映画評「巴里のアメリカ人」

☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1952年アメリカ映画 監督ヴィンセント・ミネリ
ネタバレあり

ジーン・ケリーのミュージカルと言えば「雨に唄えば」が一番人気だろう。しかし、純粋にミュージカル的創意工夫とすればこちらの「巴里のアメリカ人」が一枚上ではあるまいか。とにかく僕のお気に入りである。監督はライザ・ミネリのお父さんヴィンセント・ミネリ。

戦争で欧州に出征したGIケリーがそのままパリに残って画業に勤しんでいるが、さっぱり売れない。同じく売れないピアニストのオスカー・レヴァントとこちらは売れているフランス人歌手ジョルジュ・ゲタリーとは友人関係。ケリーは金持ち有閑令嬢ニナ・フォックをパトロンに得る一方ゲタリーの婚約者レスリー・キャロンとそうとは知らずに親しくなり、やがて離れ難く思うものの、ゲタリーと結婚して渡米すると知って諦める。が、二人の様子を見ていたゲタリーは一旦車で連れ去った後引き返して二人を結び付ける。

というお話はミュージカルとしても相当他愛ない部類だが、他愛ないからこそ純度の高いミュージカル場面が構成できたと言うこともできる。

額縁の中でレスリーが彼女の性格を表現する為に単色の背景に単色の衣装で踊るという序盤のアイデアから抜群で、レヴァントがピアニストから指揮者から一人で演ずるナンバーも影を上手く使って大変面白い。有名な「アイ・ガット・リズム」を使った子供たちとの場面は楽しいが、僕はこの場面には後で歌われる「ス・ワンダフル」が使われていると記憶していた。

終盤は圧巻で、まず仮装舞踏会で白と黒の衣装と舞台装置を徹底的に見せた後に続く「巴里のアメリカ人」での誠に色彩鮮やかな背景と衣装でケリーとレスリーが踊りまくる長いシークエンスを生かす、という趣向が秀逸。さらに、ルノワール、ゴッホ、ロートレックといったパリにゆかりのある有名画家の絵になぞらえて舞台装置をこしらえるというアイデアがゴキゲン。

ただし、ハイブロウすぎて親しめない人もいるかもしれない。

歌曲は勿論ジョージ・ガーシュウィン作。

初めて“巴里”という文字に接した中学1年の時読めなかったのを思い出す。同じくケリー主演の「踊る大紐育」も読めなかったなあ。

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この記事へのコメント

2011年09月03日 15:41
今年2月に録画DVDで観ました。双葉先生、85点の大推薦ミュージカルなんですが・・。

>お話はミュージカルとしても相当他愛ない部類・・

ジーン・ケリーが画家に見えないのはこっちの勝手な思い込みとしても、二人の男性の心理的葛藤はそこそこ描かれているのに、レスリー・キャロンの方が曖昧な感じがして物足りなかった、と半年前のツイッターには書いてますね。

オカピーさんが圧巻と書かれた終盤のダンスシーンは、絵描きが別れることになった彼女とのなし得ないであろう未来のデートを夢想したシーンなのですが、有名な画家達の絵を取り入れたいプロデューサーの思惑が見え隠れして、しかも長くて些か閉口しました。
大きなスクリーンで観ると楽しさがもっと伝わるんでしょうけどネ。
いずれにしても、2回目が観れてないので、★は未定です。

「シャレード」に、確かこの映画の話が出ましたよね。違ってたかな?
オカピー
2011年09月03日 16:58
十瑠さん、こんにちは。

初鑑賞作品のスケジュールが空くと精神的に良さそうな保存作品を意識的に選んで観ております。五月に病んだ神経症が治っていないので、刺激のある作品は極力避けるようにしているわけです。
もう新しい映画は観なくても良いと思ってしまうほど昨今の映画はつまらないのですが、まだ未練があってなかなかやめられません。

>レスリー・キャロン
ミュージカルならではのシンプル化の一環なんでしょうね。通常の恋愛映画でこういう一方通行は少々困ってしまいます。多分彼女自身が迷っているから、フランスのやさ男が道筋を付けてあげたんでしょう^^;

>しかも長くて
元々映画用に書かれたわけではないクラシック(ジャズでもある)「巴里のアメリカ人」という曲を生かすように構成したのであの長さ(18分?)になったのでしょう。
確かにミュージカル好きでないと少々きついかもしれないです。

双葉さんがミュージカル好きになったのは幼少時代の経験が元になっているようですが、僕はそこまで本格的でないにしても影響を受けまくってしまって、カラー設計とかミュージカルとしての創意工夫のある作品はすぐに高評価を出してしまします。サスペンスはモノクロの方が良い場合が多いですが、ミュージカルは断然カラーが良いです。

ミュージカルを本格的に評価している映画評論家が他にいず(後は淀川先生くらいか)右に倣えとばかりに学習した為評価の傾向は似ていますが、「雨に唄えば」や「サウンド・オブ・ミュージック」は師匠より高く評価しています。

>「シャレード」
この間観たばかりというのにもう忘れている(苦笑)。後でチェックしてみます。

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