映画評「イントゥ・ザ・サン」

☆☆★(5点/10点満点中)
2005年アメリカ映画 監督ミンク
ネタバレあり

日本を舞台にした捜査ものと言えば、1974年「ザ・ヤクザ」、89年「ブラック・レイン」が佳作として印象に残っているが、そこまでは行かない。監督が上記二作に比べると力不足なのが歴然。

東京で都知事候補が中国人らしきグループに暗殺される。テロではないかと危ぶむFBIに捜査を指示された日本通の捜査官スティーヴン・シーガルが、中国人マフィアとつるんだ麻薬取引で急成長した大沢としおのグループに目を付ける。

情報屋でもあるクラブのママ(山口佳奈子)とのロマンスを別にすると、全編殆ど出入り場面なのだが、ミンクなるふざけた名前の監督(予想通りミュージック・クリップ出身らしい)の演出力が弱い。
 お話が交通整理不足なのはシーガルを含めた脚本の三人組に帰するとして、挌闘をセミ・クロースで捉えることが多くて全体像を掴みにくいなど、昨日の「SPIRIT」に比べると一つ一つのアクションの捉えが甘くて迫力不足である。

最近のミュージッククリップやCM出身の若手に多いのだが、カットが細切れ的で映画的な場面が構成できず、理解できないカット編成が目立つ。
 例えば、相棒というか部下になったマシュー・デーヴィスが築地の魚市場を踏査する一幕では、望遠カメラを持って遠望する彼を捉える。常識なら次は彼の主観ショットになるのだが、本作では何と彼自身が魚市場にいるロングショットになる。これは映画の文法をまるで知らない素人の構成である。
 相棒同士の二人がクラブにいる場面では意味もないのに細かいカット割りをする。サスペンス映画における細かいカット割りは登場人物の片方若しくは両方が何かを画策している場面に使われるべきであり、そうでないと観客に無用な考えを起こす。

叩き上げの映画人(助監督)の中にきちんと構成できる才能もいるはずなので彼らに最初にチャンスを与えるべきだが、それはともかく捜査もの或いは犯罪ものらしいグルーミーなムードはそれなりに出ている。従って、星もまずまず。

実際に日本で過ごしたことのあるシーガルが巧みな大阪弁を操るのも面白く、日本及び日本人の描写にも不都合は殆どない。ただ、日本語で話すべきところが英語だったり些か一貫性がない印象はある。

この記事へのコメント

カカト
2007年07月02日 21:59
こんばんは。
コメントありがとうございました。
コメントの中にリンクしていただいたので、トラックバックは返してくださらなくてもいいですよー。
いつもお手数かけます。

ミュージッククリップ上がりの人が映画の監督が出来ちゃうほど、きちんと地位が確立してるんですね。
日本では「キャシャーン」がそうでしょうか?観てませんが・・。

マイケルジャクソンがミュージッククリップを「ショートフィルム」と呼んでから、勘違いする人が増えたのかもしれませんねぇ。
オカピー
2007年07月03日 03:16
カカトさん、こんばんは。

いや、地位が上がったと言うより、大衆受けする映像を作るという理由だけでがっちりきっちりしっかりした映画を作れる才能を無視しているんですよ。
何十年も映画を観ている人間にとっては、実に寒々しい作品しか作れないのですが。
カカトさんのようにお若くても古い映画をよく観る方(かた)は解ると思うのですが、今の作品は物を描くということを余りしないんです。
とにかくイメージだけ。格好よければ、そのアクションが具体的にどういうものであるかなど作る方(ほう)も観る方も知ったことではないのでしょう。

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  • <イントゥ・ザ・サン> 

    Excerpt: 2005年 アメリカ 98分 原題 Into the Sun 監督 ミンク 原案 スティーヴン・セガール  ジョー・ハルピン 脚本 スティーヴン・セガール  ジョー・ハルピン  トレヴァー・ミ.. Weblog: 楽蜻庵別館 racked: 2007-05-23 15:09
  • 「イントゥ・ザ・サン」を観ました

    Excerpt: 「イントゥ・ザ・サン」 2005年 日本・アメリカ 監督 ミンク 出演 スティーヴン・セガール    大沢たかお あらすじ  不法入国者の一掃を掲げ選挙戦に乗り出した都知事候補が、.. Weblog: 私が観た映画 racked: 2007-07-02 21:54