映画評「相棒-劇場版-絶体絶命! 42.195Km東京ビッグシティマラソン」

☆☆(4点/10点満点中)
2008年日本映画 監督・和泉聖治
重要なネタバレあり。未見の方は要注意。

TVシリーズ「相棒」は主人公・杉下右京(水谷豊)がシャーロック・ホームズばりの物凄い推理力で事件を解決する本格ミステリーとしての面白さと主人公の正義漢ぶりで人気を博し、TVドラマを30年以上も観ていない僕も時間がある時に“ながら”で観ることがある。
 本作は昨年の5月に公開された劇場版で、スピンオフ作品「相棒シリーズ 鑑識・米沢守の事件簿」の公開に合わせて放映されたTV版にて鑑賞。

ニュースキャスターの死体がクレーンに吊られた状態で発見、引き続き二世女性議員(木村佳乃)への小包爆弾事件が起き、陣川刑事(原田龍二)のもたらしたSNSサイト“人民裁判”の情報を基に“特命係”の右京が頭脳をフル回転させて事件解決に挑む。
 キャスターは“人民裁判”で死刑を言い渡された人物。先に交通事故死した判事も同様だが、右京は現場に残された謎めいた数字とアルファベットの組合せからそれがチェスの棋譜の一部と気付く。そこから犯人が間もなく開始される東京ビッグシティマラソンでランナーと観客を狙っていると推理、相棒の亀山(寺脇康文)に現場を捜索させ、競技開始後も危険物を発見して速やかに撤去しなければならない。

ここまで多少のご都合主義を別にするとミステリーとして興味をそそるが、推理がマラソンに結びついた辺りから脚本の底の浅さが目立って来る。

まず、マラソンに本作の(視覚上の)ハイライトを置いたことの失敗。何となれば、会場はオープンスペースであるし、いざとなったら競技を中止すれば大きな問題は起きないので、サスペンスにならないのだ。従って、推理力のある観客なら犯人の狙いがテロにないことに気付いてもはやハイライトどころではなく、肩すかしすら喰わない。その直前にオリンピック銀メダリストの有森裕子を何度も映すのは馬鹿げている。

ここから極めて重要なネタばれをせざるを得ないので、自己責任にて(笑)お読みください。

実は、このお話のモチーフは、2004年に起きたイラク日本人人質事件に対して自己責任論を持ち出した政府、それに乗じて国民を誘導した一部マスコミ、碌に考えることなく行われた一部国民による人質へのバッシングである。
 それと似た事件により息子を失った真犯人が、実はそのバッシングは嘘の情報で出来上がったものであり、その不名誉をそそごうと逮捕される為に事件を起こしたことが判って来るわけだが、ここに至ってお話が矛盾だらけになり誠にがっかりさせられる。
 一番の疑問は、真犯人が末期癌という設定なのにわざわざ発見・解読に時間のかかる手法で犯行予告めいたことを行う理由で、誰も細工に気づかない時に犯人はどういう筋書きを用意していたのか知りたいくらい。さらに、主犯が逮捕を前提に行動しているのに、共犯が自殺しアジトを爆破する理由が証拠隠滅以外に考えられないのは矛盾であり、理解に苦しむ。

最後はバッシングに絡む政府、マスコミ、国民を批判する内容だが長たらしく、映画的な視覚的馬力の不足をメッセージで誤魔化している印象あり。

といった次第で、序盤は右京の知恵を披露する本格ミステリー、中盤はマラソンを軸としたサスペンス・アクション、終盤は社会派めいたドラマという、言わば“三部構成”にして欲をかいた構成が巧く機能せず、整合性を欠くお話に堕している。

出来の良いTV挿話(1時間枠もの)を続けて3話観た方が気分爽快になれるだろう。

♪ジグザグ気取った 都会の街並み~

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