映画評「新・喜びも悲しみの幾年月」

☆☆☆(6点/10点満点中)
1986年日本映画 監督・木下恵介
ネタバレあり

「喜びも悲しみも幾年月」は1957年に木下恵介が灯台守夫婦の艱難辛苦と喜怒哀楽を描いた超大作だったが、彼らの子供世代に当たる灯台守夫婦の13年間を描いたのがこの作品。

昭和48年、海上保安庁勤めを始めた青年・中井貴一が、若狭湾の押回鼻灯台に加藤剛の一家を訪れる。主人公はこの灯台守と妻・大原麗子で、女・男・男の三児があるが、3、4年に一度引越しするのが彼らの生活の常である。

以降伊豆の石廊崎、八丈島、函館、長崎・五島列島と転々とするわけだが、ご当地映画的に各地の風景をたっぷり取込んだ演出も魅力の一つとなる。とは言え、1986年製作ということを考えると暫くは凡庸の域を出ない。
 
が、57年作では絡むことのなかった老父を登場させたことがホームドラマとして一層味わい深いものにし、凡作という不名誉を回避せしめた。
 戦争未亡人と再婚したものの面倒を見てもらえず、悪いと思いながら息子に頼り続ける老父という設定で、演ずる植木等が実に宜しく、孝行息子に感謝する場面など胸が熱くなる。

中井と結婚する娘を始め子供三人、灯台仲間だった青年・田中健と後にその妻となる女性旅行者・紺野美沙子についてもかなりの尺を割いて描かれ、前作に比べると現在的な視点が加わっている。その一方で、小津安二郎が戦中から主題としてきた家族の崩壊とは全く逆の立場を木下が最後まで貫き通したのは注目したい。

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