映画評「男はつらいよ ぼくの伯父さん」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1989年日本映画 監督・山田洋次
ネタバレあり

「男はつらいよ」シリーズは第1作を除いてテーマ【映画 あ行】から省きましたので、テーマ【山田洋次】にて検索をお願い致します。

シリーズ第42作は、45作まで続く【ごくみシリーズ】第1作であり、ここから最終作まで実質的な主人公は満男(吉岡秀隆)となっている。

浪人中の満男は転校していった後輩・泉(後藤久美子)から届いた手紙が気になって勉強が手に付かず荒れる。そこへ【ぼくの伯父さん】こと寅さんが帰ってきて、悩み相談をするのだが、未成年の満男に酒を飲ましたことから周囲の反応は頗る悪い。

ここが肝要。常識に縛られている家族たちには寅さんの天衣無縫な人生哲学が理解出来ず灯台下暗し、観客は満男と同じギャップを感じことになる。一番頼もしい相談相手はやはり寅さんなのである。

満男はオートバイに跨って泉のいるという名古屋を訪れるが、母親(夏木マリ)から佐賀の妹(壇ふみ)夫婦の家で暮らしていると聞き、佐賀まで駆けつける。
 到着前、転倒した彼を手助けしてくれたベテラン・ライダー(笹野高史)がホテルでとんでもない姿を見せるお笑いの後、佐賀のホテルで相部屋になったのは何と伯父さん。人生経験の乏しい少年にとってこれほど強い味方はいない。昔から寅さんは家族以外には実に素晴らしいアドヴァイザーだったし、まして近年彼は達観した境地にあるようにすら感じさせる深みがあるので、自分のことのように嬉しくなりましたです。

翌日連れ立って泉の住む旧家を訪れ、青春模様を展開するわけだが、学校の教師をしているこの家の若主人(尾藤イサオ)が常識の権化のようなつまらない男で、山田洋次が「学校」シリーズでも示した学校教育批判が垣間見える。

相変わらずスムーズな展開に感心させられるが、何故42作からこのような主人公交替を見せたのか。
 当時はよく解らなかったが、今となれば半ば明らかである。渥美清の体調が思わしくなく、出演場面を減らさざるを得なくなったのであろう。映画は上出来だが、悲しみの始まりである。

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この記事へのコメント

ぶーすか
2006年12月12日 15:53
「学校」まだ観てないのですが、なるほど…あの石頭教師はそういうつながりからの「学校教育批判」だったんですね…。
オカピー
2006年12月13日 02:19
ぶーすかさん、こんばんは。
「学校」シリーズは1と4をお奨め致します。しかし、順番通り全て観るのが良いでしょう。話の関連性は全くないですが、4の感銘はそれによって増すと思います。

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