映画評「砂と霧の家」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
2003年アメリカ映画 監督ヴァディム・ペレルマン
ネタバレあり

世間では余り話題になっていないようだが、これは見ごたえ十分の秀作である。原作はアンドレ・デュヴュース3世のベストセラー小説。

父親の形見の家で寂しく暮らす離婚女性ジェニファー・コネリーが所得税未納でその家を州に差し押さえられてしまう。彼女には収入がないので手続きミスであることがすぐに判明するが、家はイランの移民一家に安く買われてしまう。
 一家は祖国で父親ベン・キングズリーが秘密警察に所属していた為豊かな生活を続けていたのだが、政変によりアメリカに移民してきたという背景がある。
 家は、ジェニファーにとっては形見という精神の支柱とも言うべき存在であり、一家の主にとっては家族を支え昔の夢を再建する為に欠かせない存在であるが為に、お互いが主張を譲らない。
 最初は家の所有権を巡るささいな対立に過ぎなかったのだが、家庭不和に悩みジェニファーに惹かれていく副保安官ロン・エルダードがこの二組の間に入ってきたことから、大きな悲劇に発展していく。

これまで多くの作品が色々な対立を扱ってきたが、この映画のような対立は余り例がないのではないか。つまり、観客にしてみればどちらにも同情したくなるような者の対立である。
 キーワードは<家族>であり、二組とも家族と共に生きることという人生の目的に気付いて和解寸前にまでいくのだが、家族を自ら捨てた副保安官が静まりかけた水面に大きな石を投げ込んでしまう。

物語のアウトラインもなかなか面白いのだが、それが手ごたえになるのは人間像がきちんと描き込まれているからである。特にイラン移民故に家長が父権主義的な考えに基づき行動する辺りは、物語終盤の展開の伏線にもなっていて、見逃せない。
 両者共に人間の業を感じさせる部分もあり、自ら呼び込んだ悲劇と言えないこともないのだが、同時に人間の思惑ではどうにもならない【神の沈黙】を思わせる悲劇とも感じさせ、終盤の展開には言葉を失う。

父権主義的な父親を演じるキングズリーは圧巻で、ジェニファーも好演。アン・バンクロフトに似ている妻役のイラン人女優ショーレー・アグダシュルーは上手い。
 撮影も重厚で内容を十二分に支えている。

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この記事へのコメント

Bloking
2005年10月26日 18:24
はじめまして!
突然の書き込み失礼いたします。

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2005年10月29日 22:33
200投稿おめでとうございます。
記念にトラックバックさせていただきます。
オカピー
2005年10月30日 01:07
有難うございます。大変な勢いでブログ執筆中です。勿論基本は昔書いたものですが、整理していくうちに結構時間が掛かりますね。
この作品については重厚で見ごたえたっぷり。監督はヴァディム・ペレルマン(世間ではパールマンと表記しているようですが、ウクライナ生まれのPerelmanですので、ペレルマンがふさわしいでしょう)で、全くのデビュー作らしいですね。将来は大物になるかもです。

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