映画評「レボリューショナリー・ロード/燃え尽きるまで」

☆☆☆(6点/10点満点中)
2008年アメリカ映画 監督サム・メンデス
ネタバレあり

サム・メンデスの最新作は彼をメジャー監督に押し上げた劇場用映画デビュー作「アメリカン・ビューティー」を50年代に舞台を移し変えたような内容で、再鑑賞したばかりの邦画「めし」(1951年)と途中までは似たお話の構図である。原作はリチャード・イェーツの小説。

元女優志願ケイト・ウィンスレットがオフィス用品を扱う会社の社員として働くレオナルド・ディカプリオと結婚して7年を経た頃、郊外で平凡な生活に埋没する毎日に嫌気がさして、仕事は自分がするからパリに移住しないかと夫君に誘いかける。現状に満足しているわけではない夫君は考えた末に承諾したものの、事務的にこなしただけの提案が高く評価されて給料が劇的に上がることになった為に最終決断ができないうちに妊娠が発覚、それを口実に移住を諦め、細君との間に激しい確執が起きる。やがて細君は思い切った行動に出る。

「めし」のヒロインは平凡な会社員の夫との平凡な生活にささやかな幸福を見出して終るのだが、こちらのケイト嬢はさすがにアメリカ人と言うべきだろうか、思い余って我を忘れ悲劇の坂道を転げ落ちて行くのである。
 かくして「アメリカン・ビューティー」と通底するアメリカの中産階級的幸福の欺瞞という主題が見出され、空しさを味わわされることになるが、幸か不幸か観客は、少なくとも僕は主人公たちほど絶望的な気分にはならない。

観ている最中に非常に気になったのは、ドラマの重要部分になると必ずいなくなる子供は誰がどこでどう管理しているのかよく解らないことで、こうした部分は煩雑になると思われてもきちんと描かないとウソっぽく感じられてしまう。

人物の配置も些か不満で、夫婦に家を紹介した不動産業キャシー・ベイツの息子であるドストエフスキー的人物マイケル・シャノンが夫婦の偽善的関係を暴いてしまう部分が直截に主題そのものでありすぎて、やや味気ない印象を残す。狂言回しとしてもう少し控え目であるべきでなかったかと思う。

「タイタニック」主演コンビの演技は見応えたっぷり。

Because the sky is blue, it makes me cry...

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この記事へのコメント

2010年02月12日 18:38
味気のない映画的整合性に欠けた(子供ら)
映画かもしれませんね~。^^

私はヘタなスリラー映画観てるよりも
震えと底冷えが来ましたけれどね。(^ ^)
オカピー
2010年02月13日 01:06
vivajijiさん、こんばんは。

僕の場合、夫婦の確執は「バージニア・ウルフ」との比較になるので、
どうしても厳しくなるのかなあ。
あの作品の厳しさと悲しさはちょっと例外的でしたよね。

子供をどこかに預けるとか、そういう場面が一か所でもあれば
また印象が違ったのでしょうけど、
僕の左脳はこの辺りでちょっと引っ掛かってしましましたねえ。^^

しかし、僕の右脳は、映像は良いと申しております。
演技陣も見ごたえありました。
シュエット
2010年02月15日 14:15
私はこの映画は夫婦を描いた作品というよりも、戦後のアメリカ社会そのものを描いた映画っていうところで見ていたかな。
映画などで俯瞰でずっとアメリカの郊外にずらりと立ち並ぶ広大な住宅地が映し出される映像をみるたびに、住宅地の美しすぎる光景に、すっごい閉鎖社会を感じていて、これは戦後日本の高度経済成長期にサラリーマンが憧れた狭い狭い団地と同じではないかと…狭い日本は縦に伸びて、広いアメリカは横に伸びただけの違いだけであって、画一された社会の画一された生活。日本と違って、新しい戦後アメリカの価値観、家庭像を作り上げるべき使命みたいなのを背負わされた世代として暗黙裡に何かを強要された生活。アン・リーの描いた「アイス・ストーム」とも通じる内容だなって思う。
夫婦の確執を描いた「バージニア・ウルフ」とは視点が違うと思うな。
言われるように粗い部分もあるけれど、私はサム・メンデスは「アメリカン・ビューティ」「ロード・トゥ・パーディション」「ジャーヘッド」と一貫して戦後社会の病巣を描いている作品として本作も評価してる。


オカピー
2010年02月16日 01:14
シュエットさん、こんばんは。

うわぁ、迫力あるぅ。(笑)
本作の内容について仰ることは全くその通りだと思います。

僕としては表面的な「夫婦の確執」という部分で引き合いに出したわけですが、ベルイマンの傑作「ある結婚の風景」に比べれば、「バージニア・ウルフ」のほうが本作に近いような気がします。
つまり、あの作品の原作戯曲は確か1960年ころに書かれたもので、戦後の経済成長と冷戦構造下におけるアメリカ社会の偽善を浮かび上がらさせるのが目的だったと思われるわけです。

>新しい戦後アメリカの価値観、家庭像を・・・強要された生活。
なるほどなあ。^^

実はメンデスの出世作「アメリカン・ビューティー」もピンと来ないところがあったのを、タイトルバックに流れるビートルズの"Because"(演奏は別)でピンと来たという経緯があったのに比べると、未だにピンと来ないところがありまして・・・。
シュエット
2010年02月16日 11:52
P様 またまたお邪魔。
>実はメンデスの出世作「アメリカン・ビューティー」もピンと来ないところがあったのを、
実は私も最初観たときは、なんじゃ?って感じで今ひとつピンとこなかったところはありました。でもそれとは別にアメリカの郊外型住宅がつくりだす社会って、あの画一化されて立ち並ぶ美しき光景にはどうも人間の匂いが感じられなくって胡散臭いものを感じて、しんどい社会だわって常々思っていて、アメリカン・ビューティなどはアメリカ人にとっては、あそこで描かれている疎外感は切実なものがあるんだろうなって見るごとにじわじわと感じ始めた作品でもありました。
ベトナム戦争の戦場と、美しく飾り立てられた住宅と
楽しい我が家的な郊外住宅を舞台にした作品から、そんな社会から滑り落ちる人々を描いた作品へと、アメリカ映画をみていくにつれ、「アメリカン・ビューティ」その始まりの時代を描いた本作の延長に今のアメリカ社会があるんでしょうね。
>バージニア・ウルフの原作戯曲は1960年ころに書かれたもので、戦後の経済成長と冷戦構造下におけるアメリカ社会の偽善を浮かび上がらさせるのが目的だったと思われるわけです。
夫婦の確執を通してアメリカ社会を捉えているのは確かに感じられましたけど、メンデスの本作は社会そのものに視点を置いて描いている。製作された時代の感覚もあるでしょうね。
オカピー
2010年02月17日 01:07
シュエットさん、こんばんは。

ご覧になっているか解りませんが、比較的最近の日本映画に「空中庭園」という作品があります。
端的に言えば、現在の家族関係の欺瞞を描き上げたものです。
サム・メンデスが「アメリカン・ビューティ」や本作で家族関係を通してマクロ的にアメリカ社会を描いたのだとしたら、「空中庭園」はミクロ的に日本社会を描いたものかもしれません。マクロとミクロの違いこそあれ、通底するものを感じます。

「空中庭園」や「アメリカン・ビューティ」の不気味は本作にはない感じがします。それはストレートに口論する部分が大量にあったせいかもしれません。
2010年02月28日 11:04
TB有難うございました。
本作品は不覚にも映画館で寝てしまいましたが、
「タイタニック」コンビの演技合戦は見ごたえありました。
二人とも本作品では喧嘩のやりとりが絶えないですが、
11年の歳月を経ても、最高の演技を見せてくれました。
男としてはこの結末は、深く考えてしまいます。

今度、訪れた際には、
【評価ポイント】~と
ブログの記事の最後に、☆5つがあり
クリックすることで5段階評価ができます。
もし、見た映画があったらぽちっとお願いします!!
オカピー
2010年02月28日 12:11
シムウナさん、こんにちは。

>「タイタニック」コンビの演技合戦
内容には少しピンと来ないと言いますか、構成的に不満があるのですが、二人の演技は大変良かったと思います。
幸福の追求とは・・・難しいものですね。

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