映画評「太平洋ひとりぼっち」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1963年日本映画 監督・市川崑
ネタバレあり

ミケランジェロ・アントニオーニが亡くなったばかりなので、「太陽はひとりぼっち」と思われた人には御免なさい。全く関係のない裕ちゃんです。

「太陽の季節」や「狂った果実」の映像感覚は高く評価しているが、石原裕次郎の主演作品は余り食指が動かない。しかし、本作は別。実話ベースである上に、監督が市川崑、脚本が和田夏十と日活臭のないスタッフが作り上げた作品だからである。

画像

冒険家・堀江謙一を一躍有名にした1962年のエンジンなしのヨットによる太平洋横断の模様を映像化したもので、半分くらいは当然堀江に扮する石原裕次郎の独り芝居となる。
 それでは余りに単調なので、リンドバーグの飛行機による大西洋横断模様を描いた「翼よ!あれがパリの灯だ」と同じように回想場面を挿入するという手法を取っている。こうした回想は細切れにすると煩い感じがするのだが、さすがにこの二人のコンビではそんな初歩的な誤りは犯さず、まとめて描いている。

最初はヨットを作った時業者に煩く口を挟んだこと、次は森雅之扮する父親と確執が生じたこと、その次は田中絹代の母親を心配させたこと、妹・浅丘ルリ子は兄を信用している様子、などなど。ヨットに積み込むものを記したメモ書きを延々と映したショットが印象的。

画像

航海中は勿論しけに遭い、鮫とすれ違って危機一髪、水を節約する為にビールでご飯を炊いたら小爆発したり、カメラを構えて心配そうに上を旋回するセスナを追い払う。
 このように挿話が断続的なのも日記らしい感じが出ていて宜しい。

市川監督の持ち味は歯切れの良さで、本作でも幕切れの処理をべたべたさせず、真価を発揮している。
 上映時間は97分、渡航にかかった日数は94日、従って1分に1日かかっていると思うと丁度良いのであります。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

2007年08月05日 09:57
プロフェッサー、こんにちは。
私は先日、「赤いハンカチ」を鑑賞して、正直バカにしていたのですが、思ったよりキチンと映画(画的に)しているのに驚き、興味をもち日活の裕次郎作品を何本かみようと思っているところなんですが、この日活臭のない作品ですか、これそう市川崑なんですよね。私は正直、金田一と天河くらいしかちゃんとは鑑賞していないんですよね。
裕次郎はまあ、役者というより人間的に好きな人物であり、記事を読ませていただいて、市川監督のその真価を発揮している作品ということで、鑑賞したくなりました。
では。
オカピー
2007年08月05日 23:01
イエローストーンさん、こんばんは。

「赤いハンカチ」は舛田利雄でしたか。
観てみれば意外としっかりした作品も少なくないのですが、どうも照れてしまうことが多く、避けてしまうなあ。
市川崑こそ日本一の才人です。尤も、これまで演出的な面で見ることが少なかったので、私も彼の特徴を掴み切っているとは言えないのですけど。^^;

ドラマ的に大きなうねりはないですけど、楽しい作品ですよ。今回は二回目でした。
2007年09月03日 07:08
<石原裕次郎の主演作品は余り食指が動かない
私も同意見です。でもNHKBSで放送していると意地で観てしまいます^^;)。でもこの作品は、今までに観た彼の主演作品では一番良かったです。さすが市川崑監督。大根日活スターを上手く料理してますねー。ラストの終わり方も印象的でした。
オカピー
2007年09月04日 00:48
ぶーすかさん、毎度どうもです。

「太陽の季節」「狂った果実」「嵐を呼ぶ男」の三本はHDDに録ってありますが、まだ再鑑賞していません。このまま捨ててしまうのか?

50年代以降の日活臭というのは、どうも気になってしまいますね。役者の演技も独自ですしね。しかし、若い頃に比べると余り気にならなくなってきたなあ。

石原プロを作ってかなり自由がきくようになってきた当初の作品ですね。別系列の市川監督を使えたのもそんな背景があるわけでしょう。最初観た時は今回以上に喜んでしまった記憶があります。
しつこいですが、一番びっくりしたのは「狂った果実」。56年の日本映画であの感覚とは。トリュフォーが絶賛するのも無理はないであります。
蟷螂の斧
2021年06月10日 02:54
こんばんは。この映画を見た時、とにかく地味な印象を受けました。裕次郎が主演だからもっと派手な場面がたくさん出るかと思ってました。でも最後まで飽きさせない。さすが!市川崑監督です。

>1分に1日かかっていると思うと丁度良いのであります。

そういう発想は僕には全くなかったです。面白いですね。

>シシーとディオンヌは7歳しか違わないので姉妹みたいですね。

才能がある一族と言った感じです。

>「小さな願い」とか「サンホセへの道」とか。

https://www.youtube.com/watch?v=dGZ7DKJ1V6U
ディオンヌ・ワーウィックも歌ってましたね。

オカピー
2021年06月10日 22:04
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>裕次郎が主演だからもっと派手な場面がたくさん出るかと思ってました。
>でも最後まで飽きさせない。さすが!市川崑監督です。

実話ですしね。
初鑑賞の前、市川崑を起用した段階で、アクションには行かないと想像しました。
裕次郎の映画の中で一番面白いかもしれません。

>才能がある一族と言った感じです。

凄いですねえ。
 日本の音楽一家は? 三人以上となると、服部家がありますが、アーティスト系ではないのでねえ。
 アーティストでは、森山良子親子、藤圭子=宇多田ヒカル、森進一=森昌子親子。そんなところでしょうか。
蟷螂の斧
2021年06月11日 03:39
こんばんは。

>「狂った果実」

実生活でもボンボン育ちの石原裕次郎と津川雅彦。夏の逗子海岸でヨットやボートで遊ぶ。優雅な感じです。主題歌も優雅。そしてラストは衝撃的でした。

中平康(1926~1978)とフランソワ・トリュフォー(1932~1984)。共に52年の生涯。裕次郎も52歳で死去。偶然とは言え驚きました。

>森山良子

かまやつひろしと従兄妹でしたっけ?
オカピー
2021年06月11日 22:25
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>中平康(1926~1978)とフランソワ・トリュフォー(1932~1984)。
>共に52年の生涯。裕次郎も52歳で死去。偶然とは言え驚きました。

そうですか!
裕次郎はともかく、中平康を一早く評価したトリュフォーが同じ年齢で亡くなったのは、不思議ですね。

>>森山良子
>かまやつひろしと従兄妹でしたっけ?

そうでしたっ!
この一族は、ワーウィック=ヒューストンに負けないかもしれないですね。
なかなか凄い。
蟷螂の斧
2021年06月13日 05:53
おはようございます。昨日は映画「荒鷲の要塞」と「ときめきに死す」を見ました。前者はストーリーが複雑。後者は不可解な作品でした。

>挿話が断続的なのも日記らしい感じが出ていて宜しい

さすが市川崑監督です。

>ヨットを作った時業者に煩く口を挟んだこと

「翼よ!あれがパリの灯だ」でも業者とのいろいろなやり取りがありました。命懸けの冒険だから当然です。

>ワーウィック=ヒューストンに負けないかも

女優の桃井かおりと結城美栄子が従姉妹というパターンもあります。
NHK土曜ドラマ「男たちの旅路」では万引きをした主婦(結城)を警備員(桃井)が追いかける場面がありました。
オカピー
2021年06月13日 20:23
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>昨日は映画「荒鷲の要塞」と「ときめきに死す」を見ました。
>前者はストーリーが複雑。後者は不可解な作品でした。

「荒鷲の要塞」は保存版所有ですが、未だに再鑑賞できていません。
「ときめきに死す」は、「太陽を盗んだ男」でテロリストに扮した沢田研二が犯罪者づいた作品でしたっけ。全然憶えていないなあ^^;

>女優の桃井かおりと結城美栄子が従姉妹というパターンもあります。

従姉妹というのは案外珍しいですが、親子・兄弟姉妹で俳優というのは、歌手よりぐっと多いデスね。音楽業界は、一つの作品に何十人も出る映画やドラマと違って、厳しいのでしょうね。売れなくなった歌手が俳優に転向するケースも多い。
 歌舞伎など親子で代々受け継ぐわけで、名前が同じなので何代目と言われても素人としてはひどく混乱することになりますよね。

>万引きをした主婦(結城)を警備員(桃井)が追いかける場面がありました

そういうのは、演じていても可笑しいでしょうね^^

この記事へのトラックバック

  • 石原裕次郎「風速40米」「太平洋ひとりぼっち」

    Excerpt: ●風速40米 ★★★ 【NHKBS】蔵原惟繕 監督。石原裕次郎、北原三枝、宇野重吉、出演のサスペンス。といっても裕次郎が主演なのでしっかり彼の歌も披露していて青春ドラマしている。裕次郎&宇野重吉・親.. Weblog: ぶーすかヘッドルーム・ブログ版 racked: 2007-09-03 06:58