コラム「普通とまあまあ」

 映画評を書くに当って、世間にあまたある映画ブログやall cinemaといった映画データ・サイトにおける批評・感想を読ませて戴くことがある。他の人の意見を参考にすることは余りないが、反面教師的に材料として使うことは少なからずある。個別の感覚については口出しするに及ばないものの、映画や映画批評に対する基本姿勢に問題がある場合は黙っていられないからである。

 しかし、今日の話題はもっと軽いもので、色々なところを訪問するうちにちょっと驚かされた世代間のギャップについて三件ほど書くことに致しましょう。

 僕は昭和の真ん中辺に生まれた世代である。
 まずこれが大前提であるが、ある映画ブログに訪れた際、「普通」なる評価が「まあまあ」の上であることにビックリした。
 僕らの世代では、恐らく大概の人が「まあまあ」のほうが「普通」より上の概念ではないかと思うのだ。「普通」は平均的、水準的の意味として使い、「まあまあ」は満足はしないが悪くないという意味だから当然平均より上という意味である。拙ブログの常連者におかれてはそういうことになると思うが、如何?
 推察するに、ブログの管理人は僕らより二世代くらい若い人ではないか。そして彼らが使う「普通」は文字通りの普通ではなく、「普通に良い」というちょっと矛盾した表現の省略形にちがいない。それならば「普通」が「まあまあ」より上にあっても不思議ではなくなる。
 恐らくこうした「普通」の使い方が、若い世代を席巻しているのだろう。従って、彼らの文章や会話の中で「普通」という単語に遭遇した時それに属さない世代の人は、「そこそこ悪くない」と翻訳する必要がありそうである。
 しかし、彼らの「まあまあ」が我々の「普通」に相当するものか、やはり従前通りなのかは判然としない。しかし、実感的に余り良くない時に使っているのではないか。

 技術についての認識についてビックリさせられたのは、all cinemaでの「沈黙の追撃」に関するコメントである。
 ヘリコプター内でのCGの背景処理にその人は失笑したという。しかし、僕は失笑した彼に苦笑せざるを得なかった。残念ながら、あの背景は、CGではなく、古典的なスクリーン・プロセス(より具体的に言えばリア・プロジェクション)という手法で作られたもの、あの背景は実写なのだ。
 スクリーン・プロセスはCGが開発される前は勿論、現在でもよく使われている合成方法で、自動車や電車内の人物を捉える場合の背景は殆どこの方法が採用されている。つまり、演技する人物の後ろにスクリーンを置き、そこに後ろから映写する。
 一度フィルムに収めた映像でなおかつ後ろからの投影だから鮮度が落ち、誰もその不自然さを感じないではいられないが、慣れればそう悪いものではない。
 背景をCGと思い込んだ彼は勿論若い人(十代?)だろう。スクリーン・プロセスを知らない世代も遂に現れたかと思った次第。

 あるいは「グッドナイト&グッドラック」に関して、これもall cinemaで見出したコメントである。その人はこの素晴らしい映画が何故モノクロを採用したか解らないという。
 モノクロの芸術的な美しさについてここでは別に置くが、かの映画はTV放送がモノクロだった時代のTV界を舞台にしているからモノクロにしたということはさほど勘の良い人でなくても解るはずだ、と思っていたある日、突然僕の頭にひらめいた。
 かの筆者はTVがモノクロであった時代を(少なくとも実体験として)知らないのではないか。カラーしか知らない世代なら、そうした愚問も解らないではない。いくら若い世代とは言え「TVは当初モノクロ放送であった」ということは知っていて当然であるし、映画を真剣に観る人ならその程度の勘が働かないでは困るが、これぞジェネレーション・ギャップなのかと思い知らされた出来事である。

 隔世の感あるいはジェネレーション・ギャップ三題でした。なかなか難しいぞ、若い人の文章を読むのは。

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この記事へのコメント

2008年02月16日 16:13
若い人の言葉で、「普通に面白い」、なんてよく聞きますね。
私の評価(=お薦め度)には、“普通”なんて項目は無いのですが、普通=“ありきたり”という意味でしょうから、お薦め度は★一つか、二つくらいでしょうか。
“ありきたり”を面白いと思うかというと、やはり面白いとは言えないから、「普通に面白い」という言葉自体が私には不思議な言葉ですな。^^

「まあまあ」は、「まずまず」と同じと考えると、これは★二つ、かな。監督の過去の実力から、★三つの場合もあるでしょうね。

そう考えると、まあまあ>普通ということになりますね。
2008年02月16日 19:58
 こんばんは!
>「普通とまあまあ」
 日本語の「比較」の基礎認識が世代間で破綻してきているのは今更ながら驚きますが、彼ら自身の中での「普通」と認識している水準の映画を知りたいものですね。『バイオハザード』とかだと嫌ですが…。
 彼らの「普通」というのは「デートに使ったり、時間つぶしをするには問題ないレベル」という感じなんでしょうかね。
 僕があちこちの映画ブログ(多分若い人のヤツ。)を読んでいて気になるのは、彼らの観た映画についてのコメントが「ストーリー」「CG表現」「派手なシーン」ばかりに気を取られ過ぎていることです。
 映像のかたまりが観客の感情をどう導こうとしているのかという製作者の意図であったり、小道具・背景・音響・映像そのものが与えるメッセージなどについてほとんど言及されていないことにも驚かされます。
 人間には五感というものが備わっていて、映画を観るにはこれらの感覚を研ぎ澄ましていたほうがより多くの情報を得られるはずなのですが、そこまで深く読もうという気もないんでしょうね。
 寒いですなあ…。ではまた!
オカピー
2008年02月17日 00:38
十瑠さん、こんばんは!

>普通に面白い
矛盾する言葉ですよね。
「まっすぐにくねっている」という感じです。^^;
下を略して「普通」と言われると、ダメなのかと思っているとそうでもない。かと言って気に入ったわけでもない。曖昧に断言しているんですな(笑)。恐らく僕の☆3つくらいの感じでしょう。あるいは☆☆☆★くらいか。

「まあまあ」は僕らの<まあまあ>より評価としては低いのでしょう。

参考意見、有難うございました。m(__)m
オカピー
2008年02月17日 01:13
用心棒さん、こんばんは!

 形容詞や副詞の基準が世代間で違うと、コミュニケーション不全に陥りますから、実際困りますね。

 映画を遊園地やお化け屋敷と同じ娯楽として捉えている人々については我々の言葉が届くわけもないので放っておくしかありませんが、ほぼ映画に特化したブログとなると、多少はスクリーンの奥にまで触れてほしいですね。
 僕が一番拘りたいのは【狙いを正確に理解すること】です。映画批評はこれからスタート。作者が喜劇として作っているのに悲劇と捉えて「少しも泣けない」といったレベルのコメントが余りに多いと思われませんか?

 多くの場合CGのレベルなど枝葉末節、最後で良い。
 そうそう、たまに意識的にCGのレベルを落とした作品があるのですが、それを察知できず「CGがしょぼい」。
 他人の感覚に口を挟むのは野暮ですが、理解が逆であれば感覚もへちまもあったものではないということになりますよね。
 フリッツ・ラングの世界の再現を狙ったような「キャプテン・スカイ ワールド・オブ・トゥモロー」などその典型ですが、ご覧になってますか? ラングが好きなのですぐにピンと来ました。
シュエット
2008年02月17日 16:54
お久しぶりです。最近の記事は未見作品が多いので。「グッドナイト&グッドラック」に関してall cinemaで、この素晴らしい映画が何故モノクロを採用したか解らないという。このコメントには驚いた!世代感覚もここまできたか!
「まあまあ」は良くなかったことの婉曲表現で使われているみたいですね。私は「普通」という言葉自体がその人の価値観によってその領域に随分と巾がある、ある意味とても曖昧な言葉のようなので、私はあまり使わない。「普通」ってある意味とても失礼な表現みたいに思う。可もなく不可もなく……。だから「ちょっと良かったかな」「ちょっと不満」という言葉で、自分の感覚により近い表現してますね。
「キャプテン・スカイ ワールド・オブ・トゥモローってフリッツ・ラングの世界の再現を狙った作品なんだ!なんか平べったい映像だなぁって印象もってます。
【狙いを正確に理解すること】これは私は苦手なんで、映画感想ですけど、だから時折ずれてしまったりすることもある。そんな時の心強いお助けマンのP様です。今後ともよろしく(ペコリ)
オカピー
2008年02月18日 01:23
シュエットさん、こんばんは!

>世代感覚
そうなんですよ。吃驚しますよね。

>まあまあ
やはり、不満の婉曲表現か。
僕らが使う時はネガティヴな中にポジティヴさが強く入っている。

>普通
僕も普通「普通」は使いません。(笑)
映画のコメントなら「水準」か「平均」という。より客観的な表現を用いますね。

>キャプテン・スカイ
正しくは「スカイ・キャプテン」でした。失礼!
準モノクロ、スパイの活躍、電波の同心円、どでがい新聞の活字・・・ラングの世界ですね、これは。
勿論ラングと指摘できなくても良いわけですが、クラシックさを狙ったことは解ると思います。
平べったい印象・・・僕も絶賛していないんです。詩情がない、とか何とか文句をつけております。

>私は苦手
そんなことはないと思いますけど。
もしお役に立てるなら、便利に使ってください。^^
2008年02月18日 02:12
 こんばんは!
『スカイ・キャプテン~』は未見ですのでなんとも言えませんが、さっき粗筋を調べてきました。
 ご指摘の通りですと、なんだか『スピオーネ』『メトロポリス』『ドクトル・マブゼ』などを混ぜたような内容のようですね。
 去年の十二月にスカパーでラング長編サイレント特集をやってました。三時間以上あるような非常に長い作品ばかりなので、なかなか見れなくて困っております。
 ではまた!
オカピー
2008年02月18日 22:19
用心棒さん、こんばんは!

>スカイ・キャプテン
 僕は「スピオーネ」を思い出しましたね。
 途中からシャングリラも出てきて、ラングだけでなく色々とクラシックな要素も入ってきますが、CGによるクラシックさなのでちょっと白けてしまうところもありました。
 当時CGについては概ね好評でしたが、一部のブログでかなり批判的でしたので、映画の狙いが掴めていないなと感じたことを思い出したわけです。
 ラングの特集ですか。嬉しい悩みみたいですね。
 この手の企画はWOWOWではなかなか出て来ません。かと言ってスカパー加入も経済的事情で厳しいですねえ。
2008年02月18日 23:35
 こんばんは!
 今日、レンタル屋さんで『スカイ・キャプテン~』をさっそく借りてきました。早めに観て、記事にするつもりです。タイトルがキャプテン・スーパーマーケットみたいだったので、てっきりSFホラーかなんかだと思い、完全にスルーしていました。
 今ぼくはWOWOWとスカパー両方に加入していますが、バラエティに富んだ内容ならWOWOW、専門性ならスカパーですね。WOWOWには質の高いスポーツ(テニスの四大大会、EUROサッカーなど)があり、かなり魅力的ですし、演劇も捨てがたい。
 スカパーなら毎月好きなチャンネルを選ぶという楽しみがありますし、見たいものがなければ、その月はキャンセルすれば良い。どちらも一長一短ありますので、本当に悩まされます。
 しかしおっしゃるとおり、お金がかかってしょうがないので、今年のEUROとウインブルドンが終わったら、いったん解約しようと思います。いまではスカパーでWOWOWチャンネルがあるので、それも選択肢に入れていこうというのが現状です。ではまた!
オカピー
2008年02月19日 22:09
用心棒さん、こんばんは!

「スカイ・キャプテン」については余りご期待されずにご覧ください。物語そのものは今一つかもしれません。

>WOWOW
 ほーっ、用心棒さんもテニスをご覧になりますか。
 最近でこそそれ程ではなくなりましたが、テニスを欠かさずに観ていた時代もありました。
 今年からウィンブルドンもWOWOWになりましたね。NHKは生放送主義につき雨に祟られるウィンブルドンでは苦戦しましたよね。

>スカパーでWOWOW
そういう手もあったか。^^
2008年02月20日 01:03
 こんばんは!
 ぼくは7月以降、スカパーでWOWOWチャンネルに加入するのがほぼ決定的になっています。これで両方被って録画して、尻切れトンボになるというミスもなくなりますし、観たい番組がなければその月はカットしたらいいだけですものね。
 テニスは昔から好きで、経験はないくせに深夜まで四大大会を見るのが当たり前になっていました。マッケンロー、アガシ、コナーズ、ナブラチロワ、グラフ、伊達公子…。みんなそれぞれ好きでした。
 クレイコートのローランギャロス、天候に左右されるウィンブルドンなど場所によりプレースタイルの有利不利が出るのが興味深く、何年観てても飽きないですよ。
 最近ではラファエル・ナダルとマリア・シャラポワというヒール役の二人がお気に入りです。日本では妖精とか言われていますが、海外では彼女は常にヒールですので、判官びいきかもしれませんが、彼らを応援してしまいます。ではまた!
オカピー
2008年02月20日 22:36
用心棒さん、こんばんは!

 あはは。すっかりテニス談議になってしまいましたね。
 僕が最初に見たと記憶しているのは、新人時代のボルグが大ベテランだったローズウォールと戦った試合で、これ以来男子も女子も熱心に観ましたよ。
 顔が似ていると言われたことがある、エドバーグ(エドベリ)の貴族的なプレイも好きでした。
 サンプラスの全盛期が過ぎ、ヒンギスもウィリアムズ姉妹辺りのパワー・テニスに苦戦するようになり始めてから、ちょっと関心が薄くなりましたね。実際には忙しくて観られなくなったわけですが。
 カメラ小僧から守る為に女性のアンダースコートが衰退したせいもあるかも(爆)。
2008年02月21日 01:14
 こんばんは!
>パワー・テニス
 たしかにそうですね。しなやかな動きの美しさが影を潜め、フィジカルが優位なほうが勝利するという悪しき展開はテニスだけではないですね。
 サッカーも野球もすべてがフィジカル第一主義になってしまってから、プレーに品がなくなったような気がします。テニスは四大大会のみ、サッカーはWカップとEUROのみで、各国リーグやチャンピオン・リーグはほとんど観なくなりました。
 僕も一時ヒンギスが劣勢に立った辺り、そしてピエルスに決勝で負けたくらいから熱心には観なくなりました。ウィリアムス姉妹が皮肉なことにフィジカルコンディションの悪さで負けだすと、また観るようになりました。体力勝負だけのテニスは見苦しい。いやはやテニスブログ化させてしまって申し訳ありません。ではまた!
オカピー
2008年02月21日 22:39
用心棒さん、こんばんは!

テニスの話もたまには悪くないです。^^

>ウィリアムス姉妹が皮肉なことにフィジカルコンディションの
>悪さで負けだすと、また観るようになりました。

このコメントには大いに受けました。^^
しかし、最近の女子選手はでかいですねえ。
昔は180cmを超える選手は数えるほどしかいませんでしたが。
トップのエナンが小さいので救われますね。
2008年02月29日 02:20
 こんばんは!
 vivajijiさんとお知り合いになれたのもオカピーさんのおかげですね!
われらが盟友トムさんと連絡が取れなくなっている現状で寂しい思いをしているのですが、新しいお仲間を得たことは嬉しいですよ。
 みなさん映画を愛している方ばかりなので、なんとかみんなで草の根運動をして、映画マニアを増殖させたいですね!
 それとスカパーで来月に夕張映画祭の特集があるので、新しい才能を堪能するつもりです。ではまた!
オカピー
2008年03月01日 00:58
 用心棒さん、こんばんは!

 いや、「類は友を呼ぶ」と言いますから、遅かれ早かれ出会う運命だったのでしょうが、まあ、そう言われますと嬉しいです。
 トムさんについては、本当に寂しく残念ですね。

 viva jijiさんのコメント欄に寄せられた冨田弘嗣さんが「『一般の人がお金を払って観たブログ』の影響は大きい。評論家より力を持ってきた現在、映画芸術を高めることは不可能ではないような」と仰っているのは、まるで悲観論者たる僕や用心棒さんを慰めているようですね。^^

>夕張映画祭の特集
 恐るべしスカパーの感あり、です。

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