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zoom RSS 映画評「ポテチ」

<<   作成日時 : 2013/03/21 09:51   >>

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☆☆☆(6点/10点満点中)
2012年日本映画 監督・中村義洋
ネタバレあり

中村義洋監督が人気作家・伊坂幸太郎の小説を映画化するのは本作で四作目で、68分という小品ながら、なかなか上手く作られている。中村監督も伊坂文士もM・ナイト・シャマランが好きらしいが、彼の作品より余程面白い。

舞台は仙台。空き巣を生業にしている濱田岳は、楽天イーグルスもどきのプロ野球チームで控えに甘んじているが同じ年に地元で生まれ高校時代はスーパースターだった尾崎選手(阿部亮平)を熱烈に応援している。同棲中のガールフレンド木村文乃と共に尾崎選手の部屋に入っても物は取らない。
 部屋にいる時にかかってきた少女・松岡茉優からの電話に反応した彼は彼女からストーカーの話を聞かされるが、後日その話が全く嘘と判明、どうもその“ストーカー”と組んで美人局みたいなことをする気でいたと気付くと、先輩空き巣で探偵もしている大森南朋に動いて貰う。探偵は二人を利用してスキャンダル写真を撮って監督の弱みを握り、監督との確執の為に出番のない尾崎選手を出場させるように仕向けると、奇跡が起こる。

allcinemaのR氏はこの映画にひどく激昂していた。犯罪者たる空き巣に別の小悪(美人局カップルや監督)を非難する資格などないというのが彼の批判のベースにある。しかるに、本作は大衆映画である。大衆は昔から鼠小僧次郎吉、国定忠司、ロビン・フッド、アルセーヌ・ルパン等義賊が大好きであり、本作の空き巣グループも自ら語っているように碌でもない人間から盗んでいるのである。空き巣=悪人というのは官憲が考えれば良いことで、大衆映画の観客がそうリアリストになる必要はない。

彼が尾崎選手の部屋に入るのはその意味において既に空き巣ではないことは自明、正確な目的は後で判って来る。主人公にとって尾崎選手は地元出身でしかも同じ年の生まれだから殊更力が入るのだが、終盤で誕生日と生まれた病院まで同じと判明する。序盤主人公は健康診断の話をする。これも伏線になっていて、勘の良い人ならこの辺りである程度予測が付くだろうが、こういうのは少しうっかりして最後の方に納得させられた方がお得。
 注文したものと違う種類のポテトチップスを彼女に渡したのに気付いた時主人公は涙を流す。この時点では皆目解らなかったが、最終的に主人公の心情はよく理解できる。
 ここでネタを明かしてしまうと、主人公と尾崎選手はどうも病院で取り違えられたらしいのである。彼は母親・石田えりに対して自分の不甲斐なさに忸怩たるものを覚え、母親を連れて来た野球場で、かつて栄光につつまれていた尾崎選手に出番(代打)を与えさせることで、出来の悪い自分のピンチヒッターになって貰うわけである。

伏線を随所に敷き、用意周到に置いた布石を上手く回収してなかなか上出来ではありませんか。

3・11はモチーフの一つであって、あくまで要素に留めている。大森探偵に脅迫された二人も被災者? 仙台にいて地震に遭遇しただけで被災者と言うことはできまい。今でもちゃんとした部屋に住み、避難も強いられていない。彼らが被災者なら、ガソリンが容易に買えない事情と東電の輪番停電(杞憂・・・というより嘘があった)により病院に行くのを先延ばしした為に(それだけが理由ではないが)結果的に母親を失った僕の方が余程被災者である。
 僕も本作主人公に劣らずバカヤローであるが、東電の方がもっとバカヤローである。早く電力が自由化されて東電の電気を使わずに済むようになるよう心から願っている。

伊坂幸太郎は多くの場合映画化を念頭に置いて書いているらしい。

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ポテチ
運命の悪戯も大した違いなし 公式サイト。伊坂幸太郎原作、中村義洋監督・出演、濱田岳、木村文乃、大森南朋、石田えり、中林大樹、松岡茉優、阿部亮平、桜金造。ちなみに竹内結 ... ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2013/03/21 11:33
ポテチ/濱田岳、木村文乃
作家・伊坂幸太郎さんと監督・中村義洋さんのコンビによるこの4作目は『フィッシュストーリー』に収録されている中編小説を原作にする本編68分の中編映画です。過去3作いずれも面白 ... ...続きを見る
カノンな日々
2013/03/21 18:18
『ポテチ』
----『ポテチ』 って、 ポテトチップスのことだよね。 どんな映画か想像つかないニャあ。 「そうだね。 タイトルがタイトルだし、 ランニングタイムも68分と短い。 いわゆる小品の部類なんだけど、 その感動は 映画のサイズ(?)とは反比例するように深い。 だけど、この... ...続きを見る
ラムの大通り
2013/03/21 22:01
ポテチ
製作年度 2012年 上映時間 68分 原作 伊坂幸太郎『ポテチ』(新潮文庫刊『フィッシュストーリー』所収) 脚本:監督 中村義洋 音楽 斉藤和義 主題歌『今夜、リンゴの下で』 出演 濱田岳/木村文乃/大森南朋/石田えり/中村義洋 ...続きを見る
to Heart
2013/03/21 22:21
『ポテチ』
□作品オフィシャルサイト 「ポテチ」□監督・脚本 中村義洋□原作 伊坂幸太郎□キャスト 濱田 岳、木村文乃、大森南朋、石田えり、中林大樹、松岡茉優、阿部亮平、       中村義洋、桜 金造■鑑賞日 5月26日(土)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★☆ (... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2013/03/24 08:42

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
『ルパン三世』も、泥棒を主人公にしたアニメを放送するとは何事だ!という抗議があり、中止になったことがありますね。
結局、再開の要望が高く、いまにいたりますが・・・・
それを言っちゃあ〜お終いよ!であります。
真の泥棒は、ほかにいるわけでありますからね。

東電など、泥棒のトップでありましょうな〜万死に値するにもかかわらず、いけしゃあしゃあと生きていやがるのが腹立たしいところで。

小説にしろ、絵画にしろ、作品で金を稼ぐことが出来ないのは、芸術作品とはいえないと巨匠ダリは言っておりました。
ねこのひげ
2013/03/22 05:09
ねこのひげさん、こんにちは。

こういう大衆映画を観る人が、何を仰るか、と思いましたですね。
しかし、僕も映画に一家言ありますから、今日UPした「アンダーワールド」の映画論には“頭が固いオヤジだな”と若い人からは思われるでしょう。
まあ、仕方がないでしょう^^

>東電
現在の状況では違う業者を頼めないので、とにかく無駄を省き極力電気を使わないようにしております。それなりの結果が出ておりますが、奴ら泥棒だなあ。
何をしても損をしない仕組みになっていますからねえ。

>ダリ
特に20世紀以降はそうでしょうね。
オカピー
2013/03/22 22:21

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