映画評「インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2008年アメリカ映画 監督スティーヴン・スピルバーグ
ネタバレあり

近年スティーヴン・スピルバーグの不幸は「解り易い娯楽作を提供する監督だ」という理解に基づく過小評価である。「A・I」も「宇宙戦争」も見た目以上に複雑で深遠な要素を内包した秀作若しくは佳作であったが、お話の表面的理解に留まった為にその一端にすら触れずに駄作扱いされ「スピルバーグ衰えたり」の声を聞くのは残念でならない。
 それ以上に、映画を評価する上で一番大事な語り手としての天賦の才能がその為に無視さえされることが残念だ。本作も悪い評判が微かに聞えてきたが、カット割りなどの才能はそう簡単に衰えるものではなく、見通しの良い展開やスムーズな編集はさすがと感心させられる。

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お話は前作から19年後(製作が19年後なので)の1957年冷戦時代、ソ連の諜報員ケイト・ブランシェットに脅されて、インディ・ジョーンズ(ハリスン・フォード)が彼女率いる部隊を10年前発見された謎の物体を納めた箱のある場所へ案内するところから始まり、そこから辛うじて逃げ出した先は核実験の現場、鉛で覆われた冷蔵庫に隠れて辛うじて難を逃れると、今度はFBIから共産主義者扱いをされ、休職の身へ。そんな時突然現れた若者シャイア・ラブーフから旧友である博士ジョン・ハートの拉致を告げられた為、二人は博士が連れ去られたらしい南米ベルーはクスコに飛び、再びケイトの一味と遭遇。
 彼女はハート博士が発見したクリスタル・スカル(水晶の頭蓋骨)は手に入れたものの、博士は頭がいかれて役に立たない為ジョーンズの力を借りて、そのパワーを発揮させようとする。

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というのが大まかなストーリーだが、僕が興味を引かれたのはまずこれらのお話が全て現実に起きた事件、若しくは存在するものから現実社会のパロディーとして着想され構成されている点である。ネバダの核実験場、50年代の赤狩り、47年のロズウェル事件、ナスカの地上絵、オーパーツとして有名な水晶のどくろ、宇宙人の人類への英知伝授説、等々を全ていっしょくたにしてスピルバーグのSF旧作と結びつけたくなる幕切れへと雪崩れ込んでいく。
 馬鹿馬鹿しいと言ってしまえばそれまでだが、オーパーツなどに興味のある僕はなかなか上手い具合に各々を結びつけたものだと結構ニコニコだった。

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旧作時代から「ガンガ・ディン」などへのオマージュを頻繁に行って映画マニアぶりを発揮していたスピルバーグだけに、勿論古い映画へのオマージュも満載。解り易いところだけでも、エロール・フリンばりのちゃんばらシーンが出てきたり、「ターザン」があったり、人食い蟻のシークェンスでは「黒い絨毯」もどきがあったり、ラブーフの登場場面が「乱暴者(あばれもの)」のマーロン・ブランドーそっくりに仕立ててあったり、見ていて嬉しくなる箇所が少なくない。

冒頭の文章の繰り返しになるが、スピルバーグは一連の連続活劇風アクション場面においてカメラワークや編集を自家薬籠中の物のように扱っている。こういう場面処理の的確さでは現在活躍している他の有名監督の追従を許さないし、ましてCM・PV・製作者上がりではとても真似ができない。

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ハリスン・フォードの動きも2年前の「ファイヤーウォール」よりはよろしく、思ったより安心して見ていられる。

といった次第で、旧作群には大分及ばないが、ここ数カ月の間に観た冒険映画の中では唯一本当のプロによる作品という印象がある。

スカルの(スカルノ)王国と言っても、インドネシアの話じゃない。

この記事へのコメント

2009年08月07日 09:39
おはようございます。
>スカルの(スカルノ)王国と言っても、インドネシアの話じゃない。
朝からこんなオヤジギャグに遭遇するとは!(笑)
劇場で観にいって先日もWOWOWで観たけど楽しかったわ。
なにせ第一弾を劇場で観てからのファンなもので、なんだかんだ言っても観にいくし、身贔屓してしまう。
>僕が興味を引かれたのはまずこれらのお話が全て現実に起きた事件、若しくは存在するものから現実社会のパロディーとして着想され構成されている点である。
確かに。そして、パロディってるんだぞ!分かってるか!などと野暮な演出しないのがレベルでございますね。それよりもなによりも劇場公開では大いに楽しませてもらいました。でもハリソン・フォードの息切れはみていてお気の毒だったけど…。でもその分ケイトとかジュニアが頑張ってくれて、やっぱりこのシリーズって何回みても面白いし、スピルバーグ見せてくれるわ。

オカピー
2009年08月08日 00:11
シュエットさん、こんばんは。

>オヤジギャグ
いやー、僕の文章は「上から目線」だそうで、「敷居が高い」などと言われもしますし、多少はくだけた表現もしないと、誰も書きこんでくれなくなっちゃうから。^^;

僕も映画館で見た口ですが、贔屓も何も、上手いものは上手いので、正直に語っております。^^

>パロディってるんだぞ!分かってるか!などと野暮な演出しないのがレベル
「宇宙戦争」なんかでもそうですが、メッセージなんかも前面に押し出さない。スピルバーグの品格ですよ。
解る人は解るということを解っているですね。

>ハリソン・フォード
うまくスタントマンを使っているのでしょうが、結構頑張っていました。
2年前の「ファイヤーウォール」がかなり無残だったので不安になりましたが、まあ上出来。スピちゃんの見せ方も上手いんだろうな。
2009年08月08日 10:13
 こんにちは。
インディを昔から観て来たファンならば、あちこちに張り巡らされた映画マニアのツボに大いに笑わされますが、インディ・シリーズを見るのが最初の人はどういう印象を持たれたのでしょうかね。

 映画って、たくさん見れば見るほど、オマージュやパロディ・シーンに出くわしますので、昔の作品は必見ですね。それを知らないと新作などを観に行って、興味深いシーンが出てきたときに、この監督はオリジナルだ!などと書いてしまい、大恥をかくことにもなりかねませんね。

 ではまた!
オカピー
2009年08月08日 23:21
用心棒さん、こんばんは。

 僕のように、現実のパロディーと思って観ることができれば、結構楽しめると思いますけど、見せ方の下手な「ハムナプトラ3」のほうが面白いと仰る方もいらっしゃいますから、世の中解りません。

>パロディ、オマージュ
 旧作に則った箇所も相当多かったですね。これらについては敢えて触れませんでしたが、ジョーンズの苦手な蛇をめぐるシーンなどは受けました。

>大恥
 僕なども結構知らないことはあるんでしょうけどね。
2009年08月08日 23:36
プロフェッサー、こんばんは。

この作品は、仰るとおり現実社会のパロディとオマージュが多く含まれていますが、きつい風刺でもあったと思います。

当然ながら、そう、いまさら言うことではないですが、映画において説明することはあってはならないと思います。これがわからない奴はそれでいいとの自身と開き直りが必要であると私は思っています。
その意味でも、楽しめそして大いに刺激され、衝撃を受けた作品でした。

では、また。

オカピー
2009年08月09日 17:11
イエローストーンさん、こんばんは。

>きつい風刺
スピルバーグだから露骨に主張はしていませんが、核実験場の扱いなどはそうでしたね。

>映画において説明することはあってはならない
映画を見るには常識が必要ですし、映画を見れば常識も知識も身に付くことが少なくありません。常識があれば説明的な台詞なんか要らないですね。
そんなわけで、最近ナレーションが世界的傾向になっているのは全く感心しません。特にサスペンス系のそれは、プレイする前に読むであろうゲームの概要みたいな感じなので大嫌いなんです。あそこまでズボラになると映画とも言えないような気がしますよ。

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