映画評「渇き」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2009年韓国映画 監督パク・チャヌク
ネタバレあり

パク・チャヌク監督作品。

韓国、死にゆく人々を手助けできないことに歯がゆさを覚えた神父ソン・ガンホが人の助けになるべくワクチンの人体実験に応募、結局死んでしまうが、輸血により再生してアフリカから帰国する。
 キリストの再来のように周囲に扱われるようになった彼は、幼馴染シン・ハギュンの母親キム・ヘスクに彼の癌を治すように頼まれ、それが実現してしまう。が、病状が再発すると共に血への渇きを覚えたソンは脳死患者の血を吸って渇きを潤す。

ゾンビに引きずられるように生みの親である吸血鬼ものも勢いを取り戻したものの、アイデンティティーで誤魔化すようなお話ばかりでがっかりの連続だったが、アングルを付ければまだまだ面白い作品を作れるという可能性を本作は示してくれた。

後半、シンには子供時代から引き取られた“妹”キム・オクビンと結婚していたが、彼女は犬のように彼女を扱う夫と義母を憎悪、異様に感覚の研ぎ澄まされたソンと密通し、夫を亡き者にする欲望がもたげ、ソンと実行に移す。直後母親が倒れて全身不随になり、その後血の交配により吸血鬼化したオクビンは奔放に欲望を果たして殺人を繰り返し、殺人を犯したくない彼との間に葛藤が生まれる。

吸血鬼の設定にマスキングされて途中まで気付かなかったが、義母が全身不随になった時にエミール・ゾラの小説「テレーズ・ラカン」(映画版はマルセル・カルネが1954年に映画化した「嘆きのテレーズ」が有名)の吸血鬼版と判った。彼女がラ夫人と呼ばれるのはラカン夫人をもじったものだろう。ところが、不倫に至る心理が大変面白くサスペンス性も抜群な「テレーズ・ラカン」に対し、本作は吸血鬼の要素を入れたことで却って焦点がぼけて結果的に晦渋な作品になっているような気がする。

進行するに連れ主人公のキリスト教者としての信念と行動とが乖離していくブラックな内容で、それはキリスト教が禁じている自殺で終わる内容で頂点に達する。そこに晦渋さの要因がある一方、人間の欲望を皮肉っぽく普遍的にすかして見せるのが主眼ということくらいは何とか解る。面白味は認めたいものの、どうもすっきりしないものを覚える。

韓国では、やはり仏教よりキリスト教が強いんじゃね。

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この記事へのコメント

シュエット
2011年03月11日 21:33
>面白味は認めたいものの、どうもすっきりしないものを覚える。
予告編をみていて、私もそんな印象をうけました。描きたいテーマは判るけど…で観なかったのですが…WOWOW放映で観てみようかしらって思ったけど…です。
この映画のコメントよりも、それよりも、今日の地震の影響でP様のお宅は如何だったのかしらと案じて、ここにメッセージ入れさせていただきました。
大阪でも私がいたビルの9階でもゆらりゆらりと結構長い時間揺れました。和歌山辺りかしらって思ったら、なんと震源は東北の方と知り、今回の地震の規模の深さ大きさに驚きです。何も無ければよいのですが…。

オカピー
2011年03月12日 09:35
シュエットさん、コメント有難うございます。
ご心配をお掛け致しました。<(_ _)>

震源地に比較的近いとは言え、当方は半日ほど停電しただけで、大難なく過ぎました。
地震発生時丁度父親が入所している病院の介護老人保健施設(5F)にいて、エレベーターが使えずに階段を使うはめになったり、信号が消えていたので交通渋滞はありましたが、何とか無事帰り着いたのでした。

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