映画評「アーロと少年」
☆☆★(5点/10点満点中)
2015年アメリカ映画 監督ピーター・ソーン
ネタバレあり
ピクサー製作・ディズニー配給のCGアニメ。
6600万年前に隕石が衝突せず、恐竜が滅びなかったパラレル・ワールドの地球が舞台。恐竜は進化をして現在の人類とほぼ同じ生活を営んでいる。
首長竜のアーロ(声:レイモンド・オチョア)は自分が弱虫であることから結果的に奔流で大事な父親を失う。他日彼も川に落ちて流され、実家と離れてしまい、川を辿って帰る方途を探るも先立つ物がなく難儀していると、最初は嫌っていた四つ足歩行の人間の子供スポット(声:ジャック・ブライト)に食べ物を貰って友達になる。凶暴な翼竜から逃れる冒険の後、出会った恐竜たちに牛泥棒から牛を奪還するのに協力してほしいと頼まれて見事に役目を果たす。
かくして成長したアーロは帰途の目途がつくと、途中で出会った人間の一家に孤児のスポットを預けた後遂に家に戻る。
本作に限ったことではないが、昨今、西部劇を何百本も観ているオールド・ファンには何ということもない作品が高く評価されているのをよく見る。
本作などは、母親と二人暮らしの若者がキャトルドライブに加わって働くことで大人の世界を少し知って成長した後で故郷に戻る「男の出発(たびだち)」(1972年)と全く同じ構図のお話なのでニコニコはできるものの、目新しさは全く感じず、平凡な内容という印象に留まってしまう。人間を恐竜に変えただけで、恐竜故の面白味を本格的に醸成できていないのでは(大人の観客が)不満を覚えるのはやむを得まい。
人間が四つ足で言葉も喋れないという転倒がちょっと興味を呼ぶだろうか。少年は孤児で狼に育てられたようである。スポットを受け入れる人間は二足歩行ができ、肌の色が彼より白い。西部劇的に解釈すればスポットはアメリカン・インディアンに相当し、露骨な人種・民族差別が復活しそうな現状のアメリカにおいて、白人と思われる一家が黄色人種らしいスポットを受け入れるのは風刺的ですらある。
しかし、巷に人種・民族差別があっても、大統領が2年も経たないうちにそれに極めて近い思想がベースにある大統領令を出すとは作者たちも思っていなかっただろう。
2015年アメリカ映画 監督ピーター・ソーン
ネタバレあり
ピクサー製作・ディズニー配給のCGアニメ。
6600万年前に隕石が衝突せず、恐竜が滅びなかったパラレル・ワールドの地球が舞台。恐竜は進化をして現在の人類とほぼ同じ生活を営んでいる。
首長竜のアーロ(声:レイモンド・オチョア)は自分が弱虫であることから結果的に奔流で大事な父親を失う。他日彼も川に落ちて流され、実家と離れてしまい、川を辿って帰る方途を探るも先立つ物がなく難儀していると、最初は嫌っていた四つ足歩行の人間の子供スポット(声:ジャック・ブライト)に食べ物を貰って友達になる。凶暴な翼竜から逃れる冒険の後、出会った恐竜たちに牛泥棒から牛を奪還するのに協力してほしいと頼まれて見事に役目を果たす。
かくして成長したアーロは帰途の目途がつくと、途中で出会った人間の一家に孤児のスポットを預けた後遂に家に戻る。
本作に限ったことではないが、昨今、西部劇を何百本も観ているオールド・ファンには何ということもない作品が高く評価されているのをよく見る。
本作などは、母親と二人暮らしの若者がキャトルドライブに加わって働くことで大人の世界を少し知って成長した後で故郷に戻る「男の出発(たびだち)」(1972年)と全く同じ構図のお話なのでニコニコはできるものの、目新しさは全く感じず、平凡な内容という印象に留まってしまう。人間を恐竜に変えただけで、恐竜故の面白味を本格的に醸成できていないのでは(大人の観客が)不満を覚えるのはやむを得まい。
人間が四つ足で言葉も喋れないという転倒がちょっと興味を呼ぶだろうか。少年は孤児で狼に育てられたようである。スポットを受け入れる人間は二足歩行ができ、肌の色が彼より白い。西部劇的に解釈すればスポットはアメリカン・インディアンに相当し、露骨な人種・民族差別が復活しそうな現状のアメリカにおいて、白人と思われる一家が黄色人種らしいスポットを受け入れるのは風刺的ですらある。
しかし、巷に人種・民族差別があっても、大統領が2年も経たないうちにそれに極めて近い思想がベースにある大統領令を出すとは作者たちも思っていなかっただろう。
この記事へのコメント
中盤から西部劇の秀作「男の出発」にしか見えなくなったので、面白味が感じられず、評価は抑えましたが、かの西部劇が大好きであるように、好悪を言えば、好きですね。
>「ズートピア」
明日見る予定です。