映画評「大殺陣 雄呂血」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1966年日本映画 監督・田中徳三
ネタバレあり

日本のサイレント映画は消失してしまって殆ど観ることが出来ない中で、二川文太郎の傑作時代劇「雄呂血」(1925年)は完全な形で残っていて、20年ほど前に観たことがある。これはその40年後のリメイクであるが、登場人物を始め設定の詳細はかなり変っている。変わらないのは終盤に長い殺陣があることである。

画像

信州の小藩・水無月藩の道場を破りに来た岩代藩士を家老の息子が後ろから斬り殺すという事件が発生、藩の用人・加藤嘉は娘婿に決まっている道場の師範代・市川雷蔵に一年の期限で身代わりを依頼する。
 やむなく出奔する羽目になった彼が金を盗まれた後も懸命に堪え忍んで一年後本陣の上州高崎に上ってみれば、加藤は既に亡く、証人となるべき藩士・中谷一郎(上の画像左)の裏切りに遭って、逃げ惑う羽目になる。
 彼を追った加藤の娘・八千草薫は雲助にかどわかされて遊女になり、酔いどれ用心棒に零落した市川と再会するが、その時彼は無数の追っ手に囲まれていることに気付く。

そして始まる大立ち回り。

画像

昨今の作品はアクションを細切れで捉え、そこへクロースアップを入れたりするから、全体がよく掴めないケースが殆ど。格好良いか何だか知らないが、形ばかりで中味がない。翻って、連続的に殆どロングとセミロングで撮られた本作の殺陣を見よ。アクションの流れと全体が良く把握でき、手に汗を握ることは必至だ。スローモーション、コマ落としといった細工もなく、感嘆する他はない。
 野球で一番の魔球は直球であると言われることがあるように、映画で一番力強いのは正攻法の演出であると思う。田中徳三は緩急自在に、さすがの力量を示した。殺陣をやり遂げた市川雷蔵も凄い。

内容は虚無に尽きる。我々の心に残るのは、ただ一人の人間(中谷)の出世欲が数多い人を死に導く空しさである。義理も人情もない世間であるが、それに負けずに生き抜くのが人間だと主人公は行動で示す。そこに映画技術とは別に、大殺陣の迫力の理由が潜んでいるのである。

TV「水戸黄門」の弥七も昔は卑怯者でござったのじゃ。

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック

  • 映画評「無限の住人」

    Excerpt: ☆☆★(5点/10点満点中) 2017年日本映画 監督・三池崇史 ネタバレあり Weblog: プロフェッサー・オカピーの部屋[別館] racked: 2018-06-03 08:35