映画評「セイフ ヘイヴン」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2013年アメリカ映画 監督ラッセ・ハルストレム
ネタバレあり

2004年にニコラス・スパークスの小説を映画化した「きみに読む物語」の、邦題を考える時の影響力は、かつての「太陽がいっぱい」(1959年)や「小さな恋のメロディ」(1971年)と同じくらいのものがあったのかもしれない。それ以前にも“きみ”“ぼく”がタイトルに付けられることはあったが、これほど頻繁ではなかったと思う。統計を取っていないのでしかと確認できていないものの、前述作の公開以降劇的に増えたという印象がある。あるいは日本のサブカルチャーにそういう下地が既にあり、同作が勢いづけたのかもしれない。

本作は人気のそのスパークスの小説を映画化したものであるが、僕の関心はご贔屓でそれ以上に最近お目にかかることの多いラッセ・ハルストレムが監督をしているということだ。

警察から第一級殺人で追われている美人ジュリアン・ハフが安心できる避難先を求めてノースカロライナ州の港町に降り立ち、そこで雑貨屋を営むジョシュ・デュアメルの一家と親しくなる。数年前に亡くした母親への思慕を断ち切れず父親に反抗的な態度を取る息子のノア・ロマックス君も、母親の記憶も曖昧な為に素直な態度で接している娘のミミ・カークランドちゃんも彼女に懐き、デュアメルが新しい人生を始めようかと思った矢先にジュリアン嬢の警察沙汰が発覚する。

ここまでは全般的にロマンス・ムードを前面に押し出しながら時々警察関係者を見せるという小サスペンスをちりばめて進行するが、これには実は裏があり、刑事の暴力夫デーヴィッド・ライオンズが刑事の力を使って偽の指名手配書をでっち上げていたことが判明する。映画は情報を隠すことで前半の逃亡サスペンスを醸成した形である。本作の情報を隠す手法はデュアメルの亡妻の写真を見せないところにも現れている。

が、彼女の逃亡を手助けした老婦人の家に忍び込んで電話から彼女の逃亡先を確認したライオンズが現れていよいよ本格的な、しかし、前半と些か趣きの異なるサスペンスに入っていく。とは言っても、全体の三分の一弱を構成するのに過ぎないので、全体としてロマンスの枠に入ることに変わりはない。

それよりヒロインが友達付き合いをしていた近所の女性ロビン・マリンズの正体にちょっと吃驚。中盤彼女の秘密を知っていそうな話しぶりや、夢の中で危険(暴力夫)が迫っていることを知らせたりすることが、それで納得できるという次第。

ミステリー的な部分の伏線をもう少し巧みに織り込んでおけば総合的にぐっと厚みのある作品になったと思うが、大衆映画としてなかなか楽しめる出来。ハルストレムの展開ぶりもスムーズなので、採点は少し甘くしておきます。

今年最初の映画記事、本年もよろしくお願い申し上げます。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2015年01月06日 16:07
自分の持つ力を利用するという意味では、刑事も犯罪者も紙一重というところでありましょう。

サンダンス映画祭でグランプリを取った『Whiplash』が面白そうですよ。
オカピー
2015年01月06日 20:49
ねこのひげさん、こんにちは。

>刑事も犯罪者も紙一重
犯罪者たる刑事もいますしね(苦笑)

>Whiplash
情報有難うございます<(_ _)>
日本に来るのでしょうね^^;
今月WOWOWがサンダンス映画祭の小特集を組んでいるように、日本で正式公開されなくても不自由しない時代ですけど・・・

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