映画評「冷血」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1967年アメリカ映画 監督リチャード・ブルックス
ネタバレあり

昨年末観た「カポーティ」でトルーマン・カポーティが取材していた事件を、彼のドキュメンタリー小説を基に映像化したセミ・ドキュメンタリーである。三十余年前に観た時は子供だったので退屈した記憶がある。

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1959年カンザスでクラター家四人が殺害される事件が起きる。犯人は白人のディック・ヒコック(スコット・ウィルスン)とチェロキー族と白人の混血ペリー・スミス(ロバート・ブレイク)で、ヒコックが刑務所仲間ウェルズからその家に1万ドルの大金を納めた金庫があると聞き、半ば殺害を予定して起こした強盗殺人である。
 一方、事件を担当するカンザス捜査局のデューイー刑事(ジョン・フォーサイス)らが足跡以外には証拠も動機も掴めず迷宮入りと思われたところで、ウェルズが賞金目当てにヒコックに元の雇い主であるクラター家の話をしたことを告白、彼らがラス・ヴェガスを彷徨っているところを別件逮捕する。

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コンラッド・ホールによるモノクロ映像には鑑賞者をその現場に居合わせるような驚くべき迫真性があり、リチャード・ブルックスの脚本および演出はタイトで、二人の処刑場面の処理は断裁的で正視しがたい酷烈さがある。ブルックス最高の一編と言って過言ではあるまい。

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「カポーティ」では主導的役割と思われたスミスが寧ろ受動的である一方で、少年時代に見た母親の行状や白人の父親から与えられた暴力によるトラウマが事件に大きな影を落としたことが判明する辺りは「カポーティ」よりぐっと具体的で解り易く、アメリカの影を描いて凄味のある作品となった所以である。凶悪犯はいずれも養育関係に共通性があるという序盤の説明がここで生きてくるわけで、ブレイクの陰影のある演技が実に良い。

方や、ヒコックはドライな根っからの犯罪者という印象が強く、単純だからこそ不気味な印象を覚える。こちらに扮したウィルスンの演技がまた絶妙だ。

冷血・・・モノクロだけに暖色は無理なのです。

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この記事へのコメント

シュエット
2008年02月03日 19:00
P様ご無沙汰です。「冷血」最後の処刑シーンもきっちり描いてましたね。「冷血」みて「カポーティ」見たので映画は面白く見れました。ただ、映画の前に「冷血」を観たので、カポーティの作品の映像化の「冷血」がやはり焼きついてます。ヒコックは実際にこのあとなにか犯罪を犯したとか。ウィルスンは「華麗なるギャツビー」ではおとなしい修理工を演じていて、おとなしい男が思い詰めて…上手かったですよね。
また後お邪魔します。
全く映画みて、ブログの記事書いてとなると、本当に時間がいくらあっても足りないですね。みなさん本当に上手に管理されてますよね。私はなかなかうまくやりくりできなくって…。
オカピー
2008年02月04日 01:59
シュエットさん、こちらこそご無沙汰しました。

貴プログでも書きましたが、この迫力はモノクロの威力かな、などと思いますね。
ロバート・ブレイクが目立つのですが、僕はこの作品のウィルスンは会でして。犯罪者の異常さや不気味さが滲み出ていたような気がします。
「華麗なるギャツビー」は昨年原作も読んだので、また観たくなったんですよ。34年も前です、観たのは。

>やりくり
僕は時間が結構あるだけです。
凄いのはviva jijiさんですよ。介護があり、一般の火事があり、カラオケやら歌のレッスンやらがあり、映画を観、本を読み、ブログを付ける。
しかも一昨年までは毎日記事をUPされていた。
僕には真似できまへん。尊敬しちゃいます。
2008年02月04日 07:12
>一般の火事があり

あのう~ウチはまだ燃えておりませぬが~(--)^^
(誤字おもしろがり症候群の私~ホホホホ~)(笑)

プロフェッサー、
私、な~~んものんびり暮らしてますのよ~♪
3月に娘を“追ん出したら(笑)”もうすっかりもっと
のんび~~り、マイ・フェイバリット・ライフに♪

ところで「冷血」よね。
いいですよね、これ。^^
ま、モノクロ映像の良さが最大限に発揮された
面とともに役者のおいしいところを上手く
引き出した演出と構成も惚れちゃいましたね。^^

それにしても何ともやり切れない実録ものでは
ございませぬか~。(クラター家殺人事件)
またそれに目をつけたカポーティというお方。
やっぱり彼も病んでいたのかもね。
2008年02月04日 10:32
ノンフィクション・ノベルという言葉は、確かこの原作から使われだしたんですよね。大昔に読みましたが、ほとんど忘れてます。映画も。

スコット・ウィルソンはこの頃の脇役として印象深い俳優で、「夜の大捜査線」が最初に覚えた作品でしょうか。中西部の田舎者を演じさせたら天下一品! (本人は嬉しくないかも知れませんが・・^^)
「デッドマン・ウォーキング」で、神妙に牧師を演じていたのが妙に可笑しかったです。
オカピー
2008年02月05日 00:16
viva jijiさん、こんばんは♪

>一般の火事があり
おかしいな、きちんと変換を確認したはずなのに。
とにかく、漢字変換に関してはXP時代のほうがずっと良かったなあ。VISTAについているIMEは、まっこと良くないですぞ!

>3月に娘を“追ん出したら
姐さんの生活に前よりゆとりが出来るのは確かなようですね。
めでたしめでたし♪

>クラター家殺害事件
TVを観ない姐さんはご存じでしょうか?
この事件は2000年末に起きた未解決の世田谷一家殺害事件(やはり親子4人殺害)を思い出させるのが辛いです。
勿論映画の素晴らしさはまた別の次元で語るべきですが。

日本では一般の作家がカポーティのように犯人逮捕前から密着取材することはまずできないのでしょうねえ。
オカピー
2008年02月05日 00:44
十瑠さん、こんばんは。

>ノンフィクション・ノベル
本人が名付けたのではなかったかなあ?
「冷血」をお読みになりましたか。
僕は戦後文学は幾つかの理由で余り読んでいないのですが、そろそろこの辺りは読んでも良いでしょうかね。

>「夜の大捜査線」から
リアルタイムで? それは早いですね。
>中西部の田舎者
正に!
本作でもそうですね。「ギャツビー」の舞台は東部ですが、そんな朴訥なイメージがありました。

>「デッドマン・ウォーキング」
忘れちゃったなあ。^^;
十瑠さんほど彼に注目していなかったせいかもしれませんね。

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