映画評「三十九夜」

☆☆☆☆☆(10点/10点満点中)
1935年イギリス映画 監督アルフレッド・ヒッチコック
ネタバレあり

アルフレッド・ヒッチコック長編第18作。
 ヒッチコックの傑作群の中でも最も完成度が高いと言っても良い初期の傑作である。再鑑賞作品。

カナダからロンドンを訪れたばかりのロバート・ドーナットが何でも記憶しているというミスター・メモリーのショーを見ている最中にトラブルが発生、美人ルーシー・マンハイムをアパートの自室に匿うが、翌朝彼女は死体で発見され、彼が犯人として追われる羽目になる。前夜彼女から告げられたスコットランドへ逃避行と真相探しを兼ね出発する。

というお話で、列車で金髪美人マデリーン・キャロルと交錯して、後半彼女と文字通り行動を共にする羽目になるといった展開は、「逃走迷路」「北北西に進路を取れ」のベースとなる物語と言える。着想、伏線、スピード感共に抜群で感心するしかないが、特にミスター・メモリーのジレンマが心に残る。詳細は伏せるが、これは何度観てもアイデアに脱帽するほかない。

最近「昔の映画はテンポが遅い」という話を耳にすることが多いが、実はまるで逆で、この作品を観れば、そうした意見が全く根拠のない幻想であることがお分かりになると思う。最近の映画はカットを短くする一方で場面は長く、最終的にテンポは遅くなっているのである。

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この記事へのコメント

モカ
2019年12月31日 16:10
こんにちは。

今日は朝から餅つき、おせち作りと頑張りました。あぁ、しんど、というわけでちょっと一息ついて、忙中閑ありのコーヒータイムでございます。

このお話はおっしゃる通りテンポが良いですが、このテンポの良さは何というか天才的に口から出まかせホラ話ができる人の語り口ですね。
細かいツッコミは野暮天のすることと言わんばかりの突っ走りぶりが楽しいですが、先日3回目くらいの再鑑賞では、さすがにドーナットの顔ばっかりみていました。戦前の主役男優ってアイメイクがきついですね~

和田夏十のペンネームの由来だというRドーナット(ドーナットの複数形がドーナッツですか?)ですが私も好きなんです。
学生の頃に読んだクローニンの「城砦」の映画があると知ってビデオで観ることができたのが最初の出会いです。
チップス先生も良かったですね。
あまり丈夫な方ではなかったようで、早くに引退して亡くなってしまったようで、残念です。

では、良いお年をお迎えください。(ライ麦畑のホールデンにバカにされそうな社交辞令でございますが、もう充分に大人同士のご挨拶でいう事で・・・)
オカピー
2019年12月31日 22:36
モカさん、こんにちは。

>朝から餅つき
そりゃ精が出ますね。当方、長らく既製品で済ませています。

>天才的に口から出まかせホラ話ができる人の語り口ですね。
そりゃヒッチですから。

>和田夏十のペンネームの由来だというRドーナット
そうでしたか。
 夫君市川崑のペンネーム久里子亭がクリスティから来ているのは知っていましたが。

>クローニンの「城砦」、チップス先生
どちらも好きでした。
 チップス先生は戦後のミュージカル版も好きですが、滋味溢れる戦前の味わいが捨てがたいですね。

そちらも良いお年をお迎えください。
来年もよろしくお願い致します。

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