映画評「ようこそ、アムステルダム国立美術館へ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2008年オランダ映画 監督ウケ・ホーヘンダイク
ネタバレあり

僕が親に頼んで買って貰ったのは数十冊の書物だけだが、その中でも一番嬉しかったのは中学時代に購入した百科事典である。その中に美術図鑑が日本と外国とに分れて二巻あり、外国の巻は特によく眺めたものである。
 美術館ごとに分けられて紹介されていて、勿論アムステルダム国立(王立)美術館もある。レンブラント「夜景」やフェルメール「牛乳を注ぐ女(台所の女中さん)」など誰でも知る名画を多く展示している美術館であるが、美術館の改造を巡ってこんなことになっているとは夢にも思わなかった。

そもそも美術館の中央がアーケードになって通行人が通っていること自体知らなかった。大変興味深い構造ではあるものの、それが2004年に始まり現在に至るまで再開館に至らない要因の一つとなっている。改造の重要部分である通路を利用していた一般人特にサイクリストのグループが反対を唱えたからで、その反対には情報の徹底を図らなかった美術館側の落ち度もある。
 その他新建設予定のビルの高さが例によって問題になる社会学的な側面に加えて、建設の入札が二社からしかなく、しかも一社は事前に撤退した為費用の問題が浮かび上がって来る。尤もそのコンストラクターに情報が洩れていない限り安く見積もってくるのではないかという素朴な疑問が湧くが、そこには映画は全く触れていない。

そうこうしているうちに館長が自ら退任するという何か裏がありそうな“事件”も持ち上がり、事態は益々混迷していくばかり。

他方、修復に勤しむ学芸員や日本の【金剛力士像】購入に意欲を注ぐ学芸員が知らぬ顔をして我が道を行く様子を挿入、美術館改造に関わる人々の様々の様相を映し出していてなかなか面白い。日本の美術品の海外流出に問題を感じる人もいらっしゃるが、僕は学芸員の嬉しそうな顔を見て顔がほころんだ。これが本来の美術館に携わる人の顔であり、改造を巡って顔を曇らせている人々の顔ばかり見ていても後味が悪いものになるだけだから、この学芸員を扱ったのは正解なり。

本作製作中に一応目処がついたらしいのに、結局は現在まで再開館に至らないとは日本の国会みたいでござる。一部有名な美術品だけはフィリップス棟で公開されている由。

オランダ人も日本人とさして変わらないのね。

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この記事へのコメント

ねこのひげ
2012年04月10日 04:35
ねこのひげは、大学時代にバイトで平凡社の百科事典を買いました。友達にはバカにされましたが、後から、見せてくれ、貸してくれと言ってくるのがいてそれ見ろ!でありました。
いまのようにパソコンなどない時代ですから、なにかを調べるにも図書館めぐりをしなければならなかったですからね。

浮世離れをしているはずの美術館でも、権力争いというか官僚主義の弊害があるようですね。
アメリカの美術館でも、梱包されたままで埃をかぶっていた国宝級の浮世絵が見つかったというニュースがありますからね。

武井咲さんが、フェルメールの『真珠の耳飾りの少女』とおなじ格好をしているのをテレビで観ましたが、これはよかった!
どこかに画像はないかと探しているところです。(^^ゞ
オカピー
2012年04月10日 11:22
ねこのひげさん、こんにちは。

僕はジャポニカです^^
兄と違っておもちゃを買いたがらないので、不公平になってはいかんと買ってくれたんでしょう。当時貧乏だった我が家としてはなかなか高い買い物でした。
金持ちの坊ちゃんはお飾りにしてしまうのが普通ですが、僕はよく眺めて随分汚しましたねえ。買った両親特に母親はそれを喜んでいました。大学へ行って時東京まで持って行きましたよ。

>美術館
国立ですからやはり官僚が絡みますよね。官僚はいずこも同じですか。ただ日本くらい官僚が力を持っている国は余り例がないでしょうが。

>武井咲
ねこのひげさんも趣味の幅が広い!

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