映画評「トリノ、24時からの恋人たち」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
2004年イタリア映画 監督ダヴィデ・フェラーリオ
ネタバレあり

監督ダヴィデ・フェラーリオが恋愛映画の形を借りて映画への愛を表明した作品である。シネフィル(映画マニア)向きだが、嬉しくなる要素が満載の割に僕は感激しきれなかった。

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トリノにある国立映画博物館の片隅に住み込み夜警として働いている若者ジョルジョ・パゾッティは、いつも寄る近くのハンバーガー店の女子店員フランチェスカ・イナウディが意地の悪いマネージャーを火傷させ、警察に追われるところを助けて、部屋に匿う。やがて懇ろになる二人。
 彼女の恋人ファビオ・トロイアーノはマネージャーを脅しつけて告訴を取り下げさせたので、彼女は自由になるが、それは三角関係の始まりを意味する。

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といった具合に進行するお話で、後半の三角関係は勿論トリュフォーの傑作「突然炎のごとく」を意識したもの。上記画像のヒロインの様子は「大人は判ってくれない」で留置場に拘留されたドワネル少年を彷彿させ、トリュフォー・ファンである僕をご機嫌にさせる。
 パゾッティが極めて無口で表情も余り変えないのは、彼がキートンの大ファンであるからで、生活様式もキートンの映画の如し。しかし、終わりはチャップリンなのであった(笑)。

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映画の前身である幻燈や現在の方式になる前の<映画>即ちキネトスコープなど様々な映像機器が紹介されるのも楽しく、コマ落としやアイリス(上下画像参照)などサイレント時代の映画を思わせる演出も楽しい。「甘い生活」のアニタ・エクバーグが壁紙になっている場所もあり、次から次へと出てくる。
 といった具合で、作者フェラーリオは黎明期の映画を愛する一方、ヌーヴェルヴァーグ、その中でもクラシックな映画手法を取り込むことが多かったトリュフォーを敬愛しているようにも思えた。

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その一方歓迎できないのは序盤からのナレーションである。
 本作の底流に<映画は現実と違う>というテーマがあるので、余り映画的とは言えないナレーションを敢えて多用したのかと穿った見方もできるのだが、どうも説明的で煩く、残念ながらトリュフォー作品のナラタージュのような滑らかな感じにはどうも受け取れない。よく喋るトロイアーノやナレーションは無口なパゾッティをサイレント映画になぞられた場合トーキー映画のメタファーなのかとも思えるが、それでも最初に覚えた印象の悪さを払拭するのは難しい。
 僕ならパゾッティの生活態度に合わせて極力言葉の少ない作品を作る。トリュフォーが「華氏451」で焚書というテーマに合わせてタイトルを省略したように。

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非常に興味深い作品であることは確か。撮影も構図に腐心して断然優秀である。

鑑賞後邦題が「トリュフォー、夜霧の恋人たち」と読めてくる(笑)。

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この記事へのコメント

2008年03月16日 07:34
たしか、本作についてなんとなく書いた
薄~~~い記憶が~・・・・
っと、自分ンチの中(笑)を探しまくって
連れてきましたけれど、4行ぐらいしか記述
してません・・・(--)^^

映像自体のセンスは買うのですが
なんとのう感性が直裁的に感じられて・・・

題名からすると20~30代のカップル向けで
売りたかったんでしょうけれど、映像のヒントに
なった元映画や映画人、今の方たち、すぐ髣髴と
するかしらね~?

>どうも説明的で煩く
>ナレーション

簡潔・省略の美しさを
理解できていないのね。

だから、余韻も生まれない。(--)

>夜霧の

母が深夜TV放映で観ていた
「夜霧のしのび逢い」を
ちゃんと観たいと思っているのですが
・・無いですね。^^;
あ、ただ“夜霧”で反応してしまいました~(笑)
オカピー
2008年03月17日 02:58
viva jijiさん、こんばんは!

>題名からすると20~30代のカップル向けで
配給会社はそのつもりだったのかもしれませんが、内容はマニア向けんですよね。
僕が気付いていない作品もたくさんあるはず。
しかし、探り出すのは好きではない。その時に解れなければ余り意味がないのがこの手の作品の宿命です。

>簡潔・省略の美しさ
トリュフォーのナレーションはそれ自身が狂言回しで、説明ではないんだな。
上手く説明できないですけどね。

>夜霧のしのび逢い
主題曲しか知らんです。ある年齢以上の日本人なら大概知っているであろう名曲ですよね?
<しのび逢い>繋がりで、マルグリット・デュラス原作、ピーター・ブルック監督「雨のしのび逢い」ちゅうのがなかなかシブいんですが、ご覧になったことありますか?
2008年03月17日 10:25
「雨のしのび逢い」は未見ですね~。
allcinemaのいやに詳しいあらすじを読んで、
これは観てみたい。^^

「華氏~」「~炎のごとく」でご贔屓に
なりましたO・ウェルナーの「しのび逢い」
なんちゅうのも田舎町の銭湯の脱衣場に
貼ってあったポスターだけ、薄~い記憶が。

P・ブルック監督のブルックに反応して
先日観たR・ブルックス^^の「渇いた太陽」。
「冷血」「~グッドバーを探して」でも
そうでしたが、最後まで手を抜かぬ演出の
方ですなぁ~。
出ていたシャリー・ナイトつながりで
未見のコッポラ監督「雨のなかの女」を
観たいと思っていますが、プロフェッサーの
感想はいかがでしょうか?

ギラギラした印象しかないカーク・
ダグラスがメロドラマしたという^^
キム・ノヴァク共演の「逢う時はいつも他人」
なんて観てみたいなぁ~~^^
きっと凡作なんでしょうけれど
あの頃の恋愛ドラマは大人の男女が
主人公でしたものね。
題名も、いいじゃないですか、粋で。^^
シュエット
2008年03月17日 23:23
劇場で観たんですが、WOWOWで放映されていたけど、記憶を呼び戻すだけで、もう一度観たいなって気が起きず見なかったですね。今パンフ探したけど一杯あるから大変だから止めた。パンフ見て、そういえばオマージュだよなって思ったような。映画検定の次はこんな映画が作られるのかなって思ったりもしました。トリノが映画発祥の地とか、そんなコメントおぼえてます。だからここに映画博物館が建てられたって。いくつか、博物館のフロアを上から撮ったり、建物の窓とか、そんな映像なかったっけ?面白い撮り方だなって思った記憶が残ってますが…。最近作って、心の何時までも残るシーンって少ないですね。見終わったら、すぐに記憶の彼方にっていうのが多すぎて、考えたら毎週新作が公開されてますものね。若い頃は1ヶ月に1作とか、終っても場末で2本立てでまた封切りされるし。表現も「公開」より「封切り」でしたよね。公開されるまで内容がよく分からなかったし、情報過多の今がいいのか悪いのか。なんか本作と関係ない話になってしまってすみません。
オカピー
2008年03月18日 02:54
viva jijiさん、毎度です~。

>しのび逢い
ルネ・クレマンに同じ題名の名作がありますが、
オスカー・ウェルナー主演版も題名だけ知っております。
「華氏451」で名前を憶えたウェルナーが
出ているので関心を持ったなあ。
共演女優がバーバラ・フェリス。
当時有名なのかと思って懸命に憶えたのに、
大した作品に出ていませんね。^^;
何だかんだ言って未だに未鑑賞。

>雨のなかの女
コッポラの中では好きな作品です。
大昔のことなので大して憶えていませんが、
苦味のあるメロドラマぶりに
揺さぶられるところがありましたかね。

>逢う時はいつも他人
子供の時にTVで観ただけでまるっきり正確に評価できませんが、
何しろリチャード・クワインが監督だからなあ。
オカピー
2008年03月18日 03:07
シュエットさん、こんばんは!

>博物館のフロアを上から撮ったり、建物の窓とか、そんな映像なかったっけ?
ありましたよ。
カメラを斜めにするアングル撮影もありました。

>「封切り」
そうでしたね。
「スクリーン」でも<封切作品紹介>でした。
いつの間にか「公開」に。TT
多分70年代後半でしょう。

>情報過多の今がいいのか
良くないです。TT
一つの作品が不当に叩かれるのもそこに原因があります。

また、音楽もそうですが、今はBS・CSにレンタルといった具合に簡単に古い作品が観られ、有難味が減りました。
映画館のない田舎にいる人間にとっては嬉しいことでもありますが。

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