映画評「青春の夢いまいづこ」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1932年日本映画 監督・小津安二郎
ネタバレあり

今となっては観られるものが少ないが、小津安二郎も初期には青春ロマンスも随分作っている。日本でのサイレント末期に当たる1932年に発表されたこのロマンスは実に清々しい作品である。昭和恐慌の影をちらつかせ、完成度も高い。

友人達と遊びまわり学生生活を謳歌していた大学生・江田宇礼雄が父親の急死で卒業を待たず大会社の社長になる。就職難の折行き場のない悪友三人を入社させる一方、副社長である叔父の薦める縁談をのらりくらりとかわしていた彼は大学の傍のベーカリーの娘・田中絹代と結婚する気になるが、その前に悪友の一人だが実に控えめな斎藤達雄と彼女が結婚することになったと知らされ、激怒する。友が彼女を奪ったことにではなく、社員である彼が社長である自分にへりくだって譲ろうとしたことに、である。友はしたたかに打擲された後新婚旅行に出て行く。

この頃の小津作品の殆どに反映されているのが世界恐慌に端を発する昭和恐慌で、この作品でも軽くではあるが影を及ぼしている。しかし、特に重要視する必要はない。

さて、主人公は、部下となった悪友たちが平身低頭してへりくだる様が気に入らず、それが恋人事件と結びつき、終盤の激しい打擲の場面となる。結局は爽やかな友情とロマンスの物語。調子の良い部分もあるが、後味は宜しい。

但し、同じ年の「生れてはみたけれど」で立派な父親役を演ずる斎藤達雄の学生姿には笑ってしまった。この時代にはこういう無理が相当まかり通ったのである。

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