映画評「熱波」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年ポルトガル=ドイツ=ブラジル=フランス合作映画 監督ミゲル・ゴメス
ネタバレあり

僕はすっかりマノエル・デ・オリヴェイラの最新作(今月WOWOWにて放映予定あり)かと思って観ていたら、ミゲル・ゴメスという若手(本作撮影時40歳)による作品であった。しかし、同じポルトガルの監督ではあり、作品ムード的に共通するものがあるように思われる。

初老の女性ピラール(テレザ・マドルーガ)は80代の老女アウロラ(ラウラ・ソヴェラウ)に悩まされる。長年面倒を見る小間使いのアフリカ女性サンタ(イザベル・ムニョス・カルドーゾ)は彼女は気がふれていると言い、本人はサンタから呪いをかけられていると言う。鰐だの猿だのとアウロラが語る話は確かに妙である。
 というのが第一部「楽園の崩壊」の内容だが、これだけでは些か掴みどころがないので、第二部「楽園」に参ることにする。

ここは重篤な状態に陥ったアウロラが口にした昔の恋人ヴェントゥーラの語る部分で、彼の語り以外に台詞はないので半ばサイレント映画のようなムードが生まれている。
 老人によれば、半世紀前若きヴェントゥーラ(カルロト・コッタ)は辿りついたアフリカで、鰐を縁に隣人の人妻アウロラ(アナ・モレイラ)と深い仲になり、駆け落ち騒動で彼の親友マリオ(マヌエル・メスキータ)が死に、これが元で植民地戦争が始まり、結局二人は別れていく。
 以来互いの消息を知りながらも戻ったポルトガルで会うこともなく、アウロラは死ぬのである。

僕はラテン・アメリカの文学はまともに読んだことはないのだが、勝手にこの映画はラテン・アメリカ文学の香りを感じた。少なくともラテン(アメリカではない)文学に見られる強烈な野趣がある。
 特に構成の大胆さが目を引く。回想形式と言えないことはないが、老いさらばえたカップルを前半で映し出した後に後半若き日の切ない恋模様が綴られるのは未来を先に見せられるような印象があり、非常に残酷な切り口と言うことが出来る。同時に、未来である現在から見れば、過去が幻想と思えて来るほど乖離があり、結果的に、残酷な現実でしかないはずの現在も夢のような肌触りをもって作られていることが感じ取れるような設計が為されている。一種の幻想映画であると思う。

といった次第で、そうお硬くはなくても純文学度が高いので万人向けとは言えないが、モノクロ映画がお好きな方やラテン系文学がお好きな方にはお勧めできる。

映画文学と言いたくなりますね。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年02月22日 10:23
映画の良い所は、作った国の雰囲気に接することが出来ることですが・・・・
昨今の映画はグローバル化して薄れてきましたね。
オカピー
2015年02月22日 19:37
ねこのひげさん、こんにちは。

>映画はグローバル化
これが映画をつまらなくしている要因の一つですね。CGを含むVFXの発達がその傾向を強めているのではないかと思います。

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  • 『熱波』

    Excerpt: ----この映画、 モノクロみたいだけど、 昔の映画ニャの? 「いやいや。 これは2012年に作られた ポルトガル=ドイツ=ブラジル=フランス、 4カ国の合作映画」 ----それにしては メインビジ.. Weblog: ラムの大通り racked: 2015-02-26 22:44