映画評「最後の忠臣蔵」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・杉田成道
ネタバレあり

現在「国性爺合戦」など近松門左衛門の時代物6編を読んでいるところ。夏には元々浄瑠璃の為に書かれ後に歌舞伎化された「仮名手本忠臣蔵」(竹田出雲(二世)他の合作)も読んで感動、何だかんだ言って僕も日本人であることを痛感させられた。

本作は討ち入りから16年後の後日談で、原作は池宮彰一郎の同名小説。監督は主にTVで活躍している杉田成道。

赤穂義士の17回忌が近づく頃、四十七人のうち唯一生き延びて事件を遺族に伝えかつ援助をする役目を負った寺坂吉右衛門(佐藤浩市)が援助を全うしようとする頃、討ち入り前日に逐電した“卑怯者”瀬尾孫左衛門(役所広司)らしき人物を見かける。瀬尾は庵で元花魁のゆう(安田成美)と共に可音(桜庭ななみ)という少女に甲斐甲斐しく尽くしていた。少女は大石内蔵助(片岡仁左衛門)の隠された娘で、瀬尾は娘を護るよう内蔵助から直々に依頼されて逐電した、というのが真相である。
 近松の「曽根崎心中」を公演中の竹本座で商人の茶屋四郎二郎(笈田ヨシ)の御曹司・修一郎(山本耕史)が可音を見初めた為、四郎二郎は壺を巡って知己になったばかりの瀬尾に彼女がどこのお姫様であるか調べるように依頼する。調べる必要もない瀬尾は彼を慕っている可音に商家に嫁ぐよう説得、紆余曲折の末に役目を果たし、内蔵助らの後を追う。

これがあの時代の現実、武士の美学であったのだろうが、最後の自決は武士道の悪い面を感じざるを得ない。本人にとってはともかく、我々の目には「武士道残酷物語」に映る。

全体の落ち着いた佇まいと展開ぶり、河川敷での対決模様や追いかける修一郎から可音が逃げる場面の描写に見る様式的な撮り方に代表される映像など、なかなか見どころがあり、佳作と言いたいところなのであるが、実はお話にあるいは致命的かもしれない問題がある。
 即ち、16年間公儀から隠してきた可音(かね)の花嫁行列にずらずらと赤穂藩ゆかりの人々が集まって大騒ぎになること、これなり。公儀の、この時点における彼女に対する態度が説明されていないので、こんなに露骨に身上が分かるお輿入れをやっても良いのかと、首を傾げてしまうのである。僕の理解不足かもしれないが、鑑賞中興醒めするものを覚えた。こういうのは原作の方が解りやすかったりするので、その部分だけでも読みましょうか。

日本人なら近松門左衛門は読むべし。浄瑠璃を観るより数倍早く読める。掛詞(かけことば)を駆使した圧倒的な名文なので、現代語訳付きのもので原文に触れると良いでしょう。

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この記事へのコメント

2014年12月03日 22:43
江戸時代の人形浄瑠璃は人形遣いが皆黒子になっているのですよね。あれを復活させてもらいたいです。今は、名人がスターでもあるから、顔を出しているのですが、舞台に出てきたときは顔を出して見せても、その後すっと他の黒子のように顔を隠してやってもらいたいのですよね。そのほうがお人形だけの世界になって観やすいと思うのです。
オカピー
2014年12月04日 19:25
nesskoさん、こんにちは。

>黒子
本来はそうでなければならないのですけど、時代なのでしょうか。
僕にとって浄瑠璃はTVの時代劇における劇中劇という形でお目にかかることが多いので、それが当たり前と思っていましたが、違うようですね。
残念です。
ねこのひげ
2014年12月07日 10:30
赤穂藩ゆかりの人間がズラズラで大騒ぎはたしかに疑問符でありましたね。
ひそかに見送るのならわかるんですけどね。
自決はあの当時としては当たり前だったんでしょうね。
”武士道とは死ぬことと見つけたり”なんて葉隠にありますからね。
最近、それにあこがれて日本にくる外人さんたちも増えたようですが。
オカピー
2014年12月07日 20:31
ねこのひげさん、こんにちは。

>大騒ぎ
二律背反のパターンで終盤は?マークが点灯しっぱなしでした。
何の為に隠れていたのでしょ?

>葉隠
これもいつか読もうと思っています。

>外人さん
この作品のプロデューサーも外国人ですし、文字通り洋画の「47RONIN」も切腹を見せたがっていた雰囲気が濃厚でした。
外国人には日本人は神秘なんでしょうね。

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