映画評「武器なき斗い」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1960年日本映画 監督・山本薩夫
ネタバレあり

白い巨塔」以降娯楽性も交えてきた山本薩夫としては、生物学者としてスタートした政治家・山本宣治の半生を描いた本作が本来のフィールドである。

大正14(1925)年、山本は同志社大学の生物学教授として各地で労働者階級の産児制限を推進していくが、その活動が共産主義的活動とリンクせざるを得ない性格上、悪名高い治安維持法をベースにした事なかれ主義により大学から放逐されると、労働農民党に所属する政治家として活路を見出し、第1回普通選挙の下に当選を果たす。
 が、翌年治安維持法の強化に対する彼の強固な反対姿勢を面白く思わない右翼活動家の刃に倒れる。

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僕は右でも左でも何であろうと、プロパガンダ的な作品は映画的な潤いを欠く為に好きではない。
 本作は伝記映画と言えども、最終的に社会主義運動に殉死した人物を扱っている為その思いに変わりはないが、下元勉演ずる山本宣治が飄々としたなかなか魅力的な人物なのが救いになる。
 旅館の息子の生まれで自由な考えを持ち、生物学者らしく社会主義的な理屈に縛られず、結婚祝いに古い指輪を贈った党員(中谷一郎)の「ブルジョワ的だ」という言葉に「張り過ぎた弦(つる)は折れ易いと言うよ」と切り返す彼には個人的に拍手喝采だ。社会主義・共産主義のそうした硬直化した思想は人間の人間である所以まで否定することが多いから、彼のこの発言には大いに共感させられた。

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それ以外は講義・講演や演説の場面が多いので面白いとは言いがたい。僕が求めているのは思想ではなく、映画的な面白さである。

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