映画評「ドリームガールズ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2006年アメリカ映画 監督ビル・コンドン
ネタバレあり

60年代ビートルズのライバルだったのはローリング・ストーンズにあらでシュープリームスだと思っているモータウン・サウンド好きの僕だから、アウトラインすら知らずに観てもすぐにシュープリームスをモデルにしたお話と解ってしまう。グループ名すらもじりのドリームス。
 当然ジェイミー・フォックス演じるレーベル創設者カーティス・テイラー・ジュニアはモータウンの創設者ベリー・ゴーディ・ジュニアである。

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エディ・マーフィ扮するジェームズ・アーリーはその芸風からジェームズ・ブラウンと推測されるが、彼はモータウンとは無縁なので勝手な創作と思うべし(麻薬漬けで死ぬのはシュープリームスのメンバーで76年に亡くなったフローレンス・バラードの悲劇を投影しているようだ)。
 メンバー交代劇の後ダイアナ・ロスとシュープリームスと名前も変わるように、それ以外は事実から取っている部分が多く、ビヨンセ・ノウルズ扮するリード・シンガーは勿論ダイアナ・ロスで、70年代映画に興味を示したダイアナの人生そのまま。

年代は意図的にずらしたらしく、本物が1959年にデビューしたのをこちらはビートルズがメジャー・デビューした62年に遅らせ、ダイアナが69年に途中脱退したのに対し、映画は70年代後半の解散までトリオを引っ張るという設定にして、ダイアナが在籍するシュープリームスの最後の曲「またいつの日にか」を思わせる曲をもって映画は終わる。

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監督はビル・コンドン。脚本だけを担当した「シカゴ」は3回映像化されたよく練られた物語ということもあってかなり気に入ったが、ミュージカル好きな僕はこちらには思ったほどご機嫌になれない。音楽業界のお話だからと言って無理にミュージカルにする必要がないどころか、黒人音楽をたっぷり聞かせる一般ドラマにしたほうが楽しめたのではないかと想像される。音楽が言わば主人公であるだけに、音楽の洪水の中で人物の心の声としての歌曲が際立たないのである。
 その一方で、アカデミー助演女優賞を獲ったジェニファー・ハドスンが我儘な性格を発揮してごねる場面で分り切った心情を延々と歌い交わすのにじりじりしてしまう人も多いはずだ。

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芸能界・音楽業界の裏側を見せる狙いとしては新味なく、無難な展開といった程度。十分余韻への準備をしないままに或いはふさわしくない場所でフェイドアウトを繰り出し、気が抜ける印象を抱かせる編集もまずい。「シカゴ」のロブ・マーシャルが流れるように作ったのとは対照的である。

音楽面では、ジェニファー嬢の歌唱はずっと張り上げたままなので聞くうちに疲労を覚える。そこへ行くと映画の中では特徴がないと言われるビヨンセのしなかやか歌唱は大いに宜しい。何だかんだ言っても黒人俳優たちの歌唱力は優秀で、歌の下手な黒人は恐らく「ハッピー フィート」のマンブル君のように肩身の狭い思いをするのではあるまいか。

歌曲には良いものもあるが、やはりモータウンの名コンポーザー・トリオ、ホーランド=ドジャー=ホーランドの名曲を一曲くらいは聞きたかったというのがシュープリームス若しくはモータウン・サウンド・ファンの正直な感想であろう。

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この記事へのコメント

2008年03月27日 17:00
>音楽の洪水の中で人物の心の声としての
 歌曲が際立たないのである。

お説の通りですね。

なんでもっとじっくり腰をすえて
撮れないんでしょうか~。

まるで歌のヘタな人がよくやるカラオケでの
テンポを2~3レベルほど早めて歌う手法と
そっくり・・
ぱっぱぱっぱと歌うからアラが目立たない、
っと本人は最初から最後までご満悦ですが
聴く人が聴けば、す~~~ぐその手の内は
見えちゃう~(笑)

その対極にあの歌い上げゴネリソングと
来た日にゃ、まるっきりうなり節演歌
(怨歌かも)。(--)^^

マイ記事にも書いておりますが
泣いている女性客もおりましてな、
私しゃ、宇宙人になったような気が
したとです。(笑)
豆酢
2008年03月27日 18:21
いや~…。

コメントしようか迷ったのですが、やっぱりこの映画は好きになれません。
ミュージカルは、歌のへたっぴな人と踊りのへたっぴな人は出ちゃダメですよ(T▽T;)。「シカゴ」もずいぶん評判が良いですが、私にはダメでござんした。あの、いつも唇をすぼめて小首をかしげてしゃべる、レネ何とかという人が虫唾が走るほどダメでした。
2008年03月27日 21:55
こんばんは。
>無理にミュージカルにする必要がない
同感です。
>ジェニファー嬢の歌唱はずっと張り上げたままなので聞くうちに疲労を覚える。
またまた同感です。
主役を喰ったなどとも言われてますが、端から主役なのではと思います。
オカピー
2008年03月28日 00:57
viva jijiさん、こんばんは!

>歌い上げゴネリソング
ジェニファー嬢は、うまいですがね、言わばハイテンションの一本調子ですから、段々辟易しましたね。
「ミュージカルは突然歌い出すのがどうも」という人はミュージカルの心を知らない。突然だから効果があるのであります。
台詞で十二分に説明しておいて、かつ時間のかかる歌でやられた日には「わしゃかなわんよ」です。
この場面は典型的な「屋上屋を重ねる」というやつで、ベクトルを同じ方向に持っていて感動を増幅させるのと似て全く非なるもの。
コンドンはそこを勉強せねばいけないでしょう。
今度ん(コンドン)はしっかりしてね。(爆)

>私しゃ、宇宙人になったような気が
>したとです。(笑)
ブログでもあのゴネリに感激していた人が少なからずいらしたので、そういうところには(申し訳ないので)さすがにTBは出来ないなあと思いましたです。
オカピー
2008年03月28日 01:16
豆酢さん、ようこそです。^^

昨日の午後、豆酢さんにへお邪魔したら、コメント欄が閉鎖されている、それも永久閉鎖とな。
しかも、相手先へのコメントも自粛と聞いて、わが妹に何があったか心配しておった矢先ですから感激しました。
異論、賛同、何でも良いですから、遠慮せずにコメント、足跡を残して戴けると嬉しいです。^^

>ミュージカルは、歌のへたっぴな人と踊りのへたっぴな人は出ちゃダメですよ(T▽T;)。
僕も基本的にはそう思いますですよ。
日本でミュージカルが流行らない理由は、国民性に加え、歌の上手い俳優、演技の上手い歌手がいないからだと思います。

>「シカゴ」
そうでちゅか。^^;
わが周囲の女性陣に何故か批判の声多し。TT
歌手志願の物語だからあのくらいのぎこちなさが丁度良いと思うのですけれどねえ。
例えば、ジュリー・アンドリューズがわざと下手に歌っても気分が出ないんじゃないかと想像しております。
この辺りは水掛け論になっちゃいますけどね。^^
オカピー
2008年03月28日 01:28
hashさん、こんばんは!

hashさんに遅れること二日でしたね。

>主役を喰ったなどとも言われてますが、端から主役なのではと思います。
群像劇的なミュージカルなんでしょうね。
常々思っております、群像劇の主役は人間ではないのではないか、と。
その観点で敢えて言えば、音楽業界が主役ということになるのでしょう。
2008年03月29日 07:50
記事ではいろいろと文句たれてますが、結構楽しみましたです。
やはりハリウッドの役者っていうのは芸達者だなあと・・・
エディ・マーフィーのパフォーマンスがよかったですね。
登場するキャラもとても単純で、ストーリーもとてもわかりやすい映画だったと思います。
オカピー
2008年03月30日 03:11
しゅべる&こぼるさん、こんばんは!

>とてもわかいやすい
そういうところがミュージカルなんですね。
しかし、ミュージカルらしいのは、ジェニファー・ハドスン嬢扮するエフィなる人物が絡む場面だけというのも変なもんです。^^;

>芸達者
元々黒人は芸達者で、色々な才能がゴロゴロしていると思われますが、白人もなかなか。
日本人は何故にこう芸がないのか。だから「かくし芸」などが人気を博す。生真面目な国民性に加え、それが日本にミュージカルのなかなか定着しない理由と思っていますが。

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