映画評「ダラス・バイヤーズクラブ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督ジャン=マルク・ヴァレ
ネタバレあり

薬をテーマにした実話もの。薬を巡る実話ものは人畜無害的な内容のものが多いことを考えると、ちょっとした変わり種と言って良い。

1980年代、テキサスはダラスのロデオ乗りマシュー・マコノヒーがエイズを患って余命30日と告げられ、ショックを受ける。エイズは同性愛者の病気と信じ込んでいたので当初は医師の告げた病名を信じないが、書物に当たって身に覚えがある感染例に突き当たる。
 最初AZTという夢の新薬に期待を寄せて臨床中なので投与できないと言われると、病院の雑務係に賄賂を渡してこっそり譲り受ける。ルール変更でそれもできなくなると、在メキシコの医師を紹介してもらう。資格失効したこの医師から“AZTは百害あって一利なし”と言われ、別の薬を大量に貰う。
 やがて同じ病気を患う同性愛者ジャレッド・レトーとこれらの新薬を売る商売を始める。厳密に言えば、400ドルで入会した会員に無料で薬を渡す変則商売で、この会の名前がタイトルになっているダラス・バイヤーズ・クラブである。
 メキシコでの購入が厳しくなると、イスラエルや日本にまで足を延ばす。日本では僕らもその名を聞いたことのあるインターフェロンを買っている。勿論、FDA(食品医薬品局)を始め当局から色々と干渉が入りクラブの運営もままならないが、こうした活動の結果30日と言われた彼の余命が凡そ7年に伸びたのである。

彼の活動が不条理なところも多い法律に直接に影響を与えることはなかったものの、彼個人についてはFDAも未承認の薬を投与することを認めたらしい。
 薬の場合早く承認しすぎても問題があり、(他国で効果が認められている場合などで)時間がかかるのも問題である。実際の名前をロン・ウッドルーフ氏という主人公は、だから、法律に抵触しても医学的により正しいかもしれない手段を取るという罪に果敢に挑戦していく、溺れる者は藁をも掴もうとするのである。

映画は主人公の“犯罪”により会員だった人の寿命が延びたと言っているが、それ自体は僕らに関係ないことと言うべきであろう。しかし、薬の効果以上に病気に挑む気持ちや社会の仕組みに対する反骨精神が彼の寿命を延ばした(と推測できる)事実から僕らが貰う感動には、素直にこうべを垂れたい。病気(と社会の仕組みに対する反骨)が保守的な彼の同性愛者に対する感情を変えていくのも観ていて気持ちが良い。

この作品を高く評価する人が殆ど異口同音に仰るので誠に面白くない(笑)が、マコノヒーのエイズ患者、レトーの同性愛者の成りきり演技が圧巻。

僕はメーカーの海外マーケッティングが仕事だったけど、安全規格担当の英語力が不足していた為、FDAの上部組織DHHSと多少関わったことがある。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年03月01日 09:16
エイズだけでなく癌でも、余命いくらと告げられた人が3年も4年も・・・時には10年も生き延びた例は聞きますね。
逆に薬を飲んで何年も生き延びている人が、生きるのがめんどくさくなって薬をやめたという話もありますね。

マコノヒーもやりますね。
弁護士役しか似合わないと思っていたんですが・・・(^^ゞ
美男なのが災いしているのかな?
オカピー
2015年03月01日 21:36
ねこのひげさん、こんにちは。

脳腫瘍を患っていた、蝶を愛好する少年が、アマゾンに蝶を取りに行ったら、腫瘍が消えたという奇跡は映画にもなりましたね。
「スター・ウォーズ」に夢中になったら、やはり、腫瘍が消えた少年の話も聞きました。
「病は気から」という諺は、ガンにさえ当てはまることもあるということですね。

>マコノヒー
最近の役柄の多様性に僕は驚いていますよ。

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