プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]

アクセスカウンタ

zoom RSS 映画評「雨月物語」

<<   作成日時 : 2006/09/08 14:05   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 4 / コメント 4

☆☆☆☆★(9点/10点満点中)
1953年日本映画 監督・溝口健二
ネタバレあり

今回のNHK−BS2の特集からは洩れた「西鶴一代女」(国際賞)に続いてヴェネチア映画祭で受賞(銀獅子賞)した溝口健二の代表作。恐らく映画ファンに投票させたらこれが一番人気のある溝口作品ということになると思う。

原作は未だに読むことができないでいる上田秋成の読本「雨月物語」(1776年発表)の二編「朝芽が宿」「蛇性の淫」で、それをベースにした川口松太郎の現代向け翻案に川口自身と依田義賢が映画用に脚色している。

舞台は戦国時代の琵琶湖周辺。
 陶器が良い儲けになることを知った妻子ある貧農・源十郎(森雅之)が妹(水戸光子)、その夫である藤兵衛(小沢栄)と商品を長浜まで運ぼうとする。狭霧の中を船が進む場面の美しいことよ!
 やがて戦乱を避けて目的に辿り着いた三人は順調に売り捌くが、藤兵衛は侍としての立身出世の野心を捨て切れずに武具を買い、源十郎は臈たけた姫(京マチ子)と出会い骨抜きにされる。
 琵琶湖湖畔で二人が戯れるショットの構図には、高校2年で初めて出会った時圧倒され、「あれは凄いね」と興奮して友人と話合ったことを思い出す。何度見ても幽玄で感動を誘うショットである。

やがて源十郎は姫の正体が幽霊であったことを知り、ほうほうの体で故郷に戻った時妻(田中絹代)は亡き人の数に入っていて、一方藤兵衛も女郎に零落した妻と再会して夢から覚める。

身分不相応な夢を見ることを戒めるような内容になっているが、ジャン=リュック・ゴダールをして「涙が出て来る」と言わしめた水墨画のように美しい宮川一夫の撮影が圧巻である。
 物語にも勿論凄みがあるのだが、源十郎が姫の死霊から解き放たれた後再び妻の亡霊に出会うという設定にはくどい感じがあり、些か気に入らない。その後亡妻の声を入れたのも暑苦しい印象を残す。

その他は満点と言って良く、いつも溝口作品では女優陣に比べて影が薄い男優陣も大いに宜しい。特に森雅之の魅力は格別。京マチ子の壮絶な美しさ。「羅生門」の強力コンビの再現でもあった。

テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(4件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
「雨月物語」「ある映画監督の生涯」
●雨月物語 ★★★★★ 【NHKBS】没後50年 溝口健二特集 マイ・ベスト邦画の頂点!溝口健二の名作。戦国時代、二組の夫婦が欲にかられて身を滅ぼす様子を描いた絵巻。能面のように美しく妖しい美女を京マチ子が演じている。 ●ある映画監督の生涯 ★★★ 【NHKBS】没後50年 溝口健二特集 新藤兼人監督が溝口作品にかかわった39人の俳優やスタッフたちに自らインタビューしたドキュメント作品。その生立ちから亡くなるまでと、作品を紹介。巨匠溝口健二の素顔にせまる。 ※詳しい感想はそれぞれのリ... ...続きを見る
ぶーすかヘッドルーム・ブログ版
2006/09/08 15:50
『雨月物語』(1953) 光と影の織り成す死の物語。溝口健二監督のトーキー時代の代表作のひとつ。
 黒澤監督が『羅生門』によってベネチア映画祭の金獅子賞を取った翌年に、同じ大映から製作された溝口健二監督の3年連続ベネチア映画祭受賞作品となったうちの一本です(1952年の『西鶴一代女』の監督賞、1953年の『雨月物語』、1954年の『山椒大夫』での銀獅子賞)。 ...続きを見る
良い映画を褒める会。
2006/09/09 02:16
雨月物語@フィルムセンター
田舎の百姓暮らしは常に苦しい。時は戦乱で治安も悪い。金が人を変えると宮木は言う。その夫の源十郎は陶器で商いを始め、それが当たって執着心が出た。源十郎の妹・阿浜も今の生活に満足していない。阿浜の夫・藤兵衛は都で武士となって一旗上げることを夢見ていた。宮木の憂いは ...続きを見る
ソウウツおかげでFLASHBACK現象
2006/12/29 20:55
『雨月物語』この映画を見て!
第270回『雨月物語』  今回紹介する作品は日本映画界の巨匠・溝口健二の代表作『雨月物語』です。本作品は江戸時代の読本作家であった上田秋成の怪異小説『雨月物語』の中の「浅茅が宿」と「蛇性の婬」の2編を脚色して製作されています。日本を代表するカメラマン・宮川一夫が撮影したモノクロ映像は息を呑むほど美しく、欲望に目の眩んだ ...続きを見る
オン・ザ・ブリッジ
2009/09/06 15:38

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
「近松物語」ももちろん好きですが、やはりこれが私のベスト1です。ゴダールじゃないけど、見る度にその美しさに泣けてしまいます。
ぶーすか
2006/09/08 16:10
ぶーすかさん、こんばんは。
「雨月」と「近松」では完成度としては僅差と思われますので、好みの差となりますね。その時々の気分でも変わりますし。
本文でも書いたように、映像の「雨月」、物語の「近松」という印象は基本的に変わりません。
オカピー
2006/09/08 23:45
オカピーさんこんばんは。先日、上映時間を間違えて「西鶴一代女」を見逃してしまいました。いまだにショックですが、それから一週間後に本作はしかと時間を調べて鑑賞に至りました。結構早めに行ったつもりだったものの、かなりの混みようで良い席が取れませんでしたが。溝口人気はやはりすごい。宮川カメラもまたすごい。生半可な気持ちで鑑賞に臨んではいけない気がしました。
現象
2006/12/29 20:59
現象さん、こんばんは。
学生時代には毎日のように行っていたフィルムセンターですが、それほど混んでいるとは用心棒さんが嘆いていた溝口人気も捨てたものではないようですね。

黒澤明が完全主義で有名ですが、溝口のそれも凄まじかったようで、特に脚本家はきつかったでしょう。自分で余りお書きにならない人でしたから。でも、そうしないとこれだけ鬼気迫る作品は残せませんよね。
オカピー
2006/12/30 03:15

コメントする help

ニックネーム
本 文
映画評「雨月物語」 プロフェッサー・オカピーの部屋[別館]/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる