映画評「ワンダフルライフ」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1998年日本映画 監督・是枝裕和
ネタバレあり

誰も知らない」でセミ・ドキュメンタリーの手法で母親のネグレクトを描いて見事な完成度を見せた是枝裕和がほぼ同じ手法で人生の意味を問うた異色ドラマである。

死んだばかりの人々がある校舎のような殺風景な建物に集められ、谷啓、ARATA、小田エリカ、寺島進、内藤剛志といった職員の助けを受けて、7日間に最も大切な思い出をひとつだけ選ぶ作業に取り掛かる。そこで選んだ思い出以外の記憶は消えて天国に行くのである。どういう人が職員になっているかと言えば、思い出を選ばない若しくは選べなかった人々である。

異色作という以上に野心作と言うべし。言わば“三途の川”を舞台にしているのに、丹波哲郎の「大霊界」みたいな様式の世界とは正反対に、ごく普通の情景しか出て来ない。その関連で職員たちの死者に対するインタビューも全く独自で、河瀬直美が得意とする演技の混在が試みられているらしい。

つまり、プロの演技と一般人の自然な受け答えが混じっているのである。しかも、プロの演技も脚本を渡された上での演技なのか即興演出なのか全く判然としない細工が施されている。河瀬監督の作品のように素人集団にプロを混ぜる以上に、一人一人別に撮って一緒くたに扱うのは、監督にとっても役者にとっても大冒険である。彼らが有名であればあるほどその冒険は効果的であり、見た目以上の実験作と言って良い。

新米死者たちの選んだ挿話が再現されてフィルムに焼き付けられる。彼らの生涯は全てビデオに記録されているのに再現フィルムを作る理由が今一つ正確には解らないが、ここにも作り物を限りなく現実に近づけて撮るという是枝監督の姿勢が表現されていると見ることができる。

そうした意味で僕は相当興味深く見たのだが、「月は同じなのに日によって見え方が違う」という谷啓の言葉に暗示される人間の考え方の違いに対する言及など人生を考えるスタンスは文学的には面白いが映画の魅力という点からは不満が出て来る。僕にとっては映画的に興味深いのに映画的な魅力が薄いという変な結果になっているのである。

この作品の死生観については鑑賞者各人が夫々じっくり考えれば良いだろう。

カンヌ受けしそうな作品でござる。

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この記事へのコメント

2010年06月13日 22:02
オカピー様今晩は.
この映画は6年前に見た映画です.不思議な雰囲気の映画でした.
小田エリカさんがこの後「美しい夏キリシマ」に出ていて,その姿も印象的でした.
オカピー
2010年06月14日 00:34
ほんやら堂さん、こんばんは。

タイトルは知っていましたが、今回まで未鑑賞でした。

>不思議な雰囲気
現実ではない世界を現実的に撮るというのが目を引きますね。

>小田エリカさん
顔も名前を知っていたのに何に出ていたかなと思いましたが、「キリシマ」だったんですね。
男女優の名前を憶えるのも大変になってきました。

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