映画評「永遠の僕たち」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年アメリカ映画 監督ガス・ヴァン・サント
ネタバレあり

若者の生と死を扱うことが多くなってきたガス・ヴァン・サントの新作は、正にそれ自体がテーマである。

ヘンリー・ホッパー君は両親を事故で失い、自らも臨死体験を経験して以来、全く関係のない人々の告別式に参列しているが、ある日それに気付いた斎場の人に咎められたところを少女ミア・ワシコウスカに助けられる。彼女も関係者であるか甚だ怪しい。
 これを契機に親しくなった二人は互いの境遇を語り合う。彼は事故と事故以来日本人特攻隊員の霊・加瀬亮が見えるようになったこと、彼女は脳腫瘍により後三ヶ月しか生きられないこと。付き合ううちに彼女の存在が重みを増す彼は彼女の確実に近く訪れる死に慄くようになるが、亡霊・加瀬が片思いの女性に「特攻で死ぬ前に叫ぶのは天皇陛下万歳ではなく、貴女の名前である」と書きながら出せなかった手紙の話をして彼を鼓舞する。
 かくして、きちんと別れを告げられなかった彼の失敗を繰り返さないようにホッパー君は明るく彼女の告別式に立つ。

また交通事故ですかという感じになるが、本作は主人公のそこからの立ち直りではなく、その後知り合った愛する人の死をきちんと正対視できるようになるまでを描いている為比較的新味があるが、考え方によっては死病ロマンスのヴァリエーションであってそう有難がる必要もないのかもしれない。二人の知り合う経緯の面白さや、幽霊それも特攻隊員を二人の間に置くというアングル故に死病ロマンス特有の甘さを払拭している気がして少なからぬ星を進呈致したものの、完全にすっきり付けたわけでもない。

彼女が大いに尊敬している進化論のダーウィンを思わせぶりに出しながら、告別式の物品整理に“門・綱・目・科・属・種”の分類が僅かに絡んでくるだけとは些か寂しい。この辺りに大人っぽいようでヤング・アダルト的な甘さが顔を出してしまうのである。
 ただ、通俗死病ロマンスでは生き残った側の苦痛ばかりに焦点が当てられるのに対し、死んでいった人間の心残りにも思いを馳せている点は悪くない。交通事故やナガサキが出てくるのはその為である。事故や原爆で亡くなった人は残していく人間に思いを馳せることなく死んだのだ。

主演のヘンリー君は、デニス・ホッパーの息子。「OK牧場の決闘」(1957年)の頃の彼に似ている。

この映画鑑賞に当たって不思議なことがあったことを追記しておきましょう。WOWOWで日本語タイトルが出た直後に僕の頭に何故かビートルズの「トゥ・オブ・アス」Two of Usが頭をよぎった。そしたら数十秒後に本当にこの曲がBGMとして掛かった。続いて、ダーウィン。実は数日前から図書館から借りたダーウィンの「種の起源」を読んでいる最中なのでござる。吃驚したなあ、もう。

日本の配給会社・製作会社の“君・僕”タイトル病は深刻ですな。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年12月07日 06:20
不思議な体験というのはありますね。
フッと、ボブ・マーリーのレコードを一番最初から聞きたくなり、順番に聞いていて、最後のレコードを聴き終わったら、ニュースでボブ・マーリーが亡くなったというニュースが・・・・・36歳・・・早すぎましたな。


『スタンド・バイ・ミー』の原作のタイトルが『the・body(死体)』でこのままのタイトルで映画にしていたら売れなかったでしょうね。
あのころのタイトルは、淀川さんや水野さんのような本当の映画好きが必死になって考えていたんでしょうな~
オカピー
2012年12月07日 22:12
ねこのひげさん、こんにちは。

それはまた奇遇というか、不思議な出来事でしたね。
この数年間ブログ仲間との間でも色々面白いことがありましたよ。

「死体」では絶対ヒットしませんね。まず青春映画のイメージがないですもん。

淀川さんは「駅馬車」(原題のままだけど)、水野さんは「ビートルズがやって来る、ヤァヤァヤァ!」「007/危機一発」辺りが代表作ですかね。

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