映画評「最強のふたり」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2011年フランス映画 監督エリック・トレダノ、オリヴィエ・ナカシュ
ネタバレあり

この10日間に観た作品中割合面白いと思えたのは「アルゴ」「ウェイバック-脱出6500km」そして本作である。この三作品には共通点がある。全て実話をベースにしているということである。裏返せば実話の方が下手な創作より面白いということになる。実際、映画120年の歴史の中で、これほど実話が取り上げられた20年はないと思う。

パラグライダーの事故で首から下が不自由になって長いこと経つ富豪フランソワ・クリュゼが、失業保険目当てに訪れた天真爛漫の黒人青年オマール・シーの言動が面白く好奇心から介護専門の雇用人として試用を決める。青年が麻薬煙草を勧めてくるなど障害者扱いをしないことに感じるところのあった富豪は彼を正規に採用、彼により気持ちを解放していき、やがて二人はかけがえのない友人同士になる。青年は富豪が自分が障害者であるといった理由から会うのを躊躇う文通女性とのデートをセッティングして去っていく。

フランス映画である本作が、映画作りの方針が180度くらい違うアメリカ映画界が作り出した「最高の人生の見つけ方」にかなり近いスタンスなのに少々驚かされたが、あの作品よりも匠気の薄い、素直な作り方をしていると思う。敢えて匠気と言える部分を探せば、序盤で車(マセラティ)を飛ばす二人が警察に追われる部分を三分の二くらいのところで再登場させる、先日の「トールマン」と同じ手法による場面の繰り返しがある程度で、現在の映画としては気取りの少ない作品ということができるだろう。

素直であるが、構成はしっかりしている。最初の場面で二人はどういう関係なのであろうという関心を観客に持たせ、それから二人の関係が始まるところから再スタートし、青年の傍若無人とも言える、不思議な言動が富豪同様に我々を魅了しリードしていくのである。青年が富豪の障害を意に介さないように、富豪も若者の前科や嗜好に頓着しない。一々説明されないが、富豪の心情も行間から何となく解るように作られている。説明過多にも不足にも陥らないこの辺りの匙加減も絶妙であったと思う。

幕切れに見せた青年の援助のおかげか、先妻と死別した富豪は再婚したらしい。本邦初登場であるエリック・トレダノ&オリヴィエ・ナカシュという二人組の処理が非常によろしく、実に味わい深い、良い幕切れだった。

色眼鏡で見ないことが人生では肝要、ちゅうことですな。個人的にも、差別用語がうるさくなったのは、相手に対する不寛容が進んだ証左だと思っている。全く感心できない。

この記事へのコメント

vivajiji
2013年10月06日 13:17
>色眼鏡で見ないことが人生では肝要・・・

ちゅうことは(笑)、99、9%色眼鏡で
他者を見、安易に判断するってこと、
ヒネクレた私は当然そう思います。^^;
外見だったり職業だったり親兄弟だったり。
それにしても、どうしてこんなに狭量になったか。
前にも言及した気がします、“日本全国幼稚化”。
内田樹氏いわく、幼稚な若者や大人が闊歩できる
社会は、本来は成熟した社会なんですと。

本作に流れている人間讃歌は久々に
映画的快感を呼び覚ましてくれるに超充分。
しかし!
「実話ですって!」「ええっ!実話」
「そうなの、実話なの~」・・・
実話、実話ってやたら色めき立って詰めかけ
ては、行列作っている中高年の群れ見ては、
腹ん中でせっせと色眼鏡磨いている私、約1名。
ねこのひげ
2013年10月06日 18:16
説明過剰にならず、映画の流れにそって自然にわかるようにしているのが、技術の高さというか見識の高さを感じますな~
劇場で見てひさしぶりに感動した作品でありました。
オカピー
2013年10月06日 21:18
vivajijiさん、こんにちは。

>色眼鏡
人間の性なんでしょうなあ。
政治家などは信用せず、色眼鏡で観た方が賢いと思いますがね。

>“日本全国幼稚化”
日々実感しております。
モンスター・ペアレンツの言動など、三歳児が大人になったかのよう。

>実話
のほうが面白い話が多くなってきた、というのは事実である半面、実話だから作品の価値が高くなるわけでもないと思うので、そういう観方には呆れます。
どうもミーハーにはなれません^^

とにかく、鑑賞中の味も、後味も、良い作品でしたね。
オカピー
2013年10月06日 21:26
ねこのひげさん、こんにちは。

話自体も良かったですが、作り方でしょうねえ。下手に作ったら実話ものなのにフィクション以上に嘘っぽい作品になったのではないですか?

語りすぎず、説明不足や観客丸投げに陥らない、こういう作品が減ってきました。
説明過多に関しては、作者と観客とのピンポンの間に悪循環の感ありですね。
弁士が語っていたとは言え、サイレント映画を理解できていた昔の観客の理解力は凄かったと思います。

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