映画評「マルサの女」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1987年日本映画 監督・伊丹十三
ネタバレあり

伊丹十三の作品はマニュアル映画と呼称するのがふさわしいが、この作品から【現代用語の基礎知識もの】とも言いたくなる一連の社会派娯楽作品を発表し続けることになる。その印象も手伝って初鑑賞当時は前2作とは作風がかなり変わった印象を持ったのだが、こうして見直すとそうでもない。

税務署職員・宮本信子はラブホテル経営者・山崎努に詰め寄るが、敵もさるもの、愛人に印鑑を預けるなどして足を出さない。やがて、その敏腕ぶりが認められ国税局査察部通称マルサに抜擢、上司・津川雅彦や同僚・大地康雄などと抜群のコンビネーションを発揮して、山崎の自宅に攻め込んでいく。

ハリウッド・テイストの娯楽派社会劇は伊丹以前には全くなかったと言っても良い。脱税王とマルサの駆け引きはスリリングだが、ところどころにユーモアをはさんで快調に展開。そのセンスは少なくとも当時の邦画では抜きん出ていたし、今見ても実に面白い。

山崎の子供を巡る挿話は厳密に言えば不要であるが、アクセントになっているので無駄とまでは言い切れない。

本多俊之の手になる主題曲も流行って今でも報道番組などで時々使われているね。

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この記事へのコメント

2007年02月10日 22:07
はじめまして。
同じく映画を愛する者ですので、よろしくお願いします。

伊丹監督の映画は芸術性が低いですが、その代わりに現実との距離が近いですね。娯楽性が高く、また社会性も兼ね備えているのではないでしょうか。なんて言ったらおこられちゃうんだろうな。
個人的に簿記の勉強をしています。そういう知識が無くても十分に面白いです。しかし、ちょっと会計の知識があるともう少し違った受け止め方が出来るようになりました。とても情報が詰まっていて、全てを受け止めるにはある程度の勉強が必要なんだなと思います。簿記の初心者としては教わる所が大きい映画でした。

2よりも1の方が面白いですね。本物のマルサ(税理士)さんが、映画作りに協力しているそうです。もっと会計の力をつけたいのですが、この映画は参考になります。
オカピー
2007年02月11日 02:02
ピーターキャットさん、初めまして。

仰るとおりなのですが、娯楽映画も純粋さを増していくと芸術映画になるということはあります。尤もこの作品のように手が込むと、それは難しいんですけど(笑)。商業映画は面白ければ良い。芸術映画と言われる映画も見方によっては娯楽性があるものが多くて、それはそれで面白いですし。

簿記をご勉強ちゅうですか。頑張って下さいね。

今後とも宜しくお願い致します。
ぶーすか
2008年04月12日 16:48
TB有難うございます。商業的にも成功した社会派娯楽作品の傑作ですねー。あのテーマ曲が強烈で、しばらく頭から離れませんでした。その音楽に乗って踊る山崎努にも爆笑でした^^)。
オカピー
2008年04月13日 08:51
ぶーすかさん、こんばんは!

日本の社会派映画は人間関係を基本とするどろどろしたものが多かったわけですが、本作に始まる「女」シリーズのエンターテインメント寄りの姿勢は抜群でしたね。
山崎努の悪役の扱いも面白かった。
トム(Tom5k)
2012年11月13日 21:25
こんばんは、久しぶりに観ました。
何度観ても良い映画は良いですねえ。公開時、まだ社会人になったばかりの頃、主人公が刑事や教師でない、わりと一般の公務員(査察部局は専門職かもしれませんが、初めはただの税務署員)であることが、珍しいなあと思って見に行った記憶があります。映画の主人公達(公務員)は世間のイメージ通りかっこ悪いんですが、スト-リーの展開のなかでは、こんなに恰好良く描かれていて、若いながら本当の恰好良さとは見かけではないのだと感動していましたよ。
同時期に観た「アンタッチャブル」も銃所持の許可は下りているものの財務官僚が主人公でした。
バブル期に青春していたトム(Tom5k)は、こんな映画の見方をしていました(笑)。
それにしても、うまく創ってある映画ですよね。伊丹監督は何をどのように表現したら、最も説得力があるのかを知っていた天才だったのだと思います。強烈だったのは、ギリヤーク尼ヶ崎の宝くじの男でした。こんなワンカットににも伊丹監督の天才がにじみ出ていたと思います。
では、また。
オカピー
2012年11月13日 22:42
トムさん、こんにちは。

何も悪いこともしていないのに、昨年純粋に親の為にしてやったことが贈与税支払いに該当すると知って慌てて税務署に行き、談判した結果、数百万円の税金を払わないで済みました。
が、僕の精神に傷を残し、今でも心療内科へ通う羽目になっております。本年父親が死にましたが、我が家の試算では相続税を払う額にまで達しません。しかし、前のことが別の税務署員にまた調べられるのではないかという恐怖が払拭できていない為、あと半年ほど薬と医者の御世話になる必要がありそうです。それが無事終れば、僕の精神も昨年以前の状態にほぼ戻るはずです。

というわけで、この映画をもう一度観るとしたら大分後になるでしょう^^;
もっと軽い気持ちでこの作品について語れたら良かったのですけど。

間違いなく伊丹監督は天才でしたね。
父親の血を確かに引き継いでいたのに、映画監督デビューが遅かったのは残念と言うべきでしょうか。
機が熟したと思って作ったであろうデビュー作「お葬式」には当時の映画関係者は腰を抜かしましたね。僕は、万作の息子は万作と同じくらい天才だと思い、感心しました。
最期が残念すぎます。

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