映画評「風の中の牝鶏」

☆☆☆★(7点/10点満点中)
1948年日本映画 監督・小津安二郎
ネタバレあり

戦後の小津安二郎の作品の中では珍しく劇的要素のある作品である。メロドラマと言っても良い。

終戦より数ヵ月後の東京、夫が復員していない時子(田中絹代)は、新婚時代の衣服などを売りさばいてまだ幼い息子を養育しているが、ある時息子が急病に倒れる。すばやい対応で回復したものの高額な治療費を賄う為に知り合いを通じてある宿屋の一間で見知らぬ男の相手を務める。はっきり言えば売春であるが、間もなく夫(佐野周二)が復員する。
 息子が病気から回復したばかりと知ると治療費をどう工面したか訊き、正直に答えた妻に激怒するが、翌日客のふりをして宿屋を訪れ、素人女性の売春の実態を知る。偶々彼の相手に選ばれた妙齢美人の身の上話を聞き同情心を禁じえず仕事を世話する一方、結局妻も許す。

小津安二郎の映画で売春とは意外であるが、直接的な描写がないのは品が良く好ましい。ヒロインが階段から突き落とされる場面の激しさも小津らしからぬが、戦後の庶民の貧しい生活と社会の混乱を描こうとした狙いは分らないことはないものの、些か皮相的すぎはしないか。
 たまたま遭った売春女性に優しく出来る夫が何故その場で妻を許すことが出来なかったのか。妻と他人の差と分析して済ますには割り切れないものが残る。感動的に映る幕切れもどうも取ってつけたような印象が強い。

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  • 「風の中の牝鶏」

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