映画評「イージー・ライダー」

☆☆☆☆(8点/10点満点中)
1969年アメリカ映画 監督デニス・ホッパー
ネタバレあり

10代の時に二度観たことがあるのだが、アクション映画と思って観たら(子供には)余りに変な映画だったのに驚いた記憶がある。今は60年代末のアメリカが抱えていた混乱が手に取るように分かる。

ロサンジェルスを飛び出したバイク野郎ピーター・フォンダとデニス・ホッパーが麻薬の密売で金を稼ぎ、山岳地帯のヒッピーのコロニーに遭遇、ニューオリンズの祭りに不法参加して逮捕されるが、そこで知り合った弁護士ジャック・ニコルスンと行動を共にするようになる。
 が、南部は黒人だけではなく退廃的な白人にも白い目を向け、まずニコルスンが殴り殺される。二人は彼を葬った後売春宿の娘を連れて楽しむが、直後道を走らせている最中に撃たれて殺されてしまう。

60年代後半アメリカはベトナム戦争で行き詰まる一方で、自由を謳歌しようとする若者が誕生したが、保守派はこういう連中を憎んでいたのだろう、そうした米国の混乱ぶりが伺える。
 幕切れの断裁的な処理が優れているが、警察ではなく住民の保守性に恐怖を感じる。倒されるのは、麻薬密売・吸引こそやっているが、それ以外は(今の感覚ならまして)普通と言っていい若者である。この作品以降さらに暴力的な作品が登場したが、これほど一般人の怖さを感じさせる作品は目にしたことがない。

この記事へのコメント

2006年04月15日 23:06
 TBとコメントをありがとうございました。『イージー・ライダー』に出てくる、バイクが欲しくて、本気でお金を貯めようとした事が何度もあります。あれたしか、滅茶苦茶高いんですよね。
 見ただけで、そういう気にさせてしまう作品はかなり珍しいのですが、本当に欲しくなりましたよ。「げちょもたらーにん!」「へだおなはああうええ!」の歌詞は特に夏にヘッドフォンをしながら、二輪で聴くと最高です。
 もうすぐ、そういう季節がやってきます。ではまた。
オカピー
2006年04月16日 13:54
用心棒さん、コメント有難うございます。
バイクには外見的に興味を持った時期がありますが、いきなり四輪でしたので、その痛快さは想像するしかありません。
ここにいらっしゃるchibisaruさんは小柄な女性らしいですが、バイカーらしいですよ。
とにかく、気をつけてドライブしてくださいね。
十瑠
2006年08月18日 11:24
過去ログにお邪魔します。

音楽を含めてカッコイイのと、アメリカの暴力的な面が描かれたのも印象深い作品です。場面転換に使っていたフラッシュも斬新でした。

http://blog.goo.ne.jp/8seasons/e/8705700720726a2169854fa6b19fee5d
オカピー
2006年08月18日 14:55
十瑠さん、コメント有難うございます。
フラッシュバックは60年代後半に成熟した映画文法ですね。同じ頃作られた「真夜中のカーボーイ」のフラッシュバックも強烈でした。
それでは、これからそちらへお邪魔します。
蟷螂の斧
2019年08月18日 08:53
ピーター・フォンダ死去。また一つの時代が終わりました。

>これほど一般人の怖さを感じさせる作品は目にしたことがない。

その通りです!ピッタリの表現です。

>鎌倉時代が好きな僕

北条時政の時代でしょうか?外孫も謀殺してしまった男。

>休みが増えた結果、富裕層の子供は塾などに行って、それが格差社会に繋がる一要因とも言われていますね。

皮肉なものです。

>英語が出来ないから小学生の先生になったのに、誠に気の毒です(笑)。

この際ポルトガル語も勉強とか?
オカピー
2019年08月18日 18:16
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>ピーター・フォンダ死去。また一つの時代が終わりました。

僕らの兄貴分の世代。年齢から言えば、早すぎるということはないにしても、淋しいですね。

>>鎌倉時代が好きな僕
>北条時政の時代でしょうか?外孫も謀殺してしまった男。

執権が生れる前、実朝が好きですね。実朝は歌も詠み、暗殺もされ、何だか良いデス(笑)。
 戦国や幕末程殺伐としたイメージが少なく、ロマンを感じる。実際はこちらが思う程美しいものではなかったでしょうがね。
 そのせいか唱歌「鎌倉」が好きです。或いは「鎌倉」が好きなので、鎌倉時代が好きになったかもしれません。
 当時の群馬県では小学校6年の修学旅行は江の島・鎌倉が定番で、修学旅行で一番楽しみだったのは、鎌倉でしたよ。


>この際ポルトガル語も勉強とか?

実際のところ、群馬にはブラジルの人が多いので、余計必要かもしれません。

TVを見ていて、出鱈目な日本語がまかり通っているのを聞いていると、子供のうちは日本語をもっと勉強させよと思うわけですが、英語を学ぶことが国際人育成だと考えている為政者・官僚が多すぎる。そんな人々が“保守”と言われているのですから、笑っちゃいます。
蟷螂の斧
2019年08月21日 18:25
オカピー教授。こんばんは。

>淋しいですね。

「ダーティハンター」では嫌な奴を好演(?)していました。

>実朝は歌も詠み、暗殺もされ、何だか良いデス(笑)。

大河ドラマ「草燃える」。
篠田三郎が演じる源実朝が公暁に暗殺された時の無念さ。その時の義時(松平健)のあくどい表情。今でも思い出します。

>英語を学ぶことが国際人育成だと考えている為政者・官僚が多すぎる。

2代目、3代目の政治家先生方、よろしくお願いしますよ。
オカピー
2019年08月22日 19:47
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>「ダーティハンター」
70年代半ば、「ダーティ・メリー/クレイジー・ラリー」「悪魔の追跡」といったアクション系列が目立ちましたね。
 自ら監督した「さすらいのカウボーイ」や「ふたり」といった西部劇やドラマの秀作が続いた後だけにちょっと意外な感じもしました。余り偏ってしまうのは、特にヘンリー・フォンダの息子としては、良くなかったかもしれませんね。

>大河ドラマ「草燃える」。
大河ドラマの頻度が、鎌倉時代は、戦国から安土桃山時代に比べると、やはり少ないですねえ。

考えてみれば、実朝が将軍になる前から、時政はフィクサーとして活躍(寧ろ暗躍)していたわけで、僕の好きな時代を【時政の時代】と推測されたのは実に正鵠を射ていました。

太宰治の珍しい歴史小説「右大臣実朝」の描出が僕の想像する鎌倉時代に非常に近いと思います。森鴎外の歴史小説のような感覚で書かれていました。

>2代目、3代目の政治家先生方、よろしくお願いしますよ。
言葉が急激に目茶苦茶になった時代に生まれた世代が多いから期待薄です(笑)。
 最近考えるのは、ゆとり教育でやわな文章(夏目漱石や森鴎外を排除)しか習わなかった連中が新しい日本語を生み出しているのではないか、という疑問。

近々大学受験から文学が消え、それに応じて高校の現国授業から文学がほとんど消えることが決まっています。益々日本語が乱れると思います。
 今、僕の頭を一番悩ませているのは、日韓の問題でも米中の問題でもなく、日本語の乱れです。本当に憂鬱になります。こんな人は日本でも少ないだろうと、我ながら呆れていますが。
蟷螂の斧
2019年08月25日 23:16
こんばんは。

>夏目漱石

初期の傑作「坊っちゃん」で「~に違いない」と言う表現が僕は好きでした。

>太宰治の珍しい歴史小説「右大臣実朝」

一度読みたいです!もしかして実朝が太宰の人生に影響を与えたんですか?

>【時政の時代】

10年後ぐらいに外孫が欲しいと思う僕です。
外孫を殺すなんて考えられないという小市民ですみません・・・。

>ヘンリー・フォンダ

名優である事と私生活は別。これまた小市民的な意見です。

>60年代末のアメリカが抱えていた混乱

「続・荒野の七人」にもその影響が見られます。
七人の中の一人が「何で俺達は戦っているんだ?」
オカピー
2019年08月26日 19:05
蟷螂の斧さん、こんにちは。

>>夏目漱石
>初期の傑作「坊っちゃん」で「~に違いない」と言う表現が僕は好きでした。

漱石は時代を経るに従って内容的にはどんどん深化するのですが、後期は一人称小説が多くなった為に、自由自在の文章を味わうという意味では、初期から中期の方が面白いです。「坊っちゃん」も「吾輩は猫である」も一人称ですが、内面に特化する後期の物とは全然違って文体は三人称的ですから、文章が非常に楽しい。


>>右大臣実朝
>もしかして実朝が太宰の人生に影響を与えたんですか?

その辺りは研究していないので定かではないですが、この小説に相当力を注いだというのは事実のようですね。
 また、この小説には彼らしい滅びの美学のようなものがありますから、一見太宰的でないがやはり太宰的と言えるのではないでしょうか。


>外孫を殺すなんて考えられないという小市民ですみません・・・。

平均寿命が三十にも満たないような時代で命の軽さ(重さというより軽さ)が現代とは全然違いますから、息子だろうが弟だろうが殺す時には殺す。大変な時代ですよTT


>>ヘンリー・フォンダ
>名優である事と私生活は別。

それは勿論そうです。
どんな嫌な野郎でも、残した作品の価値とは関係ない。作家にも画家にも音楽家にもいっぱいいますよね。


>七人の中の一人が「何で俺達は戦っているんだ?」

現在NHK教育の【100分de名著】がロジェ・カイヨワ「戦争論」を取り上げていて、二回目まで観ましたが、人間には本質的に戦争への傾きがあると言っています。また、新聞にあった心理学者の分析によると、人間は思想によってコミュニティを作るのではなく、コミュニティが思想を生む、といった趣旨が書かれていて、これを合わせて解釈すると、人はなぜ戦争するか解るような気がします。
 上のような発言は、1969年における極めて同時代的な発言ですよね(当たり前ですが)。

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