映画評「プーサン」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1953年日本映画 監督・市川崑
ネタバレあり

漫画家・横山泰三の名前は先年亡くなったばかりで辛うじて知っているが、市川崑監督の本作とは結び付かなかった。僕より一回りくらい年上の方ならこの題名でピンと来る方が多いのだろうねえ。

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税務署員・藤原釜足の家に間借りしている、今で言えばゼミナールの数学講師・伊藤雄之助は妻を亡くしている為その娘・越路吹雪に懸想しているが、経営者から上手いように絞られた末に首になり、仕事を探していると、家主の細君・三好栄子の知人が社長夫人をしているミシン工場へ勤めが決まる。が、そのミシン工場は銃弾用の帯も作っているのだ。

元々が四コマ漫画だけに挿話は大量で一々紹介しきれないが、終盤のお話に朝鮮戦争特需が扱われているように、戦後の復興期だけにお金にまつわる風刺が多い。
 ゼミの学生・小泉博がトラックに轢かれて手を負傷した伊藤氏の代わりに字を書いてお金を戴いたり、宝くじを売っていたり・・・この手の学生は映画ではよく描かれる。

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娘の越路女史は銀行員で、中卒の恋人との結婚を見栄っ張りの母親に反対されて自殺未遂をする。この挿話自体は大した意味がないが、中卒ながら叩き上げで先の見込みがありそうな人物と大卒でも先がないような人物との対照を呈しながら、見栄から大卒を選ぼうとする母親に大卒信仰の時代性を感じさせる。高校生の半分が大学へ進んで大卒者の価値が大いに下がっている今とは隔世の感あり。半世紀も経てば実際隔世ですけどね。

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主人公は美人の看護婦・八千草薫に親切にして貰うが、失業したのに家賃を上げようとまで言う越路吹雪のヒロインに固執する。この辺りはヒロインの好きなヒヤシンスが上手く使われている。越路女史の自殺騒動と面接会場へ急ぎたい主人公と彼に何とかして貰いたい母親を絡めたシークエンスは些か狂騒的に過ぎるものの、中堅に入ろうかという時期の市川監督の呼吸がなかなかよろしく可笑しい。

主人公のトラック事故で始まる序盤と完全な対称を成す、朝まだき初出勤する主人公が輸送トラックの隊列を見る幕切れが実にきな臭く、風刺映画らしさを醸成している。

今では「大学は出たけれど」ではタイトルどころかキャッチコピーにもならない。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年10月26日 05:59
これも、NHKでみたような・・・・(^^ゞ
ラストの輸送トラックの隊列は鮮明に覚えてました。
時代の不安感がよく出てました。

文京区に横山泰三という表札の家があって、もしかして?と思いましたけど・・・
ついに確認することはできませんでした。

うちの姪も、就職できずに泣いてましたが、親の七光りで就職できました。
なんだかな~
オカピー
2012年10月26日 19:59
ねこのひげさん、こんにちは。

やっとカウンター復活しました。
そのせいか知りませんが、今日UPした映画「鱒」が思ったより集客力(笑)があり、少々びっくり。ふーん、ジョセフ・ロージーのファンって結構多いのかなあ。

>NHKでみたような
多分NHKが放映権をずっと持っているのでないですか(笑)。

>親の七光りで
自力で就職できるに越したことはないですが、何でも良かったですね。
うちの姪は小学校教師志願。しかし、生徒数が少ない時代につき意外と厳しいのではないかと姉は言っていました。義兄は大学が警察関係に強そうだから、警官になったらどうかとサジェスト。あの娘は中学までバレーボールをやっていて、がたいがでかいから向いていると思うなあ。

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