映画評「チャンプ」(1931年版)

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1931年アメリカ映画 監督キング・ヴィダー
ネタバレあり

1979年にフランコ・ゼッフィレッリが監督した同名映画のオリジナル。お話の骨格はリメイクと同じなので、リメイクの印象が強い方には述べるまでもないだろうが、一応簡単にアウトラインをば。

元ヘビー級チャンピオンのアンディ(ウォーレス・ビアリー)は今は酒と賭博に明け暮れる日々であるが、大事に育てた息子ティング(ジャッキー・クーパー)は父の強さを信じて慕っている。珍しく賭けに勝ったアンディはその金で息子に競走馬を買い与え、喜んだ息子は初めての参戦の日に競馬場で富豪の夫人リンダ(アイリーン・リッチ)と交流、親しみを覚える。偶然にも彼女こそ彼のまだ見ぬ母親である。
 他方、結局息子の馬が負けた為に父親は損失を被って自分の不甲斐なさを痛感、母親に渡すことを決意するが、ティングは父を慕って列車からこっそり降りて戻って試合の決まったアンディを懸命に応援、なまった身体ゆえに苦戦する父を思いがけぬ勝利に導く。が、老いたボクサーは無理がたたって心臓麻痺を起こして死んでしまう。

リメイクより37分も短く、馬を買う場面まであっという間、若い人には淡泊に映る可能性が高いが、逆にリメイクは感情に訴えようとやり過ぎた感もあり、本来映画が目指すべきはオリジナルの作り方であると思う。

監督はサイレント時代に実績を積み上げていたキング・ヴィダーで、試合本番までは実に軽やかに進む。ゼッフィレッリ版とはタッチが大分違う。父子の交流はユーモラスと言っても良いタッチで点出されているが、ティングが母親の邸宅に入る前所在なさに家の屋根などで遊ぶ箇所は飄逸と言っても良い好場面で、本論とは殆ど関係ない挿話ながら、実に良い味わいを生み出している。このタッチが終盤の父子間の愛情が爆発するお涙頂戴に変ずる終盤に効果を発揮して観客の涙を絞り出す。韓国映画のようにユーモアを超えてギャグにしてしまってはダメで、アメリカ映画ことに実績のあるヴィダーともなるとその辺りの匙加減が絶妙で感銘させられるのである。

ただ、僕にしても終盤の愁嘆場までの場面を多少ねちっこく作った方が現在の観客には受けるという思いは抱く。それを考慮して★一つマイナスしておきます。

学生時代「クレイマー、クレイマー」と二本立てでリメイク鑑賞。映画としては「クレイマー」のほうが高級な印象があり、個人的にもお涙頂戴の「チャンプ」より泣けた。後年会社でどっちが泣けるか議論になったのも懐かしい。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 1

ナイス

この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年12月07日 10:18
こちらが正解でしょうね。
リメイク版はたしかに感情過多でありました。
さすが、キング・ヴィダーであります。
最近の日本映画も感情過多が多いでありますけどね。
オカピー
2014年12月07日 20:34
ねこのひげさん、こんにちは。

日本は昔から伝統的ですが、近年はTV局がTV視聴者の水準に合わせて作りますから、益々感情過多の描写が目立ちますね。
だから、観照的な作りの作品が半ば否定的な意見として「淡々」と評価されることが多いのでしょう。本来は誉め言葉が適用されるべき作り方なのですが。

この記事へのトラックバック

  • 映画評「サウスポー」

    Excerpt: ☆☆☆★(7点/10点満点中) 2015年アメリカ映画 監督アントワーヌ・フークア ネタバレあり Weblog: プロフェッサー・オカピーの部屋[別館] racked: 2017-04-30 08:05