映画評「ドッグヴィル」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2003年デンマーク映画 監督ラース・フォン・トリアー
ネタバレあり

ドグマ95の主唱者ラース・フォン・トリアーの野心作で、実験精神がいっぱい。ドグマ95の唱えていることは本来の映画のあり方を否定しているようで嫌いなのだが、面白い映画が増えてきているので見直し始めている。
 まず何が実験的かと言えば、スタジオの中に白い線を引いただけの村を舞台として3時間近く描いていることである。演劇を見ていると思えば何ということはないのだが、一応びっくり。しかし、感心したのはそこではなく、物語の面白さである。

米国の保守的な村ドッグヴィルに一人の美女ニコール・キッドマンがギャングから逃れ逃れて辿り着く。暫くして車で現れたギャングは作家志望の若者ポール・ベタニーに名刺を渡して去るが、村人の意識を変えたい若者は集会で説得して彼女を受け入れるように説得する。
 その為に彼女は村人の為に働くようになり、敢えてしなくてもよい仕事に綺麗な手を荒らしていく彼女。村人は彼女を受け入れるが決して心からは感謝はせず、やがて中年男が彼女を強姦。彼女の誘惑したと誤解した村人は彼女を責め、ベタニーは彼女を逃そうとするが失敗、彼女は重い石を付けられた奴隷状態になってしまう。彼女への愛情より作家としての成功への野心に負けた彼は名刺の番号に電話をかける。

彼女が奴隷的な扱いを受ける辺りに至ると、トリアーがどんな幕切れを用意しているか事前に見当が付いた。全体の聖書的な話の作りから「ソドムとゴモラ」の結末が頭に浮かんだのである。果たして、ギャングのボスは彼女の実の父親であり、意見の相違で逃げていた彼女が考えた末に権力の譲渡を受け、ドッグヴィルに火を放ち、全員殺してしまう。

復讐のように見えるが、善意の主であった彼女は神若しくは神の使いとも考えられる。神がこの村は残す価値がないと判断したわけである。
 これだけの話を考えるトリアーも大した作家であると思うが、これが通常の景色の中で行われたらどういう印象が持ったであろうか。恐らくこの舞台的なスタイルだからこそ、こうした寓話的テーマが素直に受け入れることができるのかもしれない。

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この記事へのコメント

2005年10月29日 01:06
<ドッグヴィル>はだいぶ前に見たので細かいことは覚えていないのですが、終わり近くの“この村は残す価値がない”というような言葉が忘れられなくて、その考え方がこわいと思ったのは覚えています。
でもそれが「ソドムとゴモラ」だというのには、考えが及びませんでした。この映画のメイキングも興味深かったです。
カゴメ
2005年11月02日 11:01
検索で貴記事を発見!拝読させて頂きました。
是非、私の記事、TBさせてくらさい。
(ブログの趣旨にそぐわないと判断された場合には、遠慮無く削除して下さいませ)
know_the_base
2005年11月03日 06:10
TBありがとうございました。
この映画見てる間やたらイライラしてて、終わった直後は凄い駄目な映画を観たと思ったんですが、後で冷静になるとこんなに感情を刺激される映画も最近無いなと気付き、評価を思い直しました。
万人には薦められないですが、凄い映画であることは確かですよね
オカピー
2005年11月03日 18:29
know_the_baseさん、コメント有難うございました。
拒否反応を示す方も多いでしょうね、これだけ特殊な演出と物語では。
余り指摘される方はいませんが、観ている最中に「これは聖書だ、神の話だ」と思いましたね。昨日知ったのですが、私が思い浮かべた「ソドムとゴモラ」の主題は【客人虐待への神の怒り】だそうです。怒った神が町を滅ぼす、まさにこの作品と同じではないでしょうか。
ヒロインは神、むしろ神に派遣された存在であり神の代理人だったような気がします。(ヒロインをアメリカと解釈して)アメリカの大国主義の風刺と見ることは容易ですが、それでは余りに散文的でつまらないとは思いませんか。
ぶーすか
2006年10月27日 10:38
村をまるまる消滅させてしまう…という聖書の寓話は「ハメルンの笛吹き」とかグリム童話、イソップ物語にありそうな放浪者(神)に一夜の宿と食事を与える貧乏農民の寓話などを思い出しました。ヒロイン=神というのは御指摘の通りですね。この作品や「ダンサー・インザ・ダーク」などを見ると「愚かな人間どもには神は厳しい試練しか与えない」という人間嫌いな神しか見えてこないっす。
オカピー
2006年10月27日 16:49
ぶーすかさん、こんばんは。
私があるブログで「ヒロインは神か神の遣いであろう」と述べたら「神なら人を救うだろう」という反論を受けましたが、「神は実に無慈悲なもので、人を常に量りにかけているもの」という聖書的な考え方が分っていなかったのが残念でした。
西洋の童話の多くはやはり聖書的なものが多い、特にカトリシズムの影響は無視できないでしょうね。

「ハメルンの笛吹き」の現在版が「スウィート・ヒアアフター」と言われていますが、ご覧になったことがありますか。
シュエット
2007年04月21日 05:32
神を知らない私にはここまで来ると、もうトリアーについていけなくなりますね。ドッグヴィルラストまでは欺瞞とか言葉による欺瞞性などの二コールと村人、ベターニーとのやりとりはなかなか面白く見ていたのですが、ラストに気持ちが繋がって遺憾ないんですよね、奇跡の海は主人公は内なる神に向かっていって自らを傷つけることで示していってやはり最後は夫の愛が奇跡を生んだ。ダンサー・イン・ザ・ダークも見えてこなかった。
オカピー
2007年04月21日 18:55
シュエットさん

私は途中から「幕切れは、ソドムとゴモラにするよね、トリアーさん?」と思ったらその通りになったので、大変恐ろしい物語にも拘らず、ご機嫌になってしまったのです(笑)。
しかし、トリアー氏の真意については今一つ解らないのが実情。他の作品を見ると結構アメリカ風刺なんですよね。そうなると、これもアメリカ風刺? ならつまらない。
シュエット
2007年04月22日 01:21
トリアーさんは自分の世界構築されていますからね。
なんか穿った見方すると、必要以上に深刻ぶっているんじゃねえか、って思うときもあるんです。もう少し肩の力抜いて撮れないかって。
やっぱり私はトリアーさんは奇跡の海で泊まってます。エミリーワトソン良かった。彼女ゴスフォード・パークでも今までと違う役柄でよかったなと思いました。この辺がアルトマンの凄さですね。定着した役者の雰囲気と違う雰囲気というか魅力引き出して、しかもそれが絵に収まっている。
ナッシュビルとマッシュはレンタルショップにないんですよ。マッシュは買ったけどナッシュビルは高値で買えないです。
オカピー
2007年04月22日 04:03
シュエットさん

ドグマ95の連中は、トリアーに限らず深刻ぶっていますし、映画への取り組みがどこか間違っていると思いますね。最初の誓いは守られていないとは思いますが、映画が楽しい所以を殆ど否定していましたよ、そのドグマとやらで。BGMは使わない? 馬鹿じゃなかろうかって。

「ナッシュビル」は私も再鑑賞したいのでチェックしてみましたが、簡単には買えそうもないです。良い映画なんだけどな。埋もれた傑作になりそうな雰囲気濃厚。
kimion20002000
2008年04月30日 12:01
TBありがとう。
このDVDでもトリアー監督が語っていますが、とても饒舌な人です。好き嫌いは別として、目が離せない監督であるのは、確かだと思います。
オカピー
2008年04月30日 21:24
kimion20002000さん、こんばんは。

「メイキング・オブ・ドッグヴィル~告白~」も見てみましたが、あのセットでは確かに演技するのも大変でしたしょう。
しかし、特撮映画で何にもないところで演技するのもある意味大変なんでしょうね。

>トリアー
DVDは殆ど利用しないので裏は全く知らないことが多いです。
下手に知ってしまうと「つまらない」かもしれませんし。
アメリカ3部作の二作目を観ないことには、とやかく言えない気がしています。

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