映画評「仁義の墓場」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1975年日本映画 監督・深作欣二
ネタバレあり

「仁義なき戦い」シリーズでその名を後世に残すことになった深作欣二のヤクザ映画。同じヤクザ映画でも、意外と情が絡んで湿っぽくなりがちだった古い東映任侠映画とは一線を画し、ドライさが深作監督の持ち味だったことを確認できる異色作である。

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石川力男(渡哲也)は終戦直後新宿の河田組に所属し、無鉄砲な縄張り争いをしたり選挙で落選したばかりの大親分の車を爆破するなどして謹慎させられるが、その腹いせに恩義のある組長(ハナ肇)に斬り付け、10年の所払いの為に身を収めた大阪で麻薬中毒になった揚句に1年余りで東京へ戻る。
 説教した兄貴分(梅宮辰夫)を射殺して服役、無理矢理ものにした病身の妻(多岐川裕美)のおかげで保釈されるが、健康を苦にした彼女の自殺後再び服役、6年後刑務所の高所から飛び降り自殺する。

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任侠社会にも窮屈さを覚え狂犬の如く邪魔する者に襲い掛って自滅していった実在したヤクザの一代記的な作品で、義理も人情も重んじないくせに自らの墓石に射殺した兄貴分の名前と【仁義】の文字を添える彼の生き方とその暗部は到底一般常識では測り知ることはできない類のもので、映画自体も分析を放棄している。
 従って、主人公への共感や反感といった常識的な尺度で本作を測っても何ら得るものはない。かと言って無条件に技術的な部分だけを以って評価するわけにも行かず、なかなか厄介な作品である。
 少なくとも<ヤクザは格好良い人種ではない>という印象を残しているのは良いことだろう。

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「仁義なき戦い」同様セミドキュメンタリー・タッチで、殺伐とした印象を与える手持ちカメラ風アングル・ショット(カメラを斜めに撮影したショット)を多用、説明的な部分ではモノクロ若しくはセピアカラーで展開し、時にストップモーションを使うなどしてドライに素材を処理していく。特に、終戦直後の時代ムードと荒廃した街の情景再現が秀逸。

渡哲也が妻の遺骨を食べる場面は日本映画史に残る鬼気迫る名場面と言うべし。

主人公の墓には「くちなしの花」を供えると良いでしょう。

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