したカムコーダーに救援要請を記録し、海に流す。その後満潮で岩礁が水没する為に32秒以内で泳ぎ切れる距離にあるブイに移動、ブイを襲ってくるサメの攻撃をかわした後遂に逆襲に出る。並行して海岸に漂着したカムコーダーを少年が拾う。

一言でまとめると、スティーブン・スピルバーグが「激突!」のヴァリエーションとして「ジョーズ」を作ったのを逆手に取って、「ジョーズ」をそのまま「激突!」の趣向で作り上げたと言えばかなり近い。
 昔から言っているように、「激突!」は人間vsマンモス(トラックは人間の運転するものと考えない)の図式であったので、それを人間vsサメに変えたということだ。そうは言っても、「激突!」においても実際に対するのはマンモスではないわけで、そこに平凡な日常が思いがけない恐怖に変わる断然優れた着想があった。それに比べると「ジョーズ」にも本作にも最初から怖いサメを相手にするというところに面白味の限界がある。

ただ、「オープン・ウォーター」のように、遭難者が何もせず、即ち作者が何もせず、観客の「サメは怖い」という思い込みや想像力に偏に頼った無気力な作劇の代わりに、あの手この手でサスペンスを生む趣向を張り巡らしているのには感心させられる。特に、「壊疽で体がやられてしまう前に」というぼんやりとした時限サスペンスの要素を加えたのが良い。

同じく時限サスペンスでは、満潮と干潮も使われているが、これに関しては具体的である割りに余り機能していず、サメの周遊時間を利用したサスペンスの趣向のほうがずっと良い。生物学的に実際のサメの生態とは相当違うと思うが、それを言ったらおしまい。

予算が余りかかっていないB級(低予算の意味)映画としては、敢闘賞もの。本作では、脚本に負うところが多いとは言え、コレット=セラはやはり才能のある監督と思う。

サメが人をためて襲撃するなどということはないようだから、サメに名誉棄損だと訴えられますな。

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