映画評「愛する人」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2009年アメリカ=スペイン映画 監督ロドリゴ・ガルシア
ネタバレあり

かの大作家ガルシア=マルケスを父親に持つロドリゴ・ガルシアには隔靴掻痒の思いがあった。内容は素晴らしいが、作るのはオムニバスばかりだし、ワン・エピソード・ワン・カットなどという必要もない実験的なことをやったり、きちんとした長編映画でその内容に合った映画作家としての力を発揮できていないと感じていたからである。しかし、本作でやっと痒みが取れた(笑)。

37年前に生んだ子供を14歳という年齢故に養子に出されたアネット・ベニングは、母への憎しみと後悔に苛まれながら、老いた母親を介護している。職場で知り合った男性ジミー・スミッツと打ち解けて結ばれた彼女は、老母が死んだことで過去と向き合うことを決心する。
 他方、37歳の有能女性弁護士ナオミ・ワッツは自分の出自ゆえに男性とは冷静な肉体関係だけを続けて来たが、避妊処理にも拘らず上司サミュエル・L・ジャクスンの子を孕み、無理な出産が祟って出産後死んでしまう。子供は教会に預けられる。
 子供が出来ない黒人女性ケリー・ワシントンは四苦八苦して或る子供を養子に貰う事にするが直前で頓挫、教会の采配でナオミの女児を養子にすることができる。アネットは彼女が生前残した手紙を発見した教会から連絡を受け、養女に遭いに行き、写真に残された娘の面影を見出して満足する。

出だしはいつものように群像劇のようでありながら、最終的には一つの生命が半ば必然的に半ば奇跡的に結び付ける三人の女性の母としての思い、子としての思いを綴って母と子の絆に静かに収斂していく女性ドラマで、観照的に描きながらも幕切れに自然と胸が熱くなるのを覚える。僕は昨年母を失くしただけになおさらじーんとさせられたのかもしれない。

ガルシアさん、お手柄でした。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 2

ナイス ナイス

この記事へのコメント

2012年01月20日 16:02
ナオミ・ワッツを中途退場(死去)させるところで
私はまずうなってしまいましたね~
それからの展開も実に繊細。
某サイトの管理人さん(男性ですが)
「男にはぜんぜん理解できないで困る映画」と。
ご経験からでしょうか、お人柄でしょうか
プロフェッサーのスタンスはお広い。^^
オカピー
2012年01月20日 21:08
vivajijiさん、こんにちは。

>ナオミ・ワッツ
「サイコ」のジャネット・リー同様まさか途中でお亡くなりになるとは思いませんでしたね(@_@;)

所謂女性映画ではあるでしょうが、男だから解らないなんてことはない明解な作品でした。基本的には母と子、という以上に母と娘のお話ですけど、人間には想像力というものがあるんですからね^^

これは本当に良く出来た作品。素直に感服いたしました。
シュエット
2012年03月19日 09:50
私が記事アップが劇場鑑賞した昨年の2月。ほぼ1年後の放映ですねぇ。
若いときだったらロードショー上映されて、それから2本立て上映になって、観たくても小遣い乏しいときは2本立てで上映されるのをひたすら待っていたこともあった時代とくらべれば、今の世の中、待つという事もなくなってきましたねぇ。
本作、ガルシアさん、ずっと女性を描き続けて、今まではオムニバスがここに集約されたって思えるほど。
記事にも書いたけど、本作のナオミ・ワッツには生身の人間が感じられるものがあって良かった。当然のように中絶の話をする医者の前で、観ている私達も当然中絶するものと思いながら観ていた、あのシーンでナオミ・ワッツがみせた反応。ここからの彼女は良かったでねぇ。「人間の中に人間がいる」という少女のセリフも素晴らしい。
タイトルは「愛する人」よりも「MOTHER AND CHILD」母と子の方が良かったのにって思いますね。欧米の映画は、それは社会が成熟しているからなんでしょうが、父と息子をテーマにした作品が多い中で、母と娘をテーマに、未来に繋がるような本作は嬉しい。
オカピー
2012年03月19日 20:21
シュエットさん、こんにちは。

>オムニバス・・・集約
僕もそう思います。しかも、うまくこなれていますよね。
やっと本物の映画作家になったなあ、と嬉しくなりました。

>ナオミ・ワッツ
元来好きなタイプです(笑)。演技的にも充実して益々結構でした。
確かに予想外でしたよね。しかもけれんになっていない。

>タイトル
20年前は「愛と~」、現在は「僕・君」か「幸せ」が流行中。余り付け過ぎると却って集客できなくなりそうな気がしますがねえ。

この記事へのトラックバック

  • 『愛する人』

    Excerpt: □作品オフィシャルサイト 「愛する人」□監督・脚本 ロドリゴ・ガルシア □キャスト ナオミ・ワッツ、アネット・ベニング、ケリー・ワシントン、サミュエル・L・ジャクソン、ジミー・スミッツ、デヴィ.. Weblog: 京の昼寝~♪ racked: 2012-01-20 12:12
  • 愛する人

    Excerpt: 私も愛をつないでゆきたい、母のように──。 原題 MOTHER AND CHILD 製作年度 2009年 製作国・地域 アメリカ/スペイン 上映時間 126分 映倫 PG12 監督・脚本 ロドリゴ.. Weblog: to Heart racked: 2012-01-20 12:30
  • 愛する人

    Excerpt: ナオミ・ワッツという女優さんは私の中では微妙に どっちつかずの位置におりました方でした。 好み別にして同じオーストラリア出身のニコール・キッドマンが 盛大に走り込む先 ... Weblog: 映画と暮らす、日々に暮らす。 racked: 2012-01-20 15:52
  • 愛する人/Mother and Child

    Excerpt: 14歳で子供を産み落とした瞬間にその子を手放さなければならなかった母親とその娘が、37年ぶりに人生の転機を迎え引き付け合う…。『彼女を見ればわかること』のロドリゴ・ガルシア監督が『華麗なる恋の舞台で』.. Weblog: LOVE Cinemas 調布 racked: 2012-01-20 16:58
  • 母と子~『愛する人』

    Excerpt:  MOTHER AND CHILD  14歳で出産、生まれた娘を母によって養子に出されたカレン(アネット・ベニング) は、ただ娘を思いながら生きていた。37歳になったその娘エリ.. Weblog: 真紅のthinkingdays racked: 2012-01-20 19:52
  • 愛する人(2009)駅ビルシネマ・ラテンビート映画祭にて

    Excerpt: 原題:Mother and Child カランチョの後、鑑賞しました。2011年お正月公開作品。ラテンビート映画祭にてプレミア上映作品だそうです。特別先行上映ということになりますね。割引なしなので、.. Weblog: 銅版画制作の日々 racked: 2012-01-20 23:59
  • 「愛する人」

    Excerpt: 原題は「母と子」。それが率直に映画の内容を言い表している。 Weblog: 或る日の出来事 racked: 2012-01-21 01:30
  • 「愛する人」

    Excerpt: MOTHER AND CHILD 2009年/アメリカ・スペイン/126分/PG12 at:梅田ブルグ監督: ロドリゴ・ガルシア 脚本: ロドリゴ・ガルシア 撮影: ハビエル・ペレス・.. Weblog: 寄り道カフェ racked: 2012-03-19 09:38