映画評「奪還者」

☆☆★(5点/10点満点中)
2014年オーストラリア=アメリカ合作映画 監督デーヴィッド・ミショッド
ネタバレあり

アニマル・キングダム」で映画作家としての実力を感じた若手監督デーヴィッド・ミショッドの長編映画第2作。

世界経済が破綻して10年後、荒廃したオーストラリアが舞台と言えば、映画ファンなら「マッド・マックス」シリーズを思い出すのは必定だが、その第一作同様SFとは言いにくい。Allcinemaにあるサスペンスというのも少し違う。ロードムービーというのが一番ふさわしい。

ガイ・ピアースが車から降りてカラオケ店みたいなところで一服していると、三人組の男が乗り上げて動かなくなったピックアップ・トラックを乗り捨てて彼の車に乗ってとんずらする。その車がどうしても必要な彼は、トラックを何とか動かして男たちを追うものの、多勢に無勢、昏倒させられる。
 行方を追ううちに重傷を負った若者ロバート・パティンスンに「兄の車を奪った車泥棒か」と詰め寄られるが、若者は寧ろ重傷を負った彼を見捨てた兄スクート・マクネイリーを恨んでいるので同病相憐れむ感じとなり、若者をガイドに三人のいる場所へ向かうことになる。
 かくしてモーテルに泊まっている3人と対峙するが、兄弟は結局撃ち合って死に、ピアースも他の二人を始末する。

結論から言うと、不満を感じる部分が多い。テンポが遅い感じなのは、インディペンデント映画風(と言うか、インディペンデント映画なのだろう)に主人公の心理を行間で見せるのが狙いのようなので難点とは思わない。寧ろ、説明不足の感が否めないところが多いのが問題で、特に一番肝心の、主人公が車奪還に固執した理由が、そのトランクに収められていた犬の死体にあったと判明する幕切れがそうピンと来ないので☆★が伸び切らない。
 ただ、ここに主題が集約されているのは解る。その前の官憲事務所での彼の発言と合わせて理解すると、人を殺すのに全く躊躇しない彼が実は本作の登場人物のうち一番人情を持っている矛盾した存在であり、文明の荒廃は人心の荒廃をもたらす、という終末論的な考えが浮かび上がるのである。

金銭ではUSドルに唯一価値があり、経済活動的には中国人がほぼ仕切っている、という本作の興味深い状況は、多分に現在オーストラリアの人々が抱いている恐れを反映しているような気がする。

第二次大戦をもって人類は著しく進歩したが、今やや後退時期に入っている。それを乗り超えた時、人類は初めて日本国憲法の理念に値するようになる。この憲法は100年早すぎたのだ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2016年09月04日 19:13
1000年かもしれませんぜ。(=_=)
オカピー
2016年09月04日 20:30
ねこのひげさん、こんにちは。

>1000年
そう思うと絶望的になってしまいますからね^^
人間も科学同様に加速度的に進歩しているというのも確か。1000年前と言えば、欧州でも宗教が幅を利かせていた大暗黒時代・・・

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  • 「奪還者」

    Excerpt: インディペンデントな香りがプンプンと、緊張感がヒシヒシと、漂う作品なのであるが…。午後2時から始まる会議のように、寝落ちしそうになってしまった。何が悪いという訳でもない。もしかしたら緊張し過ぎたのかも.. Weblog: ここなつ映画レビュー racked: 2016-08-30 09:58
  • 奪還者 ★★★.5

    Excerpt: 『トエンティマン・ブラザーズ』などのガイ・ピアース、『トワイライト』シリーズなどのロバート・パティソンが共演を果たしたバイオレンスムービー。世界経済が崩壊して鉱物資源を狙う荒くれ者がひしめくようになっ.. Weblog: パピとママ映画のblog racked: 2016-08-30 14:50