映画評「殺人の告白」

☆☆★(5点/10点満点中)
2012年韓国映画 監督チョン・ビョンギル
重要なネタバレあり

7月にWOWOWは韓国サスペンス特集として5本組んだが、どんなシリアスな内容でもコミカルな部分を挿入するのが流儀らしい韓国スタイルにうんざりして(トーンが一貫しないものはダメとされている古典的演劇論・映画論から言えば、韓国映画の殆どが失格である)堪忍袋の緒が切れた為、昨年の途中くらいからキム・ギドク、イ・チャンドンなどその韓国スタイルに縛られない本当の映画作家以外の作品は基本的に観ないことにした。しかし、余りに観るものがないので、仕方なくタイトルから面白そうな予感を抱かせた本作一本だけ付き合うことにする。

1990年に十人の女性が連続して殺害される事件が起きる。15年の時効が成立してから2年後の2007年、犯人を名乗る青年パク・シフが事件の真相を綴った著書を出版する。それを苦々しく見つめるのは犯人と格闘して取り逃がし、恋人まで拉致されて恐らく殺された捜査班長チョン・ジェヨン。
 一方、犯人の被害者家族たちはこの青年を誘拐しようと試みてアジトに確保したものの、何者かに奪還されてしまう。
 ところが、刑事と青年とのTV対決の最中に「自分こそ犯人」と言う男の電話が入り、後日TV局が三人が一堂に会する機会を設ける。

やはり韓国映画の悪癖が相当出ていた。開巻後30分頃から被害者家族が犯人を誘拐する模様が完全な喜劇仕立てなのである。シリアスや緊張感の中にそこはかとなくユーモアを漂わせるなら寧ろセンスを買いたいくらいだが、こうドタバタしては緊張感は途絶えてしまうし、最後の愁嘆場やサスペンスもすっきりしなくなる。僕はずっと映画における国ごとの個性はあるべきと主張しているわけだが、もう少し違う形でそれを残さないとインド映画も韓国映画もこれ以上観る気になれない。

以降重要なネタばれがありますので、ご注意を。

TV実況放送が始まって間もなく、青年は「私は犯人ではない」とあっさり認め、本は「刑事が書いた」と判明、二人は共に被害者関係者であり、潜伏する真犯人をおびき寄せる手の込んだ罠であったと告白する。
 一種のどんでん返しであるが、このお話をきちんと成り立たせるには周囲に誰もいない二人だけの場面があってはならない。僕が記憶する限りぎりぎり避けられたようで、伏線はあるものの所謂インチキな見せ方はなかったと思う。

しかし、問題は刑事の人情過剰と犯人の超人ぶりである。刑事が下手な人情(つまり個人的復讐)を見せずにハードボイルドに徹し逮捕してしまえばあんなド派手なカーチェースをして一般人を巻き込まずにあっさり済んだものを。日本の大衆もこういう流れは嫌いではないが、韓国人ほど激烈ではないですなあ。尤もそれを言えば大した見せ場のない刑事ドラマになってしまうのでやむを得ないものの、犯人がスーパーヒーロー並みに不死身だから進めば進むほど大仰になり、興醒めていく。最近の映画ファンにはこういうのが見応えがあると理解されるのだろう。その割に最後があっさりでしたがね。

ウルヴァリン:SAMURAI」のヤクザとこの真犯人が戦えば、良い勝負をするでしょう。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2014年08月09日 18:33
喜劇仕立てはやめたほうがいいというのは、大いに賛成でありますが・・・
最近気に入って読んでいる北欧系の推理小説にもこの傾向は観られますね。
陰惨な殺人を描くのに、どぎつさを緩和しようとしているんですかね?
かつては、手塚漫画に見られた手法でありますが・・・
オカピー
2014年08月09日 20:20
ねこのひげさん、こんにちは。

手塚スタイルというか、コメディ・リリーフという形なら(そのセンスにもよりますが)確かに緩和の効果もあり、まだ良いのですが、韓国映画の場合は前半は喜劇、後半は悲劇もしくはシリアスという水と油のような極端な作り方で方向性が一貫しないからいかんのですよ。弱めるというより、韓国映画の場合は、振幅という形で強めていると思います。映画先進国の映画に見慣れた僕からすると、これはどうも泥臭いのです。
 僕が勝手に私淑する双葉十三郎さんなどはこういうタイプの映画をご覧になると「一本で二本の映画を観ているよう」と表現して苦笑していましたが、双葉さんもご存命なら「もう韓国映画はいいや」ということにされたのではないかと思っております^^

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