映画評「レッド・バロン」(2008年版)

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年ドイツ映画 監督ニコライ・ミュラーション
ネタバレあり

撃墜王と言われ、戦前から映画で何度も扱われてきた第一次大戦のドイツ軍の英雄マンフレット・ヴォン・リヒトホーフェンの生涯を描いた伝記映画である。1971年にB級恐怖映画で知られるロジャー・コーマンが作った邦題も同じ「レッド・バロン」は特に印象に残る出来映えではなかった。

名前が示す通り貴族であり、軍人である父親の血を引いて頗る優秀につき若くして戦闘機部隊のトップに昇格した彼(マティアス・シュヴァイクホファー)は、野戦病院で兵隊の様子を見て、英軍のライバルたるホーカー少佐をも仕留めた英雄として自軍プロパガンダに利用されて若き命が散って行くのを見るに忍びなくなり、昵懇になった看護婦ケイト・オタードルフ(レナ・へディー)の反対も振り切って地上勤務から部隊に返り咲き、1918年4月25歳と11月で北フランスに散る。

騎士道精神など事実に比較的近い内容であることは伺えるものの、さすがに自軍の「若い兵士と一緒に死ぬ」為に出陣したとは思えないながら、最終的に彼を撃墜したとされる英軍のロイ・ブラウン(ジョセフ・ファインズ)との地上での一幕など(事実かどうかは別にして)、非常に清々しい気分で見られる。

序盤に敵軍好敵手の葬儀に飛行機から花を贈る一幕も洒落ていて、最後は彼がフランス軍から献辞を贈られる。最後の部分は恐らく事実で、敵同士のこういう関係は兵器が格段に進歩した第2次大戦には既にありえざる現象であっただろう。ミサイルがピンポイント攻撃することも限りなく高い精度で可能になった現在は言わずもがな。

そうした騎士道精神が効果的に見せられるのも、実在した看護婦を上手く絡めているからで、コーマン作よりずっと高潔な感じに仕上がって誠に上品な味わいがある。激しい戦闘場面を見せておけば良いという戦争映画とは一線を画す所以である。

一方、クラシックな飛行機が出てくる作品が好きな僕も満足できるレベルに空中戦に尺が割かれていて、それもCGが華美すぎることがなくクラシックな本物らしさがあるのが良い。

僕が一番好きなクラシック飛行機映画はジョージ・ロイ・ヒル監督の「華麗なるヒコーキ野郎」(1975年)でござる。裕ちゃんも出ている「素晴らしきヒコーキ野郎」(1965年)じゃないよ。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年12月01日 06:36
第一次世界大戦で、飛行機が偵察に使われだした当時は、敵同士が、手を振って挨拶をしていたのが、ある日、誰かが、レンガを投げつけたんがきっかけで、ピストルで撃つようになり、鉄砲、機関銃・・・・となっていったというのを、テレビでディズニーの短編映画で見たことがあります。

『レッド・バロン』・・・・貴族が自分の飛行機を持ち込んで戦争に参加したとか・・・・まさに貴族の戦争であったんですな。

ロジャー・コーマンの『レッド・バロン』のジョン・フィリップ・ロー・・・・『カサドラ・クロス』を思い出しました。
オカピー
2012年12月01日 20:15
ねこのひげさん、こんにちは。

ライト兄弟が飛行に成功してから十数年で戦争に活躍するまでなったのですから、人間というのは大したものと言うか、何と言うか。

>レンガ
報復合戦がことを大きくするのは今も変わりませんネエ。

彼の飛行機は三葉機なので目立っていたはずですが、本作では他にも三葉機が出ていたので異彩を放つというほどではなかったです。

>ロジャー・コーマン
大昔に観たんですよ。
ジョン・フィリップ・ローは別の作品で目が印象的な俳優でして興味を持った頃でしたが、作品は今一つでした。コーマンはやはりコアなファン向けの映画を作っていれば良いのでしょう(笑)。

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