映画評「眠狂四郎勝負」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1964年日本映画 監督・三隅研次
ネタバレあり

シリーズ第二作の監督は我がご贔屓・三隅研次。三本演出したうちの最初の作品である。

画像

眠狂四郎が子供の仇討ちに協力した時知り合った老人(加藤嘉)の襲われる現場に遭遇、老人が倹約令を遂行している勘定奉行であると気付く。狙ったのは贅沢を禁じられた将軍・家斉のわがまま娘・高姫(久保菜穂子)の刺客だ。
 狂四郎は頑固な老人が気に入り、勝手に警護する。商売のしづらくなった札差・米問屋から賄賂を貰った要職・白鳥主膳(須賀不二男)も刺客を派遣、さらに西洋人の夫を人質に取られた占い師・采女(藤村志保)が奉行を守る狂四郎を撹乱する役目を負って絡んで来る。

命を狙われる勘定奉行を狂四郎が守るというだけの単純な物語だが、色々な思惑のある刺客を出入りさせて単調さを回避、その二人のユニークな信頼関係がとぼけた味わいを生み出している。
 基本的にはそう理解して良いのだが、頑固ながら人情に溢れる勘定奉行に扮した加藤嘉が適役だったか否か微妙な印象あり。この役者の個性からして頑固な農民ならいざ知らず、いかに高潔の士とは言えど高級武士はどうも似合わない。その一方で、極めて庶民的な高級武士という愉快なキャラクターを作り出したとも言える。とにかく、二人の交流は面白いとは思うものの満点とは感じないのだ。

市川雷蔵演ずる狂四郎の人物像が、虚無的でありながら実はかなりの人情家ではないかと思わせる部分が他の作品より目立ち、珍しくも温かみが残る。後味は大変良い。

三隅監督はスクリーンの左右に大写しを配置する様式美で痺れさせてくれるのだが、人物の動かし方も上手いのでこういう出入りの激しい作品には強く、頗るタイトに一気呵成に展開させている。
 具体的には、鑓使いの刺客を無理矢理橋の下に連れて行きその鑓で高姫の籠を突く場面は圧巻と言うべし。風呂に浸かった狂四郎の逆襲もきびきびして見事。

画像

様式美 だけじゃないよと 三隅言い

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

優一郎
2007年05月20日 05:37
本作を観ながら、今回のプロフェッサーの画像は 「風呂場」 か 「ラストの大立ち回り」 だろうと予想しておりました!(笑)
映画的なダイナミズムに加え、雷蔵の引き締まった肉体美が見られる風呂場の殺陣が、本作の白眉だと私も思います。
ここのシーンだけ妻に見せたのは、川に飛び込む藤村志保に同じ(笑)

三隅らしさは最後の大立ち回りでの円月殺法。剣が下段の位置では、思い切ったローアングルで雷蔵の下半身だけを捉え、グルリを遠望して収めるトリミング。剣が上段に上がると、画面中央に剣だけを配し、その周囲を収めるハイアングルからの撮影。ここも見事でした。

加藤嘉については 「必殺仕掛人」(TVシリーズ)にて「空手の達人(悪役)」を演じるというミスキャスティングを観ているので、むしろ本作は安心をした部類です(笑)
ちなみに、その回は三隅演出ではありませんでしたが、三隅演出の回はスタイリッシュな構図が多いので、観ている途中で判明することも多いです。

実は狂四郎が人情家だった・・・というより 「男が男に惚れる」 といった表現が、本作では適切ではあるまいか・・・なんて思います♪
オカピー
2007年05月21日 02:48
優一郎さん

三隅監督は、スタイリッシュさが話の運びに生きているので、素晴らしいですよね。観るごとにファンになるなあ。
最後の大立ち回りでは、自由自在に撮影ポジションを変えて見事なものでしたね。半月を描くまで前面から撮り、相手の顔のアップを挟み、後半の半月を背面から撮る、という一連のショットも面白いです。

鑓の場面はどうでした? あの場面では関連する人物がほぼ一同に会すのですが、それを2,3分のうちに済ませてしまう。最初に藤村志保が少し映り、最後には別の刺客が遠くに見える、といった具合に。

>人情家
奉行との関係ではそういう表現も適切ですが、私は序盤の子供への接し方、高田美和に見せる笑顔なども含めましたので、かかる表現になったのであります(笑)。
優一郎
2007年05月22日 03:50
こんばんは^^
確かに確かに、あの鑓のシーンは素晴らしかったです。
晴れ着の太腿の間からズン!っと突き出す鑓先に 「おおっ!」 とのけぞり、感動いたしました。かように三隅監督は映像的な気取りが単なる気取りに終わらず、有機的に動くから面白いのですよね。
また、あの高姫という淫乱強欲な女の設定が、そもそも私は好きでして。狂四郎の体の自由を奪っての逆セクハラにも、なぜかしら血が騒いだのでした(笑)

この頃は、市川崑に鈴木清順にと、巨匠の作品がシリーズで放映されますね。市川崑作品はほぼ観ているのですが、鈴木清順は未見作も多く食指が動かないわけでもないのですが・・・さりとて、昔の日活アクションを観る気も起こらず^^;
プロフェッサーの評価待ちで、観るかどうかを決めようと考えておりました(笑)
一応「殺しの烙印」だけは観て、後は録画を消そうか・・・なんて思っております^^;
オカピー
2007年05月22日 17:18
優一郎さん

ご賛同戴き有難うございます。
仰るとおりで、スタイルは結局展開に関わるから意味があるわけで、スタイルだけが格好良くても物語を生かさねば大した意味はないと思っております。いつかは書かねばならぬ「第三の男」は究極で、映像の為に物語がある、そんな映画です。

>鈴木清順
基本的には今回放映されるのは日活アクションで、そう大したものはないのですが、絵はさすがに魅せます。しかし、脚本は大半が弱体で、やはり大映と日活ではレベルが違うなあと思わざるを得ません。
スタイリッシュなだけでも良いと仰る方には、清順はなかなか面白い監督と思いますよ。「けんかえれじい」辺りから目立ち始めた作家性が「殺しの烙印」で自爆。
折角録ったのでしたら、ざっと御覧になったら如何ですか。「花と怒涛」などは行けるかもしれませんよ。松原千恵子が綺麗ですし。
「殺しの烙印」は後学の為に必見。リメイクよりは大分良いですよ(笑)。

この記事へのトラックバック