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zoom RSS 映画評「母なる証明」

<<   作成日時 : 2010/10/28 11:22   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 3 / トラックバック 13 / コメント 6

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2009年韓国映画 監督ポン・ジュノ
ネタバレあり

ポン・ジュノの前作「グエムル 漢江の怪物」はなかなか興味深い作品ではあるがテーマ展開の為にファンタジーという手法を選んだのが気に入らず、その前の「殺人の追憶」の正攻法の凄味には及ばなかった。本作は「殺人の追憶」に肉薄する力作である。

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漢方薬を作りもぐりで鍼治療もしている中年女性キム・ヘジャは知恵遅れの二十代の息子ウォンビンを溺愛している。それを最初に映し出すのが彼がひき逃げされる一幕。若者と友人チン・グは逃げた男たちの車をゴルフ場まで追って暴力事件を起こし、その時拾ったボールに息子は名前を書きつける。これが次の事件の布石となって女子高生殺人事件の容疑者として彼は逮捕されてしまう。
 ここからがいよいよ本作の本論で、母は息子の無実を信じて疑わしいチン・グの家に潜入したり、雇った無気力弁護士を首にしたり、鍵を握る被害者の携帯電話を手に入れようと必死に動き回る。

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形としては素人探偵ミステリーだが、“ミステリー”は主題即ち知的障害だろうが犯罪を犯そうが子供の為には何でもしてしまう母親の歪んだ愛情ひいては人間の愚かな習性を描く為の手段に過ぎない。だから、愛情は人間を愚かにするものだといったところまで踏み込まないと本作を理解したことにはならず、「庇護するだけが親の愛ではない」や「ミステリーどまり」といった感想では些か寂しすぎる。僕の“母親の歪んだ愛情”という表現すらも実は一面的に過ぎるが、それ以上については各自作品に何度も触れて理解を深めていくのが良いと思う。

開巻直後ヒロインが草原で変な踊りをしているショットが、最後になって息子が犯人であろうとなかろうと「嫌な記憶を忘れるツボ」に鍼を刺した後の狂的な踊りであることが判って苦く重苦しい後味を残す構成はあっぱれ。鍼治療の全編に渡る配置も絶妙だ。

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重厚で鮮烈な映像は旧作に優るとも劣らない。特に印象に残ったのは、弁護士がバイキング料理を選ぶクロースアップによる俯瞰という特徴的な撮影方法がヒロインが息子の悪友の家に忍びこんだ後抜き足差し足で逃げる場面で繰り返される辺りの面白さ(上の画像参照)で、言わば映像で韻を踏んでいるのある。

最後に、近年子供を必死に守り子供の為に闘おうとする母親を主題にした作品が多いのは注目に値する。これもまた、“家族再生”と同様に9・11全米同時テロで引き起こされた【家族意識における変化】の顕れであろうか?

「なる」より「たる」だろうなあ。意味解ります?

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タイトル (本文) ブログ名/日時
母なる証明
公式サイト。ポン・ジュノ監督、キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ、ユン・ジェムン、チョン・ミソン。「やられたらやり返す」。知的障害気味の息子トジュン(ウォンビン)の愚直なまでの行動が実は真相を正直に語っていた。 ...続きを見る
佐藤秀の徒然幻視録
2010/10/28 11:28
母と竜二
「母なる証明」 「竜二」  ...続きを見る
Akira's VOICE
2010/10/28 11:34
『母なる証明』
&nbsp; &nbsp; □作品オフィシャルサイト 「母なる証明」□監督・脚本 ポン・ジュノ □脚本 パク・ウンキョ □キャスト キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ、ユン・ジェムン、チョン・ミソン■鑑賞日 10月31日(土)■劇場 チネチッタ■cyazの満足度 ★★★(5★満点、☆は0.5)<感想> ウォンビンが帰って来た。 おそらく彼をスクリーンで観たのは『マイ・ブラザー』以来だろうか・・・。 彼自身が選んだ復帰第一弾のこの作品、『ブラザー・フッド』もそうだったと記憶するが、 兄弟愛... ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2010/10/28 12:04
母なる証明/キム・ヘジャ、ウォンビン
映画の世界にお帰りなさいッ、ウォンビン!。しかし復帰作としてかなり重々しそうな作品です。しかも共演は韓国きっての大女優キム・ヘジャさんで監督が『殺人の追憶』のポン・ジュノさんですからね。濃厚も濃厚なサスペンス、期待して観に行ってきました。 ...続きを見る
カノンな日々
2010/10/28 12:15
『母なる証明』
(英題:mother) ...続きを見る
ラムの大通り
2010/10/28 18:58
母なる証明
  な〜〜んで「母なる証明」ってお題目で   マイケル・ジャクソンの映画画像が出るん!?   と、お嘆きの読者の方々もおいででしょうが   “モノゴトには順序というものが”・・・ニヒヒ。(笑) ...続きを見る
映画と暮らす、日々に暮らす。
2010/10/28 19:34
mini review 10453「母なる証明」★★★★★★★★☆☆
凄惨な女子高生殺人事件を皮切りに、事件の容疑者となった息子と、息子の無実を信じて真犯人を追う母の姿を追ったサスペンス。監督は『殺人の追憶』などで国際的に評価される名匠ポン・ジュノ。主人公の母を&amp;ldquo;... ...続きを見る
サーカスな日々
2010/10/28 19:46
母なる証明
最も&quot;謎&quot;に満ちているのは、 人間そのものである―。 原題 MOTHER 上映時間 129分 映倫 PG12 製作国 韓国 監督 ポン・ジュノ 原案 ポン・ジュノ 脚本 パク・ウンギ... ...続きを見る
to Heart
2010/10/28 20:37
狂気は回る〜『母なる証明』
 MOTHER ...続きを見る
真紅のthinkingdays
2010/10/28 22:26
母なる証明/??
『殺人の追憶』、『グエムル -漢江の怪物-』のポン・ジュノ監督が送るサスペンスミステリー。主演は“韓国の母”と呼ばれる国民的女優キム・ヘジャ。そして共演に5年ぶりに兵役から復帰したウォンビンが出演。殺人の罪を着せられた知的障害を持つ息子を助けるために、狂気ともとれる母の愛で真犯人を捜す姿を鋭く描いた作品だ。原案・脚本もポン・ジュノ監督が務めている。 ...続きを見る
LOVE Cinemas 調布
2010/10/28 23:15
「母なる証明」
MOTHER at:梅田ブルグ 2009年/韓国/129分/ PG12 ...続きを見る
寄り道カフェ
2010/10/29 13:15
09-349「母なる証明」(韓国)
息子は殺していない!  静かな田舎町。トジュンは子どものような純粋無垢な心を持った青年。漢方薬店で働く母にとって、トジュンの存在は人生の全てであり、いつも悪友のジンテと遊んでいることで心配の絶えない毎日だった。  そんなある日、女子高生が無惨に殺される事件が起き、容疑者としてトジュンが逮捕されてしまう。唯一の証拠はトジュンが持っていたゴルフボールが現場で発見されたこと。しかし事件解決を急ぐ警察は、強引な取り調べでトジュンの自白を引き出すことに成功する。  息子の無実を確信する母だった... ...続きを見る
CINECHANが観た映画について
2010/11/06 19:38
母なる証明
?? / Mother (2009年) 監督:ポン・ジュノ 出演:キム・ヘジャ、ウォンビン、チン・グ、ユン・ジェムン、チョン・ミソン 殺人容疑で逮捕された知的障害者の息子を救う為、自ら真犯人を探す母親の姿を描くコリアン・サスペンス。 韓国映画のことだから、救いの無い結末であることはあらかじめ予想がつくので、どうせ息子が犯人なのだろうなぁと思っていたら、その通りでした。 ただそれだけで終わらないのが韓国映画の韓国映画たる所以であり、さらにその上をいく虚無感漂うラストが待ち受ける。 そんなダークな... ...続きを見る
Movies 1-800
2010/11/08 01:09

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
こんにちは。

>「なる」より「たる」だろうなあ。意味解ります?

ん?わかんない。こっそり教えて(笑)
kimion20002000
URL
2010/10/28 19:40
「なる」「たる」疑惑は(^ ^)
例の「敬愛」ケースよりは
不思議と腹立ちませんでしたね今回は。
模範解答は「たる」でしょうけれど
若干硬めの響きかしら〜^^
相変わらずごちゃまぜで一貫性欠如の
拙記事では字づらだけ「ある女の存在証明」を
パクったようなネーミングで
粗茶を盛大に濁しておりますです〜(笑)
vivajiji
URL
2010/10/28 19:48
kimion20002000さん、こんばんは。

本当ですか?
真面目にそちらにお話に行っちゃいますよ?^^
オカピー
2010/10/29 00:35
vivajijiさん、こんばんは。

>例の「敬愛」
あれは日本語になっていませんからねえ。呆れたものですよ。
多分「親愛なる」のつもりだったんでしょう。

今回のケースは、現在「名詞+なる」では伝聞若しくは同格「〜という」の意味になることが多い・・・というだけの話で、間違いではないですからね。「母なる存在」という言い方なら100%問題なし。その場合は「母たる存在」は少々変ということになります。

文法の問題はさておいて、近年稀に見る布石の映画。
昔はこういう布石の映画(ウィリアム・ワイラー!)が多かったのだけれど、最近見せすぎるかその逆かでつまらない作品が多いですよね。
文字通り文法がしっかりしている作品。
オカピー
2010/10/29 01:48
やっと「母なる証明」の記事が。久々にTBもってまいりました。
ところで
>「なる」より「たる」だろうなぁ
とは、いきなり古典文法を思い出しました。
私は文語文法感覚で「なる」ですんなりと受けとめられたけど…
「日本文法論」なる本によると<「なり」と「たり」との意義上の差をいへば、「なり」は内面的にして主として断定をあらはし、「たり」は外貌的にして主として状態をあらはせり。>とあるところから、これは「なり」でよかろうかと思われますが。
どうかすると滑稽とも思えるほどの母親の息子への愛。その滑稽さも描きながら、それが凄みにさえもなる強さとも映る。こんな描写はさすがだなぁと。
最後は有無を言わさせずに観るものを納得させるのもさすがだなぁと。
先日「冬の小鳥」見てきました。監督は韓国人孤児で、8歳でフランス人宣教師の家庭の幼女となった女性監督ですが、親に捨てられたというトラウマと向き合うつもりで撮ったという作品。一貫して8歳の子供の視点から描いた作品。純粋に韓国映画ではありませんが、良かったです。
シュエット
2010/10/29 13:38
シュエットさん、こんばんは。

>「日本文法論」
おおっ!
シュエットさんは日本文学が専攻でしたっけ。
文語的な解釈ではそうなろうかと思いますが、口語の中に混じった文語的表現としては「なる」は連体詞的な使用であり、その場合断定ではなく伝聞若しくは同格の意味が大半のケースを占めると思いましてね・・・“母”と“証明”は同格になりようがないので。

>滑稽
韓国人は感情が激しいので言動が滑稽に映る場合が多いですね。
日本人が同じ役をそのままやった場合人間喜劇的になることはあっても余り滑稽には見えないような気がします。意図的にコミカルに演ずれば別ですが。
僕はこういう作品を見ると、人間は愚か、愚かだから人間なんだなあと感じることが多いですね。
緻密なワンショットの積み重ねが見事。僕は多分その緻密な積み重ねを半分くらいしか把握していないと思います。

>「冬の小鳥」
韓国の女性監督は多分観たことがないなあ。
特殊な環境に育った方らしいので一概に韓国女性の映画では片づけられないでしょうが、興味深いです。
オカピー
2010/10/30 01:26

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