映画評「行きずりの街」

☆☆★(5点/10点満点中)
2010年日本映画 監督・阪本順治
ネタバレあり

志水辰夫の同名小説が発表の二年後1992年“このミステリーがすごい!”の第一位になり、その18年後に映画化されることになったのは数年前に突然ベストセラーになったかららしい。この現象は“このミステリーがすごい!”というイベント自体の権威が上がった証左でもあろう。

僕は阪本順治が監督なので観て観たわけだが、ミステリーの映画化というより時系列の操作などで肝心なことをひた隠しにして構成される、僕の言う“ミステリー化されたドラマ”という、21世紀になって洋画で特に増えたタイプの作品のような感じである。

丹波篠山で塾講師をしている仲村トオルが、東京の専門学校に進んだまま音信不通になった少女・南沢奈央に祖母の危篤を知らせる為に上京するが、調査しているうちに顔見知りらしい男に殴打され、刑事のようなそうでもないような三人組につけ狙われ、とあるバーにしけ込みそのマダム・小西真奈美と親しげに話す。

展開が進んで判明するのは、彼女が19歳の時に彼と結婚し12年前に別れた前妻であり、彼が学生と結婚したことで今やその学園の理事となっている父兄代表・石橋蓮司に追放の憂き目に遭ったことだが、彼の部下である三人組が彼を追うのは捜している奈央ちゃんの面倒を見ているうじきつよしが前理事長を殺した事実をもって理事長を目指す石橋を強請っていて、その事実が彼らの交流により暴かれることを恐れた石橋が阻止しようとしているということがさらに判って来る。

本作の最大の謎は何故主人公がかつての教え子をあれほど懸命に探すのか、ということだが、恐らく、周囲の非難により幼な妻から離れ彼女を守れなかった彼が同じように慕ってくれた奈央ちゃんを救うことで言わば“リベンジ”を計るつもりなのである。東京に別れた妻がいる以上、その行動によって精神的に成長した自分を披露するという色気もあったにちがいない。

かくして、原作はいざ知らず、映画版は“ミステリー化されたドラマ”の印象が強く、本来のミステリー部分も厳密にはサスペンスと言った方が近い。本作はドラマ部分の比率がしかるべき割合より高く感じられる為ミステリー的展開との間で眼目が曖昧になり、何を見せたかったのか解りにくく、20年前とは言え“このミステリーがすごい!”での評判を考えると肩すかしを覚える。

十代同士なら問題ないのに、成人と未成年が恋愛すると問題、場合により犯罪になるのは何故? 相思相愛なのにアメリカで犯罪者となった元女性教師がいますよね。年齢で線引きする必要があるのは一応解るが。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年07月05日 04:10
昨今、ライトノベルと呼ばれる小説が全盛のようで、この『このミステリーがすごい!大賞』もいくつものミリオンセラーを生み出してます。
ふつうの小説より軽く、本を読んだことのない世代にも読んでもらおうと始められたので、表紙イラストが漫画だったり、玉石混合だったりしますが、けっこうおもしろい小説もあります。

年齢で問題になるのは、ねたみもあるでしょうな~
オカピー
2012年07月05日 22:15
ねこのひげさん、こんにちは。

>ライトノベル
甥が読んでいたのを観て字が大きいのに驚きました(笑)が、「このミステリーがすごい!」の対象作品は結果的にライトノベルが多いのでしょうか?
純文学も哲学書も面白いのは面白いので、僕は何でも読みます。昭和30年以降に発表された小説はなるべく読まないようにしていたのですが、最近読む本がなくなってきたので、近年の作品も読もうとしております。なるべく映画化されないのが良いですけど、映画を観た後読むなら問題ないですし。

先生が生徒を好きになっても良いと思うけどなあ。ただ、手当たり次第目を付けるのは完全に変態なので問題ですが(笑)。
ねこのひげ
2012年07月06日 06:27
ライトノベルは、主に高校生世代をターゲットにしているようです。
漫画とケータイ小説からの流れのようで、エンタティーメント性の高い小説が多いようです。
その中から、大人の鑑賞にも耐えるようなすぐれた作品を作る作家もでてきてますけどね。
かな?(笑)
海堂尊さんとか有川宏さんとか・・・・
オカピー
2012年07月06日 15:27
ねこのひげさん、こんにちは。

戦後純文学と通俗小説の中間的な感じにつき中間小説と呼ばれる小説群がありましたが、現在純文学と通俗小説との境目が非常に曖昧になって大人向けの小説は全部中間小説みたいなもので、芥川賞と直木賞に選ばれた作品はどちらでも良いと目される作品が多いようですね。
僕は受賞したからと言って手を出すようなことはしないので、よく解りませんが。

簡単に言えば、現在死語となった中間小説と児童文学の間といった感覚なんでしょうなあ。

>海堂尊さん
「チーム・バチスタ」シリーズの映画版二作は欠点も多いもののなかなか面白かったです。
2012年07月09日 13:52
ベルと呼ばれる小説が全盛のようで、この『このミステリーがすごい!大賞』もいくつものミリオンセラーを生み出してます。
オカピー
2012年07月09日 16:30
映画dvdさん、初めまして。

>『このミステリーがすごい!」
の上位ランク作品は映画化されることが多いようですね。

>ベルと呼ばれる小説
調べたけれどよく解りませんでした

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