映画評「縞模様のパジャマの少年」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年イギリス=アメリカ映画 監督マーク・ハーマン
ネタバレあり

アイルランドの小説家ジョン・ボインの同名小説をイギリスのマーク・ハーマンが映画化した戦時ドラマである。

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第二次大戦たけなわの頃、ドイツ将校の父親デーヴィッド・シューリスがユダヤ人収容所の所長に出世した為にベルリンから地方に越した為に遊び相手となる友人もなく退屈し切っていた8歳の息子エイサ・バターフィールドが農場と思い込んだ収容所に興味を覚えて接近、鉄条網の向うにぽつねんと座っている同い年の少年ジャック・スキャンロンと親しくなるが、やがてユダヤ少年の父親が忽然といなくなる(皆様、理由はお解りですよね)。
 友情の為に父親捜しの協力を買って出たエイサ少年は鉄条網の下の土を掘り縞模様の服と帽子を来て敷地内に入り、予想通りのというか予想もつかないというか衝撃的な幕切れを迎える。

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少年の純粋無垢が引き起こす悲劇というのが一般的な物語の解釈であろうが、この少年の父親たる所長が痛恨の表情を見せる終幕を見ると、それ以上にある種の寓意性を感じさせられてしまう。
 僕が感じるのは、作者が意図したか否かはともかく、ユダヤ人が受けなければならなかった悲劇はドイツ少年が巻き込まれていく運命の歯車のずれと同じくらいちょっとした歯車のずれ――歴史のダイナミズムという名の、或いは時代の陥穽か――であって、この時代横暴を極めたアーリア系と称するドイツ人が逆の立場にならなかったかと誰が言えようかという寓意である。
 その心を分析すれば、“分別”を持ったが故に自己・自民族の保守・保身に凝り固まり他人や他の民族のことを考えられない人間の性とも言うべき愚かさに行きつく。かくして人類なる存在にゾッとしないではいられなくなる幕切れと言っても良いだろう。

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所長の表情は教えなかったことの悔悟をも表している。彼にしても収容所で行われていることが子供には教えられない、罪悪に等しいことと知っているはずである。それを考えれば、彼や若い将校の厳しい態度は寧ろその葛藤の顕れではあるまいか?

映画本体について言えば、マーク・ハーマンの進行ぶりはイギリスの監督らしく折り目正しく見やすい。また、ドイツ少年役のエイサ・バターフィールド君の大きな瞳は正に無垢そのもので大変印象的。キャスティングのお手柄と言うべし。

日本も現在色々とややこしい問題に巻き込まれていますね。ああ面倒臭い。

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この記事へのコメント

2010年11月06日 21:27
こんにちは。
おっしゃるとおりですね。
ここでは民族の差異ではなく、どんな民族でもある歴史過程にたちあえば、そしてある条件が整えば、一挙にイデオロギの側に吸収されちゃう危険さを孕んでいるということがモチーフかなと思わせられます。
ドラゴン
2010年11月06日 22:35
劇場で観ました。こういう映画はいろいろ考えさせられるところがあって、観終わった後は沈んだ気持ちになりました。
子役はよかったですね。
オカピー
2010年11月07日 11:15
kimion20002000さん、こんにちは。

ご賛同有難うございます。
最後の一幕を見ていたら何だかそうした感想が湧き上がってきました。

>イデオロギー
パレスチナ問題を観るとどっちもどっちという気にもなりますし。
オカピー
2010年11月07日 11:25
ドラゴンさん、こんにちは。

差別の問題や反戦は最初に考えさせられますが、本作の場合はそこに留まらずそのベースとなっている人間の愚かな性にまで思いが至るように設計されているように思います。
その為の触媒が悪い意味での“分別”を知る前の子供なんでしょうね。
シュエット
2010年11月08日 09:17
P様おはようございます。
>マーク・ハーマンの進行ぶりはイギリスの監督らしく折り目正しく見やすい。
子供たちがみてもよく分かる話の展開。21世紀に産声をあげた子供たちは主人公の少年たちとたちと同年齢になっている。この映画を観て、時代背景となっているこの時代のこと、なにがあったのか自分の目と頭で探っていく感性が、この映画を見て沸き起こってくれることを願います。
>ドイツ少年役のエイサ・バターフィールド君の大きな瞳は正に無垢そのもので大変印象的。
透き通るような大きなブルーアイ。この映画にとても強い印象と説得力を与えてるとしたら彼のこの瞳でしょうね。
>ちょっとした歯車のずれ――歴史のダイナミズムという名の、或いは時代の陥穽か
本当にそうですね。価値観も国家イデオロギーによって次の瞬間には180度に転換する。「もしもあの時…」歴史を振り返ってよく言われる言葉。
冒頭で字幕でかかれた言葉「子供時代とは分別を知る前の…」この言葉が21世紀の日本の子供たちの感性にどれだけ強くあるだろうか? そんなことも考えてしまった映画でした。
オカピー
2010年11月08日 22:49
シュエットさん、こんばんは。

最近の映画としては珍しいくらいきちんと展開している一方で、説明過多になっているわけではなく、過不足のない作品という印象でしたね。

少年は真実を知った上で収容所の外に出てくると思っていたものですから、あの幕切れにはびっくりしましたが、所長の表情に皮肉な印象より「これがゲルマン民族全体に行き渡らないと誰が言えようか」という歴史的視点に思いが行ってしまいました。些か視点が飛び過ぎたような気もしましたが、シュエットさんの賛同を得られて光栄です。^^

>エイサ君
この作品の寓話性を見事に成立させたのは彼の起用でしょうね。

>子供
何だかトルストイが言いそうな言葉ですが、最近の子供は“分別”を得るのは僕らの時代よりずっと早そうですね。ある意味永久に得ないか(笑)

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