映画評「ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2011年アメリカ映画 監督ブラッド・バード
ネタバレあり

前作「M:i:III」はスパイの私生活を入れるという点を不満に思いつつ、トータルで大いに買った。
 このシリーズ第4作は、前作の要素を引きずりながらもスパイの私生活なんてものを表面に出してこなかったのでジャンル映画として遥かにすっきり出来ている。にも拘らず採点は本作の方が★一つ少ないのはビジュアル的に新味不足という理由からとお思いになって差し支えなく、僕ら世代の感覚ではスーパーヒーローもの、POVホラー映画やシチュエーション・スリラーよりまず楽しめる筈である。

ロシアの刑務所から脱獄したイーサン・ハント(トム・クルーズ)が、IT専門家のサイモン・ペッグと組んでクレムリンに侵入する。核戦争を起して新しい世界を作るという狂信的なスウェーデン人科学者ミカエル・ニクヴィストが核ミサイルの発射コードを奪うのを阻止する為なのだが、侵入直後に爆破が起きた為彼らがテロリストしてロシア諜報部から追われる羽目になってIMFは解散、恋人を殺されて復讐を誓う美人諜報員ポーラ・パットン、長官と行動を共にしていた分析官ジェレミー・レナーとタッグを組む。

ニクヴィストと発射コードを持っている女殺し屋レア・セドゥーとの取引を互いに当事者に成り済ます作戦が四人での最初の大仕事で、それがドバイに立つ世界一高いビルで行なわれるというのが見せ場たる所以。というのもコンピューター制御室の防御が厳重な為11階も階上にある制御室に数百メートルの高さに於いて移動して外から入る危険なものだからで、前作でもビルを使ったアクションがあったのでさほど新味がないながらヒヤヒヤさせられることに変わりはない。
 二重の取引というアイデアは興味深く、レナーの瞳に仕込まれたスキャナーが女殺し屋の書類を読み取って瞬時にポーラの手元のバッグに送信される、といったアイデアはさすがにIT時代の感が強い。クレムリン侵入時にもITが大いに活用され、偽の映像を廊下で使う場面などなかなか面白い。

終盤は結局発射コードを奪ったニクヴィストが発射ボタンを押すまでのカー・アクションを使った時限サスペンスで、それが間に合わないとなると核弾頭を無効にするコンピューター操作を巡る時限サスペンスに引き継がれる。ここでは敵もさる者、制御電源を落とし、かつ、ハントになかなか操作ボードの入ったケースを渡さない。この争奪戦は立体駐車場の乗降システムを駆使してアクション的には比較的新味がある。

ロシア側を敵に見せかけて結局はここ四半世紀作られてきたスパイ・刑事映画の定石通り敵はテロリストで、テロリストがいつも通りアラブ人でないのが有難い。

監督はアニメ映画で評価の高いブラッド・バードで、全体としては脚本陣(ジョシュ・アッペルバウム、アンドレ・ネメック)の功績であるが、見せ場を出し惜しみしない姿勢は高く評価できる。

監督さん、実写映画でも鳥のようにうまくテイク・オフ出来ましたね。

この記事へのコメント

2012年11月15日 19:44
このシリーズでのトム・クルーズは往年のジャッキー・チェンやジャン・ポール・ベルモントを思い出させてくれるんですが、淀川先生だったら、ロイドやキートンを例にあげるかもしれませんね。
ハイテクが進化して魔法が使えるみたいになっちゃいましたが、この映画ではおはなしに溶け込んでて楽しく観られました。
オカピー
2012年11月15日 22:25
nesskoさん、こんにちは。

確かに僕は、「リオの男」のベルモンドを思い出しましたね。NHKかWOWOWでやってくれないかなあ。
淀川さんならロイドの「要心無用」を引き合いに出すのではないでしょか。あの時計にぶらさがる場面なんか引用して・・・
この間ビデオに録画してある古い映画をブルーレイに移す作業をしていたら、淀川さんの解説を久しぶりに聞きましたが、やはり良いですねえ。一種の芸でしたねえ。

実際にある程度近いことができるものも含めて、革新的技術を上手くお話の進行に絡めて実に面白かったですね。
ねこのひげ
2012年11月16日 06:36
トム・クルーズの代表作シリーズになりましたね。
ほとんど、スタントマンを使わずに、自分でやるそうで・・・・高い所が好きだとか・・・・

ブラッド・バードのアニメ作品は好きで、どうなることやらと思いましたが、アニメを実写にしたと思えば、納得の作品作りであります。
オカピー
2012年11月17日 13:27
ねこのひげさん、こんにちは。

>トム・クルーズの代表作シリーズ
TVの「スパイ大作戦」に愛着のある方には、彼の個人プレイが目立つ為に評判が今一つでしたが、本作はなかなか良いようですね。
見せ場の連続性から言えば、シリーズ一番かな?

いくら高いところが好きと言っても、スタントマンを使ったところで誰も文句を言わないだろうに(笑)。
こちらは高所恐怖症だから、観ているだけで目が回りました。

>ブラッド・バード
この人のアニメは説教臭くなくて良いですね。ご贔屓です。

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